紹介
オープンダイアローグの〈エッセンス〉とは? どうすれば日本の文化や制度,臨床に合わせて活かせるのか? 「フィンランド等で行われてきた実践」「国際トレーナーズトレーニングで学んだこと」「起源の一つの家族療法からの発展」という3つの観点から解説する。医療や福祉,心理支援にかかわるすべての人へ。
●森川すいめい氏(ゆうりんクリニック)推薦!
多声性,透明性,民主的アプローチ。人と人が響き合う,癒しの知恵,ここに。
●トム・エーリク・アーンキル氏 & ヤーコ・セイックラ氏 推薦!
対話とは,誰もが知っているものです。―ただ,そのことをふと忘れてしまう時があるのです。
●ハーレーン・アンダーソン氏 推薦!
多様な会話や文脈,文化,あるいは種々の課題について渡り歩き,そして学びながら,読者として批判的に積極的に学び続けられることを願っています。
【主な目次】
1章 オープンダイアローグって何?
2章 オープンダイアローグの基本的ルール,実践のためのエチケットとマナー
3章 オープンダイアローグの主要7原則
4章 オープンダイアローグの対話実践において守るべき鍵となる12要素
5章 ダイアロジカル・スペース(対話的空間)の創造
6章 ポリフォニーをポリフォニックに
7章 リフレクティング
8章 「今,ここにいる」ということ
9章 受け継がれる言葉と,内的・外的なダイアローグ
10章 オープンダイアローグの歴史
11章 未来語りのダイアローグ:Anticipation/Future Dialogues
12章 早期ダイアローグ&自分の心配事を取り上げること
13章 オープンダイアローグの取り組み方のまとめ
14章 オープンダイアローグについてあらためて検討する
15章 オープンダイアローグに関する対談(八巻 秀×浅井 伸彦)
目次
推薦の辞
はじめに
1 章 オープンダイアローグって何?
1.オープンダイアローグのはじまりと概要
2.オープンダイアローグをどう捉えるか
(1)オープンダイアローグのよくある誤解
3.オープンダイアローグの特徴
(1)オープンダイアローグの源である家族療法
(2)「個人」から「家族」,「社会的ネットワーク」へ:視点の変化から見るオープンダイアローグの起源
(3)モノローグとダイアローグ
2 章 オープンダイアローグの基本的ルール,実践のためのエチケットとマナー
1.章のはじめに
2.オープンダイアローグの基本姿勢,臨床哲学に関するルール
(1)ルール1:本人(や家族)がいないところで,スタッフだけで彼らの話をしない,物事を決めない
(2)ルール2:複数のチームでミーティングに臨むこと
(3)ルール3:治療のプロセスをクライアントや家族にオープンにすること
3.ミーティングのあり方に関するルールとマナー・エチケット
(1)「聴く」と「話す」を分ける
(2)全員の声が重要だと考えること
(3)ハーモニーよりもポリフォニーを
(4)できるだけ,アイ(私)・メッセージで話し,話してもらう
(5)ミーティングの設定に関するルールとマナー
4.章の終わりに
3 章 オープンダイアローグの主要7原則
1.すぐに対応すること/Immediate help
2.社会的ネットワークの視点を持つこと/Social network perspective
3.柔軟にフットワークを軽くして対応すること/Flexibility and mobility
4.要求に応え,引き受けること/Responsibility
5.できる限り同じ人が関わり続けること/Psychological continuity
6.あいまいな状態への耐性/Tolerance of uncertainty
7.対話を続けること(多様性のある声を歓迎すること)/Dialogue(and Polyphony)
4 章 オープンダイアローグの対話実践において守るべき鍵となる12要素
1.二人(あるいはそれ以上)のセラピストがチームに参加していること/Two(or more)therapists in the team meeting
2.クライアントの家族と,関わる人たちのネットワークが参加していること/Participation of family and network
3.開かれた質問が使われていること/Using open-ended questions
4.クライアントの発言に応答すること/Responding to clients’ utterances
5.対話において,今この瞬間を大切にしていること/Emphasizing the present moment
6.対話において,複数の視点を引き出すこと/Eliciting multiple viewpoints
7.対話において,関係性という観点を創造すること/Creating a relational focus in the dialogue
8.問題とされる言説や行動に対し,「(「問題」として脚色せず)ただそういう事実がある」とありのままに捉え,その意味を慎重に吟味すること/Responding to problem discourse or behavior as meaningful
9.症状ではなく,クライアント自身の言葉やストーリーを大切にしていること/Emphasizing the clients’ own words and stories, not symptoms
10.治療ミーティングにおいて,専門家間で会話が行われていること(リフレクティングの形式)/Conversation amongst professionals(reflections)in the treatment meetings
11.クライアントに隠し立てをせず,透明性を保つこと/Being transparent
12.あいまいな状態への耐性を持っていること/Tolerating uncertainty
Column 1 精神科病院でのオープンダイアローグ実践
5 章 ダイアロジカル・スペース(対話的空間)の創造
1.対話が成り立つために:安心・安全な関係性,場が大切
2.物理的空間
3.時間的空間
(1)即時の対話(対応)
(2)セッション1回あたりで対話できる時間を十分にとること
(3)参加者が発言する時間(声が聴かれる時間)が一人ひとり平等に十分確保されること
4.社会的空間
5.心理的空間
6.言説的空間(ディスクール・スペース)
6 章 ポリフォニーをポリフォニックに
1.オープンダイアローグとポリフォニー
2.複数の視点を引き出すこと:ポリフォニー
3.関連する三つの音楽用語:「ポリフォニー」「モノフォニー」そして「ホモフォニー」
(1)まずはポリフォニー
(2)続いてモノフォニー
(3)そしてホモフォニー
(4)少し焦点を広げて:バフチンの思想との関連で
4.オープンダイアローグの中でのポリフォニーと関連すること
(1)全員の声が重要だとされること
5.章のおわりに
7 章 リフレクティング
1.リフレクティングとは何か?
2.リフレクティングはどこからきたか?
(1)チームアプローチ
(2)リフレクティング・チーム
(3)リフレクティング・プロセスの特徴と方法
3.オープンダイアローグにおけるリフレクティング
Column 2 オープンダイアローグの実践:困ったときに効くODトレーニングの学び
8 章 「今,ここにいる」ということ
1.エンボディメント(embodiment)
2.「身体の中にいる」を試してみる
(1)何もせずに身体を感じる
(2)話をしているときに,自分の身体がここにあることを感じる
(3)話を聴いているときに,自分の身体がここにあることを感じる
(4)話を聴いているときに,次に自分が話すことの準備をしない
9 章 受け継がれる言葉と,内的・外的なダイアローグ
1.言葉はどこから来たのか?
2.社会構成主義による影響
3.原家族から継承された言葉とそのワーク
4.アウターダイアローグとインナーダイアローグ
Column 3 オープンダイアローグ基礎トレーニングを終えて
10 章 オープンダイアローグの歴史
1.ニード適合型治療からの流れとしてのオープンダイアローグ
2.家族療法由来のアプローチとしてのオープンダイアローグ
(1)システム論的家族療法
(2)ミラノ派家族療法
3.リフレクティング・プロセスとコラボレイティヴ・アプローチ,バフチンの対話主義
11 章 未来語りのダイアローグ:Anticipation/Future Dialogues
1.章のはじめに
2.オープンダイアローグと未来語りのダイアローグそれぞれの特徴と差異
(1)ダイアローグの対象領域
(2)実施される状況,文脈
(3)ダイアローグの要請・依頼者
(4)ダイアローグミーティングの構造
(5)ミーティングの運営,進行
(6)ミーティングの回数,継続
(7)ミーティングのテーマと目的
(8)ミーティングの事前準備
(9)話されたことの記録
3.未来語りということについて
4.未来語りのダイアローグは,社会的ネットワークのダイアローグ
5.未来語りのダイアローグが有効とされる状況
6.未来語りのダイアローグの特徴
(1)支援者がミーティングを要請する
(2)自分のworryを取り上げ,助力を求める
7.ミーティングの実践構造と手順
8.章のおわりに
12 章 早期ダイアローグ&自分の心配事を取り上げること
1.章のはじめに
2.早期ダイアローグ開発の背景
3.早期ダイアローグの特徴
4.早期ダイアローグが必要となる状況
5.自分の心配事を取り上げること
6.取り上げられるworryの必要条件:自分語りであること
7.教師と子どもの保護者との話し合いの実習
(1)話し合い実習①–A 教師と保護者:通常の問題の話し合い
(2)話し合い実習①–B 教師と保護者:早期ダイアローグ形式
8.援助専門職と利用者・対象者との話し合いの実習
(1)話し合い実習②–A 支援者と利用者:通常の問題の話し合い
(2)話し合い実習②–B 支援者と利用者:早期ダイアローグ形式
9.早期ダイアローグと未来語りのダイアローグの違いについて
(1)背景と基本的構造
(2)それぞれが用いられる文脈,状況
(3)ダイアローグの提案・要請者とミーティングの参加者
(4)ダイアローグの運営方法,取り上げられる内容と目的
10.章のおわりに
13 章 オープンダイアローグの取り組み方のまとめ
1.オープンダイアローグやリフレクティングでのチェック項目
(1)オープンダイアローグを行う上でのチェック項目
(2)リフレクティングを行う上でのチェック項目
2.ダイアローグ(対話)を実践する際の対話形式
(1)フィッシュボウルワーク(金魚鉢ワーク)
(2)フィンランドで行われたオープンダイアローグのオリジナルの手順
(3)オープンダイアローグで使える質問法
14 章 オープンダイアローグについてあらためて検討する
1.果たしてオープンダイアローグは万能か?
2.オープンダイアローグはセラピー(治療法)なのか?
3.対話において,ポリフォニー(多声性)を重視することとは?
4.オープンダイアローグで重視されるポイントが,危機状態に大切な理由
5.理解の途上にとどまる
Column 4 受容・共感とは?
15 章 オープンダイアローグに関する対談(八巻 秀×浅井 伸彦)
オープンダイアローグとの出会いと国際トレーニング
オープンダイアローグのあいまいさと,自然への原点回帰
心理支援の基礎としての対話
文献
おわりに
索引