目次
はじめに 戒能民江
第1部 女性支援法のポイント
Q1 新しく成立した女性支援法の意義、ねらいについて教えてください 戒能民江
Q2 女性支援法の基本理念とその意義について教えてください 戒能民江
Q3 「当事者の意思の尊重」が法律の理念の中心に据えられているのはどうしてですか? 堀 千鶴子
Q4 女性支援になぜ民間団体との協働が必要なのでしょうか? 戒能民江
コラム 官民連携の国立市女性パーソナルサポート事業の実践 吉田徳史
Q5 なぜ女性だけが、女性支援法の対象となるのでしょうか? 戒能民江
Q6 国や地方公共団体の女性支援の責務について、女性支援法はどのように定めていますか? 戒能民江
第2部 女性支援の担い手
Q7 女性相談支援センターの業務と地域で果たす役割について教えてください 栗原ちゆき
Q8 女性相談支援員はどこでどんな支援をしているのですか? 松本周子
Q9 女性自立支援施設はどのような支援をするのですか? 熊谷真弓
Q10 民間団体が行っている支援について教えてください
若年女性への支援◉BONDプロジェクト 橘ジュン
インターネット上で拡散する性暴力と被害者支援◉ぱっぷす 金尻カズナ・井上エリコ
Q11 DV被害者に対して民間団体はどのような支援をしていますか? 北仲千里
Q12 妊娠、中絶、出産で困難に直面した女性はどのような支援が受けられますか?
妊産婦への支援◉慈愛寮 熊谷真弓
性と生殖に関する健康と権利の保障をめざす民間団体の支援◉ピッコラーレ 中島かおり
Q13 市町村ではどのような女性支援ができますか? 戒能民江
コラム 札幌市による若年女性支援へのチャレンジ 月宮広二
第3部 女性支援はどう変わるか ―支援の基本姿勢と支援内容
Q14 女性支援法によって、実際の支援はどう変わるのでしょうか? 堀 千鶴子
Q15 アウトリーチとはどのような支援ですか? 仁藤夢乃
Q16 居場所とは何でしょうか?
日中の居場所・まちなか保健室◉若草プロジェクト 大谷恭子
自由で安心できる居場所づくり◉くにたち夢ファームJikka 遠藤良子
Q17 一時保護所とは何でしょうか?どのような支援が受けられますか? 堀 千鶴子
Q18 基本方針でふれているアセスメントとは何でしょうか? 堀 千鶴子
Q19 新しく設けられた支援調整会議の意義と役割について教えてください 堀 千鶴子
Q20 女性支援法における今後の課題は何でしょうか? 戒能民江
資料
困難な問題を抱える女性への支援に関する法律の概要
困難な問題を抱える女性への支援に関する法律のポイント
困難な問題を抱える女性への支援に関する法律
全国の女性相談支援センター 電話番号一覧
理解を深めるための参考図書
執筆者一覧
前書きなど
「はじめに」より
2022年5月、「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」(以下、女性支援法)が成立し、2024年4月に施行されます。女性支援法は、女性を中心とした超党派議員の議員立法です。女性支援法は、1956年の売春防止法(以下、売防法)制定に伴い創設された「婦人保護事業」を、根拠法の売防法から切り離すとともに、困難に直面する当事者の女性を真ん中にした支援の仕組みを新たに構築することをめざすものです。新法制定までに66年間もかかりました。日本の社会で、困難な問題を抱えた女性の人権がいかに軽視されてきたか、人びとの関心が薄いまま、社会の隅っこに置かれつづけてきたかが、ここからもわかるのではないでしょうか。
女性の困難は一つではありません。一生の間で、また、ライフコースのそれぞれの段階で、さまざまな問題が降りかかり、女性は「生きにくさ」を感じながら、何とか潜り抜けていく。そんなことの繰り返しかもしれません。
でも、そばに誰かいて話を聞いてくれるといいのにとか、どうすればいいのかを一緒に考えてくれる人がほしいと思っても、女性たちは必ずしも、すぐに相談窓口に行くわけではありません。持ち合わせのお金が一銭もなくなったとか、このままでは相手に殺されるかもしれないなど、本当にギリギリになってから駆け込むかもしれません。どうせわかってくれないだろうと建物の前で引き返すかもしれません。
この間のコロナ禍が社会に与えた影響は計り知れないものでしたが、とりわけ、女性への影響の深刻さが指摘されています。日本でも、女性が多い非正規雇用の減少やステイ・ホーム下でのDV相談の激増、女性の自殺件数の増加などが、内閣府の調査でも明らかにされていますが、男女格差拡大の是正が進まないなかで今後の不安が募ります。
2020年秋に起きた、仕事もすまいも失って、バス停で路上生活を送っていた女性が殴られて亡くなった事件は忘れられません。支援になぜつながらなかったのか。こんなことが起きてはならないと多くの人が考えていると思います。
女性支援法施行を機に、女性支援のあり方をどう変えていくのかが問われています。本書を読んでくださるみなさんと「横に並んで」ともに考えたい、そのきっかけにしたいと思い、本書を刊行することにしました。