目次
発刊にあたって
亥(い)の子の晩(ばん)に重箱(じゅうばこ)ひろて 北摂(ほくせつ)に伝わる話
亥の子やらんか
かくれ里
十字のテントウバナ
飛脚(ひきゃく)と大天狗(おおてんぐ)
どっちがほんま
牛どろぼう
卒塔婆(そとば)の子
そうれんみち
白いみぃさん
ねんねころいち天満(てんま)の市で 大阪市内に伝わる話
きつねのやいと
ふるさと「じょう」慕情(ぼじょう)
唐臼(からうす)のお地蔵(じぞう)さん
石橋をたたいて渡(わた)れ
夫婦(めおと)いちょう
西濱(にしはま)の太鼓(たいこ)物語(ものがたり)
ベレー帽(ぼう)のおっちゃん
はだかでワッショイ!
ごん太地蔵(じぞう)
ええらさんの牛
水ふきいちょう
朝の出がけに扇(おうぎ)をひろて 北・中・南河内(かわち)に伝わる話
大きな狛犬(こまいぬ)
ひよこ売り
おもろいおっちゃん
広い空のもとで
たかおのトンド
大きなくすのき
戦火(せんか)をくぐったお地蔵さん
炎(ほのお)のごとく 糸若柳子(いとわかりゅうこ)
こんにゃく橋
ひよひよと鳴くはひよどり 泉州(せんしゅう)に伝わる話
おかん
六部(りくぶ)の千年機(せんねんばた)
真夜中(まよなか)の盆踊(ぼんおど)り
弘法(こうぼう)さまの杓(しゃく)井戸(いど)
杓井戸に落(お)ちたかみなり
戦場(せんじょう)の盆踊り
三つの音頭(おんど)
虹(にじ)色(いろ)のセータ
被差別部落に伝わる民話うらばなし
あとがき
参考(さんこう)文献(ぶんけん)
前書きなど
発刊にあたって
私たちは、2012年12月、富田林若一が河内水平社創立90周年記念『若一の民話―富田むかしばなし』を発刊したことをきっかけに、大阪府内の被差別部落に伝わる昔話を残そうと、2013年8月、有志が集まり、被差別部落の昔話制作実行委員会を結成いたしました。
今、この時期をのがすと、大阪市内・大阪府内の各地域の昔話は埋もれ、消えてしまいかねない状況になっております。それぞれの地域では、これまで、識字教室や保育・教育、女性、高齢者の活動を通じて、詩や演劇、さらには絵本や紙芝居などが作られてきました。活動を続けてきた場所が次々と閉鎖され、貴重な資料も散在しかねないことを危惧しております。
そこでこのたび、大阪府内、大阪市内の被差別部落に伝わる「昔話」「伝説」「世間話」などを、次世代の子どもたちに語り継いでいただくことを願い、一冊の本にいたしました。
この本は、単に昔をなつかしむというだけではありません。1990年ごろから、格差が加速度的に拡大しています。市場原理があらゆる分野に浸透し、優勝劣敗の競争社会になり、助け合うことよりも、競争に勝ち抜くことが重視されています。その結果、ひとびとがバラバラに切り離され、協同・連帯を大切にする作風が急速にしぼんできています。そのような社会を変えていくにも、競争ではなく、連帯を重視する生き方をみんなで共有していく必要があるでしょう。
そうしたことからも、ここに収録した昔話がもっている価値観や人間観が今ほど重要になっている時代はありません。昔話を通して、豊かな感性と人を思いやる心を再発見し、それを次世代の子どもたちが、しっかりと受け継いでいってくれることを願っています。
2016年 初秋
被差別部落の昔話制作実行委員会 実行委員長 野口道彦