目次
サンドロ・ボッティチェッリの《ウェヌスの誕生》と《春》
序 言
第1章 《ウェヌスの誕生》
付 論 失われた《パラス》
第2章 《春》
第3章 絵画の外的原因——ボッティチェッリとレオナルド
四つのテーゼ
ボッティチェッリの《パラス》について——『美術』第五巻第一一‐一二号(一九〇二年)からの抜粋
サンドロ・ボッティチェッリ
原 註
補 註
図版一覧
解 題 アビ・ヴァールブルクとボッティチェッリ研究
訳者あとがき
人名/著作名索引
前書きなど
この論考でおこなわれる探究とは、サンドロ・ボッティチェッリの有名な神話画《ウェヌスの誕生》と《春》を同時代の芸術理論および詩文芸の対応する表象と関係づけ、そうすることで、一五世紀の芸術家たちに古代への「関心を抱かせた」ものが何であったのかを明らかにすることである。
すなわちここでは、芸術家たちとその助言者たちが、外見上の誇張された動きを要求する手本をいかに「古代」のうちに見たのか、そして、外見的に動きの激しい付帯物——衣服や髪——の描写が問題となったさいに、彼らが古代の手本にいかに依拠したのかが、一歩ずつ考究される。
さらに、こうした証拠は心理学的美学にとって注目に値するものであるということも付言しておきたい。というのも、ここでは「感情移入」という美学的作用に対する感覚が、創造的な芸術家たちのサークルにあって、様式を創出する力としてその生成状態で働いているのを見てとることができるからである。