目次
序文[北野収]
まえがき――数多くの出会いとひとつの曲がりくねった道
本書における表記について
略語一覧
序章 本書の目的と構成
第Ⅰ部 歴史と理論
第1章 フェアトレードの歴史と「公正」概念の変容
はじめに――フェアトレードの始まりはいつか?
1 前史――19世紀後半~1930年代
2 「分配的正義」を求めて――1940年代~1970年代前半
3 「交換的正義」を求めて――1970年代末~現在
おわりに――買い物による国際貢献を超えて
第2章 フェアトレードのパブリック・ヒストリー
はじめに――問題の背景と本章の目的
1 CLACの歴史と戦略
2 CLACの組織・構造とノンヒューマン・人材
おわりに――脱植民地化=自立への課題
第3章 フェアトレードの「正義」とは何か
はじめに――公平とは、公正とは、正義とは?
1 公正としての正義
2 グローバルな正義
3 グローバルな経済的正義としてのフェアトレード
おわりに――「正義」という虚構
第Ⅱ部 実践活動
第4章 コーヒーのフェアトレードの可能性と課題
はじめに――コーヒーと南北問題=植民地主義
1 メキシコ・コーヒー産業小史
2 コーヒーのフェアトレード運動
3 事例分析
おわりに――「一般市場との接合」は可能か
第5章 開発支援とフェアトレードにおける中間組織の役割
はじめに――苦いコーヒー
1 開発支援とその評価基準
2 FTPが目指すフェアトレード
3 JICAーFTPプロジェクトの概要と分析
おわりに――「公貧社会」を前提とした今後の課題
第6章 JICAーFTPプロジェクトの総括と提言
はじめに――自立=6次産業化への道
1 第1期:メキシコ国チアパス州チェナロー区マヤビニック生産者協同組合に対するコーヒー技術支援計画
2 第2期:メキシコ国チアパス州先住民関連3団体に対するコーヒーの加工・焙煎およびコーヒーショップの開店・経営に関する技術協力事業
3 その後の各カウンターパートとFTP
おわりに――フェアトレード拡大のために
第Ⅲ部 希望の道
第7章 「フェアトレードの父」のフェアトレード論
はじめに――メキシコ南部オアハカの山村で労働司祭として生きるまで
1 貧しく、排除された先住民と共に学ぶ
2 「社会的なもの」の再生を目指して
3 別の市場を創る
おわりに――革命家の夢
第8章 連帯経済としてのフェアトレード
はじめに――連帯経済とフェアトレード
1 メキシコの連帯経済
2 チアパス州の3事例紹介
3 事例分析
おわりに――連帯経済としてのフェアトレードが目指す公正な社会
第9章 資本主義の倫理化は可能か
はじめに――現代のモラル・エコノミーと資本主義
1 フェアトレードの発展とその変容
2 グローバリゼーションへの対抗策――ローカリゼーションか、グローバリゼーションとの「共生」か
3 フェアトレード・タウン運動――新たな「共生」を求めて
おわりに――資本主義の倫理化への道
補論 労働市場のフェアトレード化についての試論
参考文献
あとがき
索引
前書きなど
序章 本書の目的と構成
(…前略…)
第Ⅰ部は、フェアトレードの歴史と理論というフレームワークおよびフェアトレードのネットワーク組織を中心に論ずる。具体的には、グローバルノース(消費国)側からみたフェアトレードの歴史(第1章)とグローバルサウス(生産国)側からみた別の歴史(第2章)を対比させたうえ、時代とともに「公正」概念が変容するなかにあって、フェアトレードの土台にある基底的「正義」とは何かを問う(第3章)。(……)
(…中略…)
第Ⅱ部は、フィールドワーク(現場で発見、学び、総合する臨地研究)とアクションリサーチ(現地の課題を解決するためにアクション=実践とリサーチ=研究を同時に行う方法論)にもとづく記録・分析である。基本的な理念は、生産者・生産地の脱植民地(デコロニアル)化のための自立・自律支援である。そのための戦略は、現状分析(第4章)をふまえたうえ、コーヒー生豆の輸出という1次産業に加え、生産地国内での焙煎豆の販売という2次産業化=国内フェアトレード(第5章)から、生産者自身の手によるコーヒーショップの経営という6次産業化(第6章)による付加価値の向上と別の市場づくり(=支配的他者への依存からの脱却)にある。各章はその発展段階を示している。(……)
(…中略…)
第Ⅲ部は、第Ⅰ部と第Ⅱ部で論じたフレームワーク・ネットワーク・フィールドワークをもとにして、これまでのフェアトレードを批判的に総括、今後の可能性と課題を検討し、共通善となりうる「希望の道」を模索する。そのため、まず、ラディカルなフェアトレード論を展開したヴァンデルホフ神父の生き方と思想を回想的に追う(第7章)。結局、神父が主導したUCIRIによるフェアトレードは、当初FLO(現FI)の設立に積極的に関わったにもかかわらず、「メインストリーム化」や植民地主義(搾取)を体現するプランテーションの栽培作物と金をフェアトレード商品として認める――生産者の立場・考えを理解しようとしないエリート主義・官僚主義の――FLOと袂を分かち、「連帯経済としてのフェアトレード」に帰結する。続いて第8章では、神父が目指した「連帯経済としてのフェアトレード」を取り上げる。その結論は次のとおり。すなわち、フェアトレードが最終的に目指す「公正な社会」の実現には、グローバルサウスの小規模生産者だけでなく、日本を含むグローバルノースの消費者も、現在のアンフェアな政治やグローバル資本主義に異議申し立てをすることが第一歩。これを受け、最終章では、経済評論家の内橋克人と新潟大学教授であった佐野誠の「共生経済論」、そして反主流派経済学者・岩井克人の「資本主義論」を「導きの糸」として、フェアトレードが実践的かつ理論的に資本主義の変革、倫理化にどのような役割を果たすことができるかを議論する。(……)
(…後略…)