目次
日本語版序文
はじめに
第Ⅰ部 総合する思考を育む
第1章 十歳のハワード少年がみた世界
第2章 「君は事務員に向いている」
第3章 ハーバード大学と、新たな世界
第4章 型にはまることへの反抗と、将来への不安
第5章 研究者として生きる
第Ⅱ部 多重知能理論
第6章 「知能」という聖域に挑んだ
第7章 賞賛と猛批判の嵐
第8章 多重知能理論、世界へ
第9章 理論のあるべき姿
第Ⅲ部 総合する思考を解明する
第10章 知能と倫理
第11章 知識の点と点を結びつける
第12章 二十一世紀に必要な総合する思考とは何か?
謝辞
日本語版監修者解説
編訳者あとがき
多重知能理論関連ブログリスト
参考文献
索引
前書きなど
日本語版序文
『A Synthesizing Mind』の日本語版が出版されると聞いて、嬉しく思っている。
それと同時に、この本がありふれた自伝のひとつにならなければいいとも思っている。本書では私の思い出や、家族とのエピソードを紹介している。たとえば、私がアメリカのジョー・バイデン大統領と同じ時期に、同じ都市で生まれた、という話だ。しかし本書の本質は、私の物語を通して、ハワード・ガードナーという一人の人物がどのように物事に対する考え方を発展させてきたかをみていくところにある。いわば、私自身の思考の研究でもある。今や私は八十歳を超えており、研究対象とするには十分な量の人生となっただろう。
子どもの頃の私はピアノを弾くのが好きだった。勉強も好きだったので、そのおかげで学校の成績は良い方だったと思う。人生の転機となったのは、一九六〇年代初めにハーバード大学に入学したときだ。歴史を学び、心理学、社会学、人類学が組み合わさった社会科学を学び、それでも学び足りないと感じた私は、将来は教師か学者になりたいと思うようになった。そして次第に、人間の思考がどう発達し変化するのか、どのように創造性が生まれるのか、さらには子どもたちの思考力を育む効果的な教育法は何かといったテーマに興味をもつようになった。
私は「多重知能理論のハワード・ガードナー」として知られている。多重知能理論とは、人のもつ知能の種類はひとつではなく、複数あるという考えだ。IQなどは知能をひとつのもの(Intelligence)として扱うが、多重知能理論は知能を複数のもの(Intelligences)として扱う。私たちは誰もが複数の知能をもっており、その強さや組み合わせは人によって違うものの、日常生活のあらゆる場面でこれらの知能を使い分けたり組み合わせたりしている。
多重知能理論はもともと、心理学の研究題材であったが、教育の分野で広く知られるようになった。多くの学校や教師が多重知能理論を教育実践に取り入れてくれたからだ。この理論が教育の分野で採用されたことは嬉しいことだが、私は決して「これが良い教育で、これが悪い教育だ」と定義づけようとしたわけではない。多重知能理論は教育者にとっても、学習者個人にとっても役立つツールであると考えている。「この理論のおかげで新しい教育のアプローチが生まれました」という声を聞くたび、私は喜びを感じている。
(…後略…)