目次
日本語版刊行にあたって
刊行に寄せて
序文
はじめに
序章
第1章 なぜ彼女は子どもより彼を選び続けるのか?
第2章 母親を非難し、父親を不可視化するということ
第3章 DVに関する専門家の神話に挑戦する
第4章 「子どもの目撃」という神話
第5章 「DV事件」という神話
第6章 「守ることの失敗」という神話
第7章 「加害者の責任(アカウンタビリティ)」という神話
第8章 「片親疎外」という神話
第9章 「トラウマインフォームドプラクティス」という神話
第10章 モデルの重要な構成要素と原則――共通言語
第11章 モデルのエビデンスの積み上げ
第12章 サバイバーと実践者の声に敬意を払う
第13章 変革は今、この瞬間から
謝辞
用語集
Safe & Together研究所が提供するもの
注記
監修者あとがき
前書きなど
序章
本書は、母親を非難し、父親を不可視化するドメスティック・バイオレンス(DV)の政策と実践を形成してきた概念、実践、そして神話を深く掘り下げたものである。また、時代遅れで有害な支援の考え方や、対応の常識を根本から見直す方法についても書かれている。Safe & Together(TM)モデルとそれに関連する実践は、DVと子どもに対する私たちの文化や制度の対応を形作ってきた支配的かつ深く根づいている考え方への挑戦であり、批判である。本書では、このような深く根づいた考え方を「神話」と呼んでいる。ここでの「神話」とは、大人や子どものサバイバーの実体験と一致していない、問題のある、あるいは不完全な理解を意味する。それぞれの神話について、その問題点と、Safe & Togetherモデルがそれらの問題に対してどのような解決策を提供するかを示している。神話ごとに、文化的な誤解や専門的な用語を解体し、加害者の行動とサバイバーの現実に焦点をあてたアプローチを中心に据える。
私はまた、DVインフォームドな実践におけるジェンダーのパラドックスにも取り組む。すなわち、DVへの最善の対応には、加害者とサバイバーの性別に関係なく通用する、客観的な行動のアセスメントの枠組みが必要である。同時に、その枠組みは、正確さと有効性を最大限達成するために、子育てに関するジェンダーに対する期待に言及し、それを解体する必要がある。
Safe & Togetherモデルには、一連のツール、実践、方針、概念が含まれており、男性パートナーの行動が子どもに与える影響について母親を責めるような実践を、専門家や機関が行わないように設計されている。これまでの実践は、安全や、恐怖からの解放を高めるのではなく、より多くの苦難や苦痛、危険を生み出すことが多かった。このモデルは、母親を非難することを避け、専門家を「加害者に軸足を移す」よう導き、子ども、パートナー、家族機能への危害の原因である加害者の行動に焦点をあてる。この転換を行うには、父親を不可視化する実践の源である、親としての男性への期待の低さと、母親を非難する態度や実践との間の関連性を理解する必要がある。親としての男性への期待を高め、親としての加害者に目を向けるという、この転換は、さまざまな機関における専門家のサバイバーとの関わり方を変える。父親の行動が家族の中で果たす役割を、良きにつけ悪しきにつけ無視することをやめれば、母親、子ども、そして父親自身をより適切に支援できるようになる、という考え方である。
本書は、Safe & Togetherモデルについての詳細な「ハウツー本」ではない。Safe & Together研究所は常にこのモデルについてトレーニングや教育を行っており、複数のプラットフォームからこのモデルのツールが入手可能である。私は、本書を通じて「内部の仕組み」を提供したいと考えた。すなわち、このモデルが解決しようとしている問題は何か? モデルの背景にはどのような考え方があるのか? どのような思想や考え方が「モデル」を動かしているのか? サバイバーや実践者は、このモデルとその影響について何を語っているのか? このモデルは実際に行動することで活きてくる。そのため、具体的な考察や今すぐできる行動も身につけることができるようにしている。あなたが実践者であろうとサバイバーであろうと、本書はあなたの助けとなるよう書かれている。
(…後略…)