目次
「移民・ディアスポラ研究」14の刊行にあたって
序章[小林真生]
日本におけるコミュニティとは
日本の移民をめぐる状況
本書の意義と方向性
本書の構成
移民社会の特性と展望
求められる当然の対応
第1章 80年代以前および難民のコミュニティ形成――主に生活防衛のための集住
1-1 在日コリアン――コミュニティの形成と変容[曺慶鎬]
1-2 中国帰国者――「祖国帰還の物語」を超えて[南誠(梁雪江)]
1-3 華僑華人――来日している中華料理人を中心に[川村潤子]
1-4 インドシナ難民――現在・過去そして展望[長谷部美佳]
1-5 クルド人――来日と定住をめぐる現状と課題[ソホラブ アフマディヤーン/大茂矢由佳]
1-6 滞日ビルマ系難民――コミュニティの時間・空間・階層の観点から[人見泰弘]
1-7 ロヒンギャ――群馬県館林市から広がるコミュニティ[加藤丈太郎]
1-8 ウクライナ避難民――戦禍を逃れた人びとの社会統合の課題[竹内大樹]
第2章 80年代以降の低賃金労働者――就業条件による集住・分散と存続・消滅
2-1 ブラジル人――デカセギ時代の起源と終焉 時間、空間、階層をめぐる模索[アンジェロ・イシ]
2-2 ペルー人――日本社会におけるペルー人コミュニティの35年[スエヨシ・アナ]
2-3 フィリピン人女性――折りたたみ椅子から大家族の一戸建てへ[高畑幸]
2-4 中国人留学生――送出し・受入れの変遷、居住地と日本就職の傾向、留学生関連団体[佐藤由利子/徐一文]
2-5 韓国人超過滞在者――1990年代の横浜・寿町を中心に[山本薫子]
2-6 フィリピン人男性――社会経済的特徴と草の根からの多文化主義[高松宏弥/マリア・ロザリオ・ピケロ・バレスカス]
2-7 パキスタン人――エスニック・ビジネスの確立と定住[福田友子]
2-8 イラン人――超過滞在者としての人生[駒井洋]
2-9 バングラデシュ出身者――多様化するコミュニティ[水上徹男]
2-10 タイ人――階層分化が進む在日タイ人社会の行方[石井香世子]
第3章 80年代以降の研修生・技能実習生――就業業種による規定と一時的滞在性
3-1 中国人研修生・技能実習生――時間軸から見る人数の減少[上林千恵子]
3-2 ベトナム人研修生・実習生――仮想空間に拡大するコミュニティと今後の展望[岩下康子]
3-3 インドネシア人研修生・技能実習生――希薄なプレゼンスと育成就労への移行という課題[奧島美夏]
第4章 高度人材の移動と分散――IT革命を転機として
4-1 中国人高度人材――滞日経験者の国際移動 コミュニティとモビリティの関係性[王暁音]
4-2 韓国人ニューカマー――ミドルクラスの移動と定着[ソン・ウォンソク(宣元錫)]
4-3 インド人――東京のIT技術者と神戸の商人[澤宗則]
4-4 アメリカ人――複層的アイデンティティと多様な適応形態[矢ヶ﨑淳子]
4-5 トンガ出身者によるコミュニティ――ラグビーを職業とする人々[北原卓也]
4-6 在日ロシア人の暮らしや活動――移民の百年史を辿って[ゴロウィナ・クセーニヤ]
第5章 2010年代の新規移民――継続する課題と次世代の胎動
5-1 ネパール人――日本は定住先か通過点か[田中雅子]
5-2 ベトナム人留学生――中国人留学生と比較した特徴とコミュニティの役割[佐藤由利子/フン・ティ・ハイ・タン]
5-3 ジャパニーズ・フィリピーノ・チルドレン(JFC)――2009年国籍法改正を分岐点として[原めぐみ]
5-4 ガーナ人――日本を生きた移民1世とグローバル化する第2世代[若林チヒロ]
5-5 ナイジェリア人――アフリカ系移民と変わりゆく日本社会のまなざし[松本尚之]
編集後記
前書きなど
「移民・ディアスポラ研究」14の刊行にあたって
(…前略…)
シリーズ第9号および、その新版となる本書14号のタイトルは、「変容する移民コミュニティ――時間・空間・階層」とすることとした。戦前における中国人移民および朝鮮半島出身者の移民の流入にはじまり、1970年代初頭の日中国交正常化による中国からの帰国者や、1970年代末からの難民および外国人労働者などの流入もあいまって、日本の移民コミュニティは、すでに百数十年に達する歴史的経緯のもとに日本列島全体への定住が顕著である。
これに対応して日本の移民研究も相当の歴史的な蓄積をもってきたのはたしかである。しかしながら、日本の移民研究は、特定のコミュニティに集中する傾向があり、ほとんど無視されているコミュニティがかなり存在しているのは事実である。さらに、実態の解明がほとんどなされていない、かつては存在していたが現在は消滅しかけているコミュニティや急速に出現しはじめているコミュニティも相当ある。そのため、われわれは手間のかかる作業であることは承知のうえで、現時点における日本の移民コミュニティの全体像を提供することを決意した。
執筆者は、いずれもそれぞれの移民コミュニティについて余人に代えがたい識見をお持ちの方々であるが、時間、空間、階層の三つの軸にもとづく分析をお願いした。すなわち、時の流れとともにそのコミュニティがどのように変容してきたか、とりわけ日本社会におけるそのコミュニティの社会的経済的地位がコミュニティ形成にどのような影響を与えたか、集住と分散という視点からそのコミュニティはどのような空間的特徴をもっており情報技術はそれにどのように関係するかという三つの軸である。
本書は5章から構成されている。第1章では、80年代以前および難民コミュニティ形成が、主に生活防衛のための集住を視点として検討される。第2章では、80年代以降の低賃金労働者が、就業条件による集住・分散と存続・消滅を視点として検討される。第3章では80年代以降の研修生・技能実習生が検討される。第4章では、IT革命を転機とする高度人材の移動と分散が検討される。第5章では、2010年代の新規移民が次世代の胎動も含めて検討される。
本書の基となった『移民・ディアスポラ研究9』の編集作業中に新型コロナウイルスの蔓延が発生し、移民たちも感染の危険性、失業、帰国の困難など、きわめて困難な状況に置かれた。本書では、コロナ禍以降のコミュニティの変化にも焦点をあてて改訂を行っている。本書で提供した知見が、今後も起こりうるであろう移民たちの直面する窮状の解決にすこしでも役立つことを望みたい。