目次
はじめに[遠藤織枝]
Ⅰ.学校のことばのジェンダー
第1章 小学校の教科書はけっこうジェンダーレスになってきています[三枝優子]
1.はじめに
2.大きく変化した家庭科の教科書
3.吹き出しのことばの変化
4.国語の教科書について
5.おわりに
第2章 男女の差を中学生たちはどう見てきたのでしょう[加藤恵梨]
1.はじめに
2.60~70年前の中学生の環境と意識
3.現代の中学生の環境と意識
4.おわりに
第3章 大学生はどんな呼ばれ方をしているのでしょう[大島デイヴィッド義和]
1.はじめに
2.教員による大学生の呼称
3.大学生同士の呼称
4.おわりに
Ⅱ.本の中のジェンダー
第4章 マンガの中の女性はどう話しているのでしょう[因京子]
1.はじめに
2.登場人物のことばとそれが示唆するもの
3.おわりに――ジェンダー標示表現、使うも使わないも話し手の自由
第5章 絵本の中の女男はどう話しているのでしょう[佐竹久仁子]
1.はじめに
2.絵本に登場する女(の子)と男(の子)の姿
3.女(の子)と男(の子)はどのように話しているでしょうか
4.絵本のことばにもジェンダーの視点を
第6章 国語辞書はジェンダー平等でしょうか[佐竹久仁子]
1.はじめに
2.「女」「男」の語釈の変化
3.「女らしい」「男らしい」はどう説明されているでしょうか
4.性差別的な意味を持つ語の注記
5.〈人=男〉とする語釈
6.おわりに
Ⅲ.テレビの中のジェンダー
第7章 女性アナウンサーの声が高いのはなぜでしょう[大原由美子]
1.はじめに
2.テレビのジェンダー表象
3.声の持つ社会的意味について
4.テレビの声――女性アナウンサー
5.おわりに
第8章 お笑い番組の性表現はどこまでOKでしょうか[佐々木恵理]
1.はじめに
2.性器にこだわる男たち
3.裸になる男たち
4.性を買う社会を映し出す
5.性犯罪はおもしろい、はずがない
6.笑いの視点に変化のきざしあり
7.おわりに
Ⅳ.日常のことばのジェンダー
第9章 四字熟語はジェンダー不平等なものばかりです[孫琦]
1.はじめに
2.どんな四字熟語が問題になるのでしょうか
3.新聞では四字熟語はどう使われているでしょうか
4.「良妻賢母」は和製四字熟語です
5.おわりに
第10章 せっかくの懐かしい歌も困った歌詞が目立ちます[遠藤織枝]
1.はじめに
2.歌詞の中の人物
3.動作行為を表すことばの女と男の違い
4.おわりに
第11章 家族の呼び方も変わってきています[遠藤織枝]
1.はじめに
2.家族同士でどう呼び合っているでしょうか
3.夫のことを「主人」と言うのはやめましょう
第12章 日本語の「女ことば」は世界の中ではどう見えているのでしょう[本田明子]
1.はじめに
2.「女ことば」の研究
3.日本語学習者が見る日本語の姿
4.インタビューで聞いたこと
5.インタビューから考えたこと
参考文献
索引
執筆者一覧
前書きなど
はじめに[遠藤織枝]
封建社会の中で、女性が儒教の教えに束縛され圧迫され呻吟したのは、日本も台湾も韓国も同じなのに、今や台湾や韓国の女性たちはとても元気です。日本では敗戦後すぐ、新しい憲法のもと、男女同権、男女平等、女性解放と主張はされたのに、その実現には至っていません。その結果が最近耳にタコができるほど聞かされる「ジェンダーギャップ指数」(日本は2025年に148か国中118位)です。
北欧では、今では女性が内閣も国会議員も半数を占めるのが当たり前になっていますが、1970年代までは男社会で、女性の大統領や大臣など影もかたちもありませんでした。しかし、その後のジェンダー平等を目指すクオータ制など積極的な施策によって平等に近い社会が実現しています。
日本の現実は、まだまだ厳しいです。人々に強く根づいた、男が強い、男が偉い、男が先という男性優先の意識はなかなか拭い去られません。長い間に染みついた差別意識はまだまだいたるところに残っています。しかし、北欧社会の例を見ると、日本のジェンダー不平等社会だって変えられないはずはありません。女も男も、どちらの性でもない人も、だれもが、人間らしく自分らしく生きたい、という最低限の望みをかなえられる社会にしたい。すぐには変えられなくても、一歩でもそれに近づくようにしたい。それがこの本を世に出そうとしているわたしたちの願いであり目標でもあります。
従来の「女らしさ」「男らしさ」の規範意識や、いろいろな分野での性差別意識を温存するもののひとつに、わたしたちの日常使っていることばがあります。わたしたちはことばの研究を続けている者の集まりです。自分たちの持つ専門知識を活かし、その研究方法を駆使して、さまざまなことばの中に潜んでいるジェンダー不平等を掬い上げてみようと思います。そしてその不平等をなくすことを考えようと思います。ことばの中にジェンダー不平等が残っているなら、その実態を明らかにして、それをなくすために力を尽くすのがわたしたちの役割であり、任務であると考えます。
普段あまりことばに関心のない人、差別があるとは意識していない人にも、身近なところにジェンダー不平等があることに気づいてもらいたいし、知ってもらいたい。その気づきがあって初めて、不平等をなくそう、平等に近づけようと考えることができるからです。以上のような考えからこの本を企画しました。ことばを変えることは簡単ではないし、まして、意識を変えることはもっと難しいです。でも、小さな声でもたくさん集まれば大きくなります。気がついた人が声を上げることです。そして言い続けることです。小さな声の積み重ねが大きな力になることを信じています。