目次
はじめに
用語について
移民が増えたら日本の治安が悪くなってしまうんじゃないかな?
外国人には日本語を使いこなせないんじゃないの?
○在住27年のインドネシア人の熟練技能者へのインタビュー
日本の学校は不登校とかで大変なのに、さらに外国の子なんて入れたら混乱するんじゃないの?
移民が増えると日本の文化が壊れちゃうんじゃないの?
○在住23年のフィリピン人の着物師範へのインタビュー
日本代表で活躍するのは「ガイジン選手」ばかりになるのでは?
○在住11年のベルギー人の大学教員へのインタビュー
日本には外国人を入れるための法律とか制度とか、しっかりあるの?
これから、急いで取り組まなければならない多文化共生の施策は何?
移民が増えたら、かえって差別や偏見が増えるんじゃないの?
移民が増えたら日本人の仕事がなくなっちゃうんじゃない?あったとしても、給料が下がるんじゃないの?
移民が増えたら医療費とか年金とか、社会保障の負担が重くなるばかりでは?
○在住30年のマレーシア人の会社経営者へのインタビュー
世界で、多様性はどうなっていくんだろう?
移民が増えて、いいことって何だろう?
おねがい
出典
前書きなど
悠太は戸惑っていました。悠太が勤める地方新聞社で昨日急に、悠太の配置換えの辞令が出たのです。それまでのスポーツ担当から、新設される「多文化共生担当」への異動です。……多文化共生? 確かに子どもの頃にクラスに外国の子がいたり、大学時代に交換留学に行ったり、母親が日本語のボランティアをしたりしましたが、それほど深く多文化共生について考えたことはありませんでした。むしろ、スポーツは昔から真剣にしていましたし、その取材にも報道にも強いやりがいを感じ、天職だと考えていたのです。それだけに悠太はショックでした。
ただ、担当することになったのですから、まずは調べたり考えたりして準備を整えなければなりません。そこで悠太は考えてみました。
「多文化共生と言えば、外国人を日本に受け入れて働かせて、一緒に住んでいこうってことだろう? じゃあ、自分の周りに外国人は住んでいるか? いないな。」
悠太が住んでいる長野県松本市という地方都市には、観光客はそれなりにいますが、会社の同僚、アパートの隣人などの近い関係で外国人と一緒になったことはありません。そういえば、夜になるとコンビニの店員に外国人が増えるといった程度です。ただ、悠太も新聞記者なので、社会全体の流れとして、日本の深刻な人手不足、そのため外国人労働者を入れなければという話は聞いています。また東京に出張すると、電車の中も店の店員もすれちがう人にも外国人が多くてビックリします。とはいえ、それは出張時のわずかな時間の感想であり、松本の日常では外国人との多文化共生は「自分ごとではなく、ひとごと」に感じていました。そして悠太自身が疑問に思いました。
「移民が増えて、いいことって何だろう?」