目次
はじめに
Ⅰ 自然と農牧業
第1章 多様な気候と農牧業――旱魃に見舞われる北部と豊かな南部
第2章 ヤムイモ――根菜農耕文化の基幹作物、ヤムイモの食文化は保守的
第3章 キャッサバ――自給作物から加工原料へ進化中
第4章 ファダマ湿地のオンサイト灌漑水田稲作――アフリカのコメ生産を先導
【コラム1】豆腐
第5章 サバンナの牧畜民フルベの暮らし――牛の管理と乳製品の販売
【コラム2】野菜生産
Ⅱ 歴史
第6章 ソコト・カリフ国――19世紀の巨大国家
第7章 カネム・ボルヌ帝国――一千年の大帝国の光と影
第8章 植民地期の新聞とナショナリズム――活字が紡いだ自由への軌跡
第9章 奴隷から主教になったサミュエル・アジャイ・クラウザー――その波乱万丈の生涯
第10章 アフリカの大国の誕生――今も問われる1914年
第11章 新興独立国家のもがきの時代――1960年から79年まで
第12章 短期の民政と長引く軍政――1979年から98年まで
第13章 第四共和制の時代――1999年から2025年まで
【コラム3】ナイジェリアでいう南北、東西とはどこを指すか?
第14章 現代に息づく植民地支配の記憶――アベオクタが生んだ3人の著名人
第15章 連合アフリカ会社――植民地商社から近代的複合企業への歴史的変遷
第16章 ビアフラ戦争――叢林に消えた共和国
第17章 考古資料と「美術」の発見――サバンナのかかしからポルトガルへの土産物まで
Ⅲ 言語・民族・社会
第18章 ハウサ語――多民族を結びつける共通語
第19章 ヨルバ語――民族統合の象徴としての言語
第20章 ピジン英語――西洋とアフリカの接触が産んだ共通語
第21章 ハウサ社会の女性の暮らし――妻と夫の駆け引き
第22章 「私は生みの親を2番目の親だと思っている」――「里親養育」慣行にみるハウサの子育てと家族
第23章 ハウサ社会の子どもの通過儀礼――「のどちんこ」と女性器の切除を中心に
第24章 イボ人――アフリカのさまよえるユダヤ人
第25章 ジェンダー――トップダウンで進めるジェンダー平等と女性のエンパワーメント
Ⅳ 宗教・文化
第26章 呪術――その日常性と多様性
第27章 今に生きる古いにしえの神々――伝統宗教と死生観
第28章 メガ・チャーチを建設するペンテコステ諸派――それらは巨大なコンテンツ産業なのか
第29章 現代文学――アフリカ文学の革新と発信の場
【コラム4】ヨルバ語作家ファグンワ――人とその作品
第30章 ハウサ社会の恋愛小説――新たなジャンルの出現
【コラム5】ノリウッド
第31章 近現代の美術――アフリカンアートをリードする芸術実践とは
第32章 ポピュラー音楽――アフロビートからアフロビーツへ
第33章 伝統的権威者のレジリエンス――ナイジェリアの王様たちの近現代史
Ⅴ 政治・経済・開発
第34章 石油・天然ガス産業――国際情勢の影響を受けて発展するLNG
第35章 石油産業の歴史――国営石油公社と国際石油資本の角逐
第36章 財政連邦主義――石油収入の争奪戦
第37章 第四共和制下における政治的諸問題――民族、宗教、紛争、汚職
第38章 ミドルベルトの現状――北部の周縁部から国の中心に?
第39章 選挙――脱地域・脱民族主義の可能性
第40章 高等教育――急拡大する大学と問われる学歴
第41章 自警団と警察の専権性――地域の治安は誰が守るのか
第42章 医療――1940年代から現在に至るまでの課題の変遷
Ⅵ 都市
第43章 ラゴス――巨大都市の論理
【コラム6】水上都市マココ
第44章 アブジャ――国の中央に創られた首都
第45章 イレ・イフェ――「ヨルバ」発祥の都市におけるオーセンティシティ
第46章 エヌグ――ナイジェリアの近現代史を映しだす鏡
第47章 カドゥナ――冒険者の都市
【コラム7】ソコト
Ⅶ 紛争
第48章 終わらぬ戦争――ビアフラ分離主義運動
第49章 ナイジャー・デルタにおける石油戦争――原油に浮かぶ貧困と環境汚染
第50章 ボコ・ハラム――越境するナイジェリア発の武装組織
第51章 農牧民の共生と衝突――激化する暴力紛争
Ⅷ 国際関係・日本との関係
第52章 ディアスポラ――高まる影響力を警戒する政府
第53章 ナイジェリアと中国の関係――急速に深まるパートナーシップ
【コラム8】数字宝くじ
第54章 アレワ紡――1960年代の繊維産業における日本との合弁事業
第55章 日本との経済交流――息づくジャパン・ブランドとさらなる発展への課題
第56章 スタートアップとベンチャーキャピタル――新しい人材と資本、技術がもたらす社会変革
【コラム9】アグリテック
おわりに
参考文献
前書きなど
はじめに
この本はどの章、節、コラムから読み進めてもよい構成となっている。現地経験のある著者たちにより、自然、歴史、社会、文化などが多方面から紹介されているので、読者の興味や関心に沿ってアフリカの大国ナイジェリアを訪ねていただけると思う。300を超える民族を擁し文化も宗教も多様なナイジェリアはアフリカ最大の人口と経済規模を誇る国である。今世紀中葉には人口でインド、中国、アメリカに次ぐ国になるという。グローバルサウスの中でもより一層重きをなすことが確実な国である。
(…中略…)
それでは内容を簡単に紹介しておきたい。内容が関連する節やコラムがある場合は相互に参照できるように本文の中で指示した。
第Ⅰ部(自然と農牧業) 自然と植生に関する概観のあと、湿潤地域で重要な主食作物であるヤムイモとキャッサバの特質と現状、サバンナ帯の地域で急速に拡大している小規模灌漑によるコメ生産の実態が明らかにされ、牧畜が盛んな北部のフルベ牧畜民の生活様式も紹介されている。コラムでは、日本人が普及に尽力し今では現地の料理としても普及している豆腐の現状と、野菜の栽培や販売促進プロジェクトの経験が取り上げられている。
第Ⅱ部(歴史) 独立以前の北部のソコト・カリフ王国とカネム・ボルヌ帝国の興隆とイギリスによる征服の歴史や、南部におけるナショナリズム運動に関連する新聞発行の歴史、黒人宣教師クラウザーの布教活躍の様子が最初に述べられ、その後に大国ナイジェリアの誕生の歴史と独立後の歴史が主として政治に焦点を当て概説されている。特定の視点からみた歴史として、植民地時代に特異な地位を占めた町アベオクタの例や独占的企業となった連合アフリカ会社の歴史、さらにナイジェリア史最大の事件と言えるビアフラ戦争について述べられ、最後に植民地支配が契機となり発見された歴史的「美術」の紹介と解説がなされている。コラムでは混乱を招きやすい地域名称について歴史的経緯を述べつつ説明されている。
第Ⅲ部(言語・民族・社会) 主要民族の言語であるハウサ語とヨルバ語に加え全国的な共通言語ともいえるピジン英語の歴史と現況が述べられ、ハウサ社会における里親養育の慣行や子供の通過儀礼、さらに、「アフリカのユダヤ人」と語られることのあるイボ人の、他の地域や国外への進出の歴史的背景や現状が語られている。大統領夫人らによるトップダウン式のジェンダー平等運動についても紹
介されている。
第Ⅳ部(宗教・文化) 呪術や伝統宗教、最近のペンテコステ諸派のメガ・チャーチが最初に紹介され、宗教的実践レベルでみられる一部の共通性と組織や礼拝施設にみられる違いの様相が示されている。つぎに、現代文学や現地語による小説に表われる主題や関心の展開が歴史的背景との関係で述べられている。近現代の美術、ポピュラー音楽では、グローバル化の中でローカルな美術や音楽が世界に展開していく様が紹介されている。イボ社会における政治的権威による首長位の称号授与行為は政治的行為でありながらサブカルチャーだという見方もできることからこの部に含めた。コラムでは母語を使う作家として有名なヨルバ人作家の作風とその後の文学への影響、映画大国ナイジェリアのノリウッドの発展の歴史と現況について述べられている。
第Ⅴ部(政治・経済・開発) 原油の発見から液化天然ガスLNGへの発展に至る石油産業の歴史が紹介され、石油が国家財政の源泉となった過程さらに歳入の殆どを石油収入に依存する事で独特の財政連邦主義が出来上がった経緯が述べられている。さらに政府が直面している課題として、汚職、選挙、地域問題、高等教育、治安、医療等が取り上げられ、それらの多くが石油収入に関わっている状況が明らかにされている。高等教育や医療に対する予算不足が教員、学生、医療関係者の国外流出を招いているという現状も述べられている。
第Ⅵ部(都市) 新旧首都(ラゴス、アブジャ)、歴史的に重要な都市(ソコト)、地方の中心都市(イレ・イフェ、エヌグ、カドゥナ)などの歴史と現状が著者の現地体験を織り込みながら述べられている。コラムでは世界有数の「水上スラム」と呼ばれるラゴスのマココの紹介と、カリフ国の中心都市ソコトの体験的紹介がなされている。
第Ⅶ部(紛争) 様々な武力衝突の実態と原因について述べられている。具体的に取り上げられているのは、ビアフラ分離主義運動、ナイジャー・デルタにおける地域紛争、ボコ・ハラム、農民と牧畜民との衝突である。これらはいずれも1999年の民政化以降に激しくなってきた同時代の紛争や衝突であるが、その原因は地域の特殊性を反映して多様であることが明らかにされている。
第Ⅷ部(国際関係・日本との関係) ナイジェリア人ディアスポラ増大の政治経済的影響、2000年代以降急速に拡大する中国との経済関係の動向、日本との経済交流の現状について述べられている。日本との関係では歴史的なつながりの例としてアレワ紡の紹介があり、最近の経済交流では自動車や食品・調味料等の貿易やスタートアップ事業の実態や課題について述べられている。スタートアップ事業ではアグリテック関係も有望視されていることがコラムで語られている。もう一つのコラムでは、都市部の市場でよく見かける「賭け屋」の実態とそれが持つ国際的背景が取り上げられている。
(…後略…)