目次
『日本で暮らすムスリムの子どもたちの教育』刊行に寄せて――財団の視点から[笹川平和財団:安達一/岩堀兼一郎]
はじめに[服部美奈]
序 本書の視点
第1章 日本で暮らすムスリムの子どもたちの教育を研究する視点[服部美奈/松本麻人]
はじめに
第1節 外国にルーツをもつ子どもたちの教育に関する研究
第2節 日本で暮らすムスリムの子どもの教育に関する研究
第3節 日本で暮らすムスリムの子どもの多様性と本書の射程
第2章 世界各地におけるイスラーム教育の歴史と多様な展開[見原礼子/内田直義/服部美奈]
はじめに
第1節 イスラーム圏におけるイスラーム教育
第2節 非イスラーム圏におけるイスラーム教育――ヨーロッパ諸国の事例
まとめにかえて――日本のイスラーム教育をグローバルな文脈からとらえるために
第Ⅰ部 公立学校に通うムスリムの子どもと教育
第3章 公立学校における教員とムスリム児童生徒の関わり――愛知県下の学校教員アンケート調査より[中島悠介]
はじめに
第1節 教員のイスラームへの関心・関わりについて
第2節 学校におけるムスリム児童生徒の学習活動と教員の対応
第3節 ムスリム児童生徒の学校生活における教員の対応
第4節 学校教員とムスリム児童生徒の保護者の関わり
おわりに
第4章 インタビュー調査にみる公立学校における対応と先生の意識――ムスリムであり、学級の仲間であること[千田沙也加]
はじめに
第1節 聞き取り調査の概要
第2節 学習活動
第3節 学校生活
第4節 モスクに行く坂下中学校の先生たち
おわりに
コラム1 ムスリム当事者の経験――日本の公立学校とインターナショナルスクールのはざまで[クレシ明留]
第Ⅱ部 日本各地に広がるイスラーム学校
第5章 札幌インターナショナルスクール(北海道)――北海道の子どもたちの未来のために歩む学校[見原礼子]
はじめに
第1節 北海道初のイスラーム学校の誕生
第2節 アイデンティティ形成の場としてのSIIS/SIS
第3節 さらなる発展に向けた取り組みと将来構想
おわりに
第6章 オリーブ学院(群馬)――日本で暮らすムスリムの子どもたちに向けた手づくり教材[内田直義]
はじめに
第1節 イスラーム学校設立の経緯と現在の運営方針
第2節 オリーブ学院のカリキュラム
第3節 オリーブ学院が独自に行う教材作成
おわりに
第7章 インターナショナル・イスラーミーヤ・スクール大塚(東京)――「コミュニティ」のなかにある学校[アズミ・ムクリサフ]
はじめに
第1節 学校の概要
第2節 学校のミッションとカリキュラム
第3節 ムスリムコミュニティや日本社会とのつながりを育む学校
おわりに
第8章 東京イクラ・インターナショナルスクール(東京)――STEM教育を重視し日本社会で共生をめざす学校[姜珂児]
はじめに
第1節 IQRAの設立経緯と経営状況
第2節 IQRAのカリキュラムと教授言語
第3節 日本社会におけるムスリムの子どもたちの教育と課題
おわりに
第9章 友愛インターナショナル・イスラミック・スクール(東京・埼玉)――イスラームの環境のなかで多様な教育ニーズに応えるために[瀧口咲良]
はじめに
第1節 拡大を続けるイスラーム学校
第2節 多様な教師陣と児童生徒について
第3節 幅広い進路選択を可能にするカリキュラムとイスラーム教育
おわりに――ムスリムコミュニティのニーズに応えるイスラーム学校として
第10章 ブリティッシュ・インターナショナルスクール(神奈川)――国際スタンダードと日本社会への適応の模索[マルコ・ソッティーレ]
はじめに
第1節 BISの誕生
第2節 日本社会に通用するリベラルかつ国際スタンダードの教育を提供するBIS
第3節 BISの将来構想
おわりに
第11章 ダールル・イーマーン春日井保育園(愛知)――日本の保育とイスラームの調和をめざして[エル・アマンダ・デ・ユリ A.S.]
はじめに
第1節 未就学児がイスラームを学べる場としての保育園の誕生
第2節 ダールル・イーマーン春日井保育園の教育理念・保育内容の特色
第3節 保護者・コミュニティとの関係
第4節 日本社会で生きていくためには
おわりに
第12章 ジャンアカデミー(兵庫)――日本社会に生きるムスリムの育成に向けた試み[神内陽子]
はじめに
第1節 ジャンアカデミーの設立と展開
第2節 プレスクールおよびマドラサにおける教育実践
第3節 日本社会との共存をめざした取り組みと教育の展望
おわりに
第13章 福岡インターナショナル・イスラミック・スクール(福岡)――ロールモデルとなる学校の構築に向けて[クレシ サラ好美]
はじめに
第1節 知識と人格形成教育のための試み
第2節 充実した教育内容
第3節 開校1年目の現在地
おわりに
第Ⅲ部 イスラーム学校を創設した人々のライフヒストリー
第14章 日本におけるイスラーム教育への旅路[モハマド・シェハタ(翻訳:見原礼子)]
はじめに
第1節 エジプトでの生活――私の旅の原点
第2節 日本での生活と北海道イスラーム協会への参加
第3節 学校設立前の北海道イスラミックソサエティ(HIS)における教育活動
第4節 変遷と成長――札幌イスラミック・インターナショナルスクール(SIIS)
第5節 札幌インターナショナルスクール(SIS)としての新たな章――拡大と認証
おわりに
第15章 オリーブ学院に関心をもってくださったみなさまへ――校長よりご挨拶[ムハンマド・ジャービル(聞き手:内田直義)]
はじめに
第1節 バングラデシュでの幼少期
第2節 マドラサへの進学
第3節 首都ダッカにあるイスラームの高等教育機関へ
第4節 来日のきっかけ
第5節 日本での教師生活
第6節 なぜオリーブ学院をつくったか
おわりに――私たちにできることは何か
第16章 日本での教育者としての歩み[ホサム・ザイナー(翻訳:アズミ・ムクリサフ)]
はじめに
第1節 幼少期・青年期の経験
第2節 大学での学びと初期のキャリア
第3節 高度な知識の追求
第4節 シリア動乱期におけるアドボカシー活動と社会的貢献
第5節 教育者への転身と在日ムスリムコミュニティへの貢献
おわりに――献身とレジリエンスの遺産
第17章 『義務教育は、日本の学校へ行ってほしい』[モハメド・タルハ(聞き手:エル・アマンダ・デ・ユリ A.S.)]
はじめに
第1節 誕生からスリランカを離れるまで――来日のきっかけ
第2節 日本の小学校へ入学――「学校へ行かないといけないのを知らなかった」
第3節 日本の中学校へ入学――「英語ができるので、ほかの生徒に頼られ、仲良くなった」
第4節 日本でのイスラーム勉強とマドラサの開設――「父が先生になって、僕たちに教えていた」
第5節 日本での学校生活を振り返って――2つの選択肢
第6節 イスラームを学ぶ際に起きた数々の試練――それでも学ぶことを諦めなかった
第7節 現在の活動――管理者、先生、そしてムスリム児童がいる学校の相談窓口になりたい
第8節 子どもの義務教育は、日本の学校へ行ってほしい
おわりに
第18章 ジャンアカデミー校長 ナザル智子の歩み[ナザル智子(聞き手:神内陽子)]
はじめに
第1節 音楽の日々とピアニストとしてのキャリア
第2節 出会い、入信、パキスタンへの「旅立ち」
第3節 パキスタンでの生活
第4節 再び日本へ、そして「母」になる
第5節 女子教育の不安とアカデミーの設立
おわりに――ナザル氏のこれから
コラム2 私の人生――知識と文化の旅[モハメド・エルノビ]
結 日本におけるムスリムの子どもの現在
第19章 ニューカマーとしてのムスリムの子どもたち[松本麻人]
はじめに
第1節 ニューカマーとしてのムスリムの子どもの数
第2節 子どもたちの学びの場
おわりに
第20章 日本社会とムスリムコミュニティ[内田直義/服部美奈]
はじめに
第1節 イスラーム学校の先生方がみた日本社会とムスリムコミュニティ
第2節 日本社会とムスリムコミュニティがつながる可能性
おわりに
おわりに[中島悠介/内田直義]
あとがき[千田沙也加]
巻末資料1 英文目次
巻末資料2 用語集
巻末資料3 笹川平和財団「日本社会におけるイスラムの実像」事業(2022-2024年度)ムスリムと教育に関する調査報告書(2024年9月)の概要
監修者・編著者・著者紹介
前書きなど
はじめに[服部美奈]
(…前略…)
本書の構成
本書は、「『日本で暮らすムスリムの子どもたちの教育』刊行に寄せて――財団の視点から」、はじめに、序、第Ⅰ部、第Ⅱ部、第Ⅲ部、結、あとがき、巻末資料から構成される。
「『日本で暮らすムスリムの子どもたちの教育』刊行に寄せて――財団の視点から」は、本書の刊行にあたり、本事業を3年間率いてくださった笹川平和財団が寄せてくださった言葉である。
「はじめに」は、本書刊行の経緯や本書の構成、本書で取り上げるイスラーム学校や用語の定義を説明している。
序「本書の視点」は、「第Ⅰ部」から「結」を読み進めるうえでの基本的な視点を提供するためのものである。2つの章(第1章~第2章)から構成される。第1章「日本で暮らすムスリムの子どもたちの教育を研究する視点」(服部、松本)では、本書が対象とする日本におけるムスリムの子どものための教育を、主に教育学の領域で進められてきたオールドカマー/ニューカマー研究、そして在日ムスリム研究および在日ムスリム教育研究に関する先行研究のなかに位置づけ、先行研究における本書の位置づけを示す。次に第2章「世界各地におけるイスラーム教育の歴史と多様な展開」(見原、内田、服部)では、ムスリムがマジョリティの地域とマイノリティの地域を対象とし、それらの地域での宗教教育やイスラーム教育の位置づけを示す。これにより、本書が対象とする日本におけるムスリムの子どものための教育が、他の地域とどのように類似し、あるいは異なるのかを相対的にとらえるための視点を提供する。
第Ⅰ部「公立学校に通うムスリムの子どもと教育」は、公立学校に通うムスリムの子どもに焦点をあてる。2つの章(第3章~第4章)とコラム1から構成される。第3章「公立学校における教員とムスリム児童生徒の関わり――愛知県下の学校教員アンケート調査より」(中島)では、愛知県内の公立小中学校の教員を対象として実施したアンケートの結果を取り上げる。次に第4章「インタビュー調査にみる公立学校における対応と先生の意識――ムスリムであり、学級の仲間であること」(千田)では、公立学校の教師がムスリムの子どもたちと日々どのように向き合っているのかを、教師へのインタビューをもとに明らかにする。コラム1「ムスリム当事者の経験――日本の公立学校とインターナショナルスクールのはざまで」(クレシ明留)では、日本で育ったムスリム第二世代である著者が、自らの学校体験をもとに、第二世代が日々成長の過程で直面するさまざまな現実とそれに対する自らの経験を当事者の視点から描いている。
第Ⅱ部「日本各地に広がるイスラーム学校」は、日本でムスリムの人々によって設立されたムスリムの子どものための学校を取り上げる。各地のイスラーム学校ごとに9つの章(第5章~第13章)から構成される。(……)訪問調査は複数のメンバーで実施し、本書のもととなった報告書の各章の多くは複数のメンバーによって分担執筆されている。本書では報告書をもとに、一人の執筆者が内容を再構成し、学校の特徴をそれぞれの視点から描くことを心がけた。
第Ⅲ部「イスラーム学校を創設した人々のライフヒストリー」では、日本でムスリムの子どものためのイスラーム学校を創設した人々によって、自らがたどってきた人生とともに、学校創設にいたる経緯や学校創設に込めた思いが語られている。イスラーム学校ごとに5つの章(第14章~第18章)とコラム2から構成される。(……)今回、第Ⅱ部の学校の全員の先生方にご寄稿いただくことはかなわなかったが、第Ⅱ部と第Ⅲ部は対の形になっている。第Ⅱ部で取り上げたイスラーム学校を、第Ⅲ部では当事者の視点から、あらためて多層的に理解していただけるように構成した。なお、今回残念ながらご寄稿がかなわなかった先生方にも別の機会に是非、お願いできればと考えている。
結「日本におけるムスリムの子どもの現在」は、本書を総括する部である。2つの章(第19章~第20章)から構成される。第19章「ニューカマーとしてのムスリムの子どもたち」(松本)は、第Ⅰ部から第Ⅲ部をふまえて日本におけるムスリムの子どもの教育の現在をあらためて考えるものである。第20章「日本社会とムスリムコミュニティ」(内田、服部)は、ムスリムの子どもの教育を取り巻く現状と課題をふまえて、日本社会とムスリムコミュニティのこれまでの関係性をふりかえるとともに、これからの関係性を考える。
「おわりに」(中島、内田)は、あらためて教師が子ども一人ひとりと向き合える伴走者となること、そのための時間・体制が確保されることの重要性や、日本社会のマジョリティとムスリムコミュニティがともに参加し、議論できる環境づくりへの問題提起がなされている。
「あとがき」(千田)は、本事業を進めるなかでのさまざまな出来事と多くの素晴らしい方々との出会い、そして本書への思いが語られている。
本書の末尾には、巻末資料1として「英文目次」、巻末資料2として「用語集」、巻末資料3として本書第Ⅰ部と第Ⅱ部のもととなった「笹川平和財団『日本社会におけるイスラムの実像』事業(2022-2024年度)ムスリムと教育に関する調査報告書(2024年9月)」の概要を掲載した。