目次
本書への賛辞
献辞
はじめに 未来世代のために
第1章 自然から政治へ――どのように一つになったか
幼少期
政治家見習い時代――政治と政策
私を突き動かすもの
最初のひらめき――アジェンダ21
2回目のひらめき――ドネラ・メドウズとシステム思考
「未来世代のためのウェルビーイング法」の誕生プロセス
第2章 ビジョンを描く――本法への旅(1992~2011年)
義務がどのように約束になったのか
第一次持続可能な開発計画「今までと違う生き方を学ぼう(Learning to Live Differently)」1999~2003年
第二次計画「今までと違う生き方を始めよう(Starting to live differently)」2003~2007年
第三次計画「一つだけのウェールズ、一つだけの地球(ワンウェールズ・ワンプラネット)」2007~2011年
「一つだけのウェールズ、一つだけの地球(ワンウェールズ・ワンプラネット)」計画――2015年法を芽吹かせた第三次計画
「一つだけのウェールズ、一つだけの地球」計画の開始
目覚め
「未来世代法」の法制化へ
第3章 ネットワークをつくる――ウェールズにおける「未来世代法」とその実行(2011~2015年)
一つになる――「未来世代法」はどのように生まれたのか
法制化への議論
最初の一里塚(マイルストーン)――政府の施政方針
本法の成り立ち――2012~2015年
政府外から専門知識(と監査)を取り入れる
環境正義と社会正義を持続可能な社会に結び付ける
「私たちが望むウェールズ」(The Wales We Want)
「努める」から「確実にする」への移行
「未来世代のためのウェルビーイング法(2015年ウェールズ)」
ウェールズ「未来世代コミッショナー」の役割
情熱とエネルギーにあふれた、献身的な市民団体に敬意を表する
対話――若者たちの声
第4章 真実を語る――「未来世代法」とその大志に圧力をかけ続ける
真実を語る――私たちは今、頭を入れ替えているか?
本法の実践――始まりの兆し
真実を語る――これまでの本法について、私の振り返り
真実を語る――持続可能な開発の実践
真実を語る――本法は約束を果たしているか?
第5章 学ぶ――「未来世代法」の精神を生きる
未来へのビジョン
エコノミー(経済学)の前にエコロジー(生態学)――私たちが生き残るための最も重要なツール
未来からの眺め――2050年のウェールズ
2070年へのビジョン――南ウェールズの三つの渓谷を変革する
ウェールズ政府による、ウェールズのビジョン
第6章 慈しむ――ウェールズと広い世界のための大胆なアイデア
未来へのアイデア
希望の声――夢を抱く人々
他のところからの声
おわりに 軽負担生活への私の旅
追記
最後の言葉 ウェールズ初代未来世代コミッショナー、ソフィー・ハウによる
謝辞
付録1 「一つだけのウェールズ、一つだけの地球(ワンウェールズ・ワンプラネット)」――持続可能なウェールズの私たちのビジョン
付録2 参考資料――「Well-being of Future Generations(Wales)Act 2015」の歴史
索引
若者の声 「ワン・ヤング・ワールド」会議(2019年、ロンドン)より
監修者解説
解説 ウェールズの持続可能な再生――その思想と行動の物語[中村民雄]
解説 未来から来た法律――日本に導入する際の具体的なポイント[明日香壽川]
日本語版あとがき
著者・監修者・翻訳者・翻訳協力チーム統括責任者紹介
前書きなど
解説 ウェールズの持続可能な再生――その思想と行動の物語[中村民雄]
本書は、英国のウェールズというcountry(くに[邦])において、著者らが先導して作っていった「未来世代のためのウェルビーイング法」(2015年)の、成り立ちまでの著者の活動・経験・思索・学びを語り(第1~3章)、また立法後の現実の変化(の困難さ)を検証しつつウェールズの持続可能な社会としての未来を展望し、ウェールズ以外の地でも同様の試みが現れることに期待するものである(第4~6章)。
一言でいえば、これは現行の大量生産・大量消費・大量廃棄の経済活動にもとづく生活に異議を唱え、抜本的に見直し、代わりに、地球の環境負荷許容限度内で活動し生きる工夫を、個人で、家族で、企業で、コミュニティで、政府で、国全体で考え、そうした人々の創意工夫に信頼して明るい未来像を描きつつ、生活文化・経済活動文化・政府活動文化を転換させていくべきだと訴える本である。
だが、このような要約は、本書の心をまだ捉えていない。なにより、この未来のための現状変革運動がウェールズでなされていることの重さを知るべきだろう。英国におけるウェールズは、産業革命期以降の大量生産消費社会においては、石炭産地として英国の工業化を支えた。ところがエネルギー源が石油に転換してからは、捨て去られた地域となった。元炭鉱労働者とその家族の多くは、経済的にも健康的にも恵まれないまま置き去りにされ、多くの地域コミュニティは疲弊したまま放置された。だから少なからぬ人々が生きるためにウェールズ以外の場所へと出て行った。そのウェールズが本書の舞台なのである。著者はその疲弊し経済的に弱体化したウェールズにおいて、経済・社会・環境・文化いずれにおいても明るい未来のある持続可能なウェールズに変えていくべきだと奮闘する。その物語が本書なのである。
(…後略…)