目次
カラーページ(レシピ・食文化トピック)
まえがき
Ⅰ 総論
第1章 世界におけるブラジルとその食文化――国の形成に並行して進化し、今も変容中
第2章 6つのバイオームと多様な食文化――地勢が育む食の多様性
第3章 多人種多民族国家の食文化――ダイナミズムから生まれる唯一無二の魅力
Ⅱ 基層食文化
第4章 先住民インディオ食文化――伝統食と多様化による弊害
第5章 アフロブラジル料理――深くて長い結びつきの中で形成されたもの
【コラム1】アフリカのブラジル料理
第6章 ポルトガル食文化――植民地本国の食文化もブラジル化
【コラム2】博物学者たちが体験した19世紀前半のブラジル食事情
Ⅲ 主な移民食文化
第7章 イタリア移民の食文化――故郷の地方料理がブラジルでは一般化
第8章 シリア・レバノン料理――チェーン店の貢献と難民によるリセット
第9章 日本移民の食べ物からブラジルの食べ物へ――日本食のネイティブ化
【コラム3】日系人の食卓
【コラム4】南米大陸の中心で“ソバの出前”が流行るまで
第10章 アマゾン開拓と日系食文化の普及――熱帯の野菜作りに「技あり」
第11章 アジア系移民料理――中国・韓国移民とオリエンタル料理ブーム
【コラム5】ひっそりと受け継がれる東欧ウクライナ料理
Ⅳ ブラジル食文化直射
第12章 噛むほどに旨味広がる魅惑の塩漬け干し肉――気候の違いで生まれる味の地域差
第13章 シュラスコを巡る諸説と各地のご当地肉料理――肉のカットの仕方にも地方色あり
第14章 沿岸地方におけるシーフード熱愛文化――お魚大好きブラジル人も少なくない
第15章 広大な国土をつなぐ三大水系と淡水魚を嗜好する食文化――大型ナマズもピラニアも美味!
第16章 バカリャウ料理――干しダラが彩る祝祭と1000のレシピ
第17章 国民食フェイジョアーダを巡って――「創られた奴隷料理神話」
第18章 ブラジル食の基本は“フェイジョン&ライス”――拘置所の“クサイめし”も同様
第19章 豊かな素材+チャレンジ精神=移民文化の成熟――ヤキソバの多義的パワー
第20章 トウモロコシも先住民から受け継がれた食の文化遺産――マンジオッカと並ぶ主要食材
第21章 調味料の基本は塩・胡椒・ニンニク――ポルトガルから伝わった味
【コラム6】香草も大好き
第22章 ピメンタ(トウガラシ属)も多種多様――激辛から甘口まで色とりどり
第23章 多彩で豊かなフルーツ類――果物摂取不足の時代から何でもありの時代へ
第24章 タピオカ、ポン・デ・ケイジョ――愛されるモチモチ感
第25章 ブラジル産チーズの奥深さ――地産地消から国際品評会受賞へ
【コラム7】ブラジル版「ロミオとジュリエット」
第26章 世界で一番コンデンスミルクが好き――菓子に使われ始めたのは1960年代から!?
第27章 砂糖大好き国民の形成と背景――砂糖とともに520余年
【コラム8】アイス類はフルーツ果汁ソルベ(ソルベッチ)が主体
Ⅴ 様々な食材・食品加工の諸相
第28章 食の多様性の“根っこ”南米原産マンジオッカ――食の文化遺産の原点
第29章 マンジオッカ活用術――うまみ調味料、お菓子から蒸留酒まで
【コラム9】マンジオッカ副産物
第30章 ラード生産、オレンジ加工からパネトーネ産業まで――イタリア移民が興した食品関連事業の三事例
第31章 養殖ティラピアとチリ産サーモン――水産品消費拡大の立役者
第32章 アマゾン原産アサイー――本場の食べ方と伝説、地域市場から全国市場へ
【コラム10】アサイー副産物~パルミットやアサイー茶
第33章 ブラジルの畜産加工史をひも解く――みえてくる意外な日伯関係史
第34章 内陸部乾燥地帯におけるヤギの多義的重要性――皮も肉もミルクもヤギ糞も
Ⅵ 飲料
第35章 500年の歴史を持つ米州最古の蒸留酒カシャッサ――自然の多様性が与えた世界で唯一の個性
【コラム11】カイピリーニャの発祥の地はサンパウロ州内陸部か?
第36章 世界第3位のビール消費大国ブラジル――ご当地材料を使うクラフトビールも進化中
第37章 コーヒー――ブラジル産が支配する、世界で愛される飲料
【コラム12】再注目されるアマゾン産SDGsカカオ
第38章 マテ茶――コーヒーを超えるマテ茶の歴史
【コラム13】富士山を望むお茶の里
第39章 “ワインベルト”の常識を覆すブラジル産ワイン――優越点は熱帯ならではのテロワール
【コラム14】ブラジル産日本酒~創業90年のブラジル酒蔵
Ⅶ 地方料理
第40章 北部アマゾン――ブラジル郷土料理の原点
第41章 北東部(ノルデスチ)――素朴な食文化と豊かな食材
第42章 南東部ミナスジェライス――金鉱と酪農が生んだ食文化
第43章 南部三州――ヨーロッパのアイデンティティに支えられた食文化
第44章 中西部――パラグアイなど隣国の影響も
Ⅷ 暮らしの中の食文化
第45章 一日四食から一日三食へ――食事の回数と時間帯の変遷
第46章 パダリア――古き良きパダリアと新参ベーカリーの台頭
第47章 ランショネッチとバール――庶民の生活に寄り添う食事処と居酒屋
第48章 外食文化――ブラジル外食文化が直面する激変
【コラム15】食卓を支えるフェイラの今昔
第49章 カトリック行事と食文化――美味しく楽しい宗教行事
第50章 サンパウロのレストラン――興亡激しい高級化とおしゃれ化と多様化と高額化
第51章 ブラジル食文化・食材の国際化――ブラジルの田舎料理に世界が舌鼓
Ⅸ 文学者とブラジル食文化
第52章 民俗学者カマラ・カスクードの食文化研究――再評価される「ブラジルの柳田国男」
第53章 ジョルジ・アマードとマヌエル・ケリーノ――ブラジル人類学の始祖をよみがえらせた国民作家
第54章 ヴィニシウス・デ・モラエスとパブロ・ネルーダ――食を愛した2人の詩人
第55章 ラフカディオ・ハーンとジルベルト・フレイレ――民俗学者ハーンとブラジル社会論
あとがき
食文化からブラジルをもっと知るためのブックガイド
前書きなど
まえがき
(…前略…)
本書の構成は、まず総論で全体像をおさえてから、3つの基層食文化(先住インディオ食文化、ポルトガル食文化、アフリカ食文化)の概要を復習し、次に主な移民食文化の略史と現状をみていく。その上で、消費者=食べる人の視点からブラジルの地方食文化を複眼的に直射し、料理の素材の豊かさを確認しながらブラジル食文化の多層性を見直していく。さらに、暮らしのなかの食文化を検証し、最後に、文学とブラジル食文化の深い相互関係について思いを馳せる、といった構成(55章+コラム15本)になっている。各章の執筆者はブラジルでの生活体験も豊富でブラジル食文化のディテールに精通し、その奥深さについて一家言を持っている研究者やライターの方々であるから、いずれの章も執筆者のこだわりの専門知が反映されていると自負している。
本書を通じて、ブラジル食文化の多義的面白さを読み取っていただければ幸いである。
(…後略…)