目次
はじめに
第1部 子ども会を考える前提
序章 いま、子ども会を考える
1 なぜ、子ども会の研究なのか
1-1 問題の所在
1-2 研究の目的
1-3 研究の問い
2 子ども会をめぐる動向
2-1 子ども会とは何か
2-2 子ども会の歴史
2-3 子ども会の位相
3 学術研究における子ども会
3-1 子ども会研究のあゆみ
3-2 子ども会研究の進化
3-3 先行研究が抱える課題
4 本書の内容と研究方法
4-1 本書の構成
4-2 研究の方法
4-3 研究の意義
第1章 分析の枠組み
1 子ども会を支えるメンバー
1-1 地域社会を支えるメンバー
1-2 子ども会を支えるメンバー
1-3 子ども会を支えるメンバーの枠組み
2 子ども会を支えるコアメンバー
2-1 育成者
2-2 育成会
2-3 子ども会指導者
2-4 保護者
3 子ども会を支える周辺メンバー
3-1 自治会・町内会
3-2 地域の各種団体
3-3 小学校・PTA
3-4 自治体行政・社会福祉協議会
3-5 企業・NPO法人
4 子ども会を支えるメンバーの類型化
4-1 子ども会を支えるメンバーの位相
4-2 子ども会を支えるメンバーの論点
4-3 子ども会を支えるメンバーの留意点
第2部 地域の挑戦
第2章 子ども会の実態
1 大都市の子ども会と本章の問い
1-1 政令指定都市と子ども会
1-2 先行研究とその要点
1-3 本章の問いと分析の視点
2 名古屋市の子ども会の動向
2-1 名古屋市の子ども会のあゆみ
2-2 名古屋市の単位子ども会の団体数と会員数の推移
2-3 名古屋市の子ども会の現状
3 単位子ども会の実情
3-1 竹田町二丁目と子ども会活動のあゆみ
3-2 現在の子ども会の活動と予算
3-3 育成会と育成者の役割
4 考察
5 大都市における子ども会の展望
第3章 子ども会とワークショップ
1 ワークショップと子どもたち
1-1 ワークショップという手法
1-2 子どもたちの参加
1-3 子ども会への影響
2 先行研究・本章の問い・分析の視点
2-1 ワークショップの先行研究
2-2 先行研究の要点と課題
2-3 本章の問いと分析の視点
3 御剱学区における子ども会ワークショップ
3-1 御剱学区子ども会とワークショップ開催の経緯
3-2 各回の内容と子どもたちの反応
3-3 考察
4 子ども会ワークショップの将来展望
第4章 子ども会とリスケーリング
1 地域社会とリスケーリング
2 先行研究・本章の問い・分析の視点
2-1 リスケーリングの先行研究
2-2 先行研究の要点
2-3 本章の問いと分析の視点
3 単位子ども会の再編過程
3-1 六郷北学区と子ども会合併の推移
3-2 合併による成果と課題
3-3 考察
4 子ども会再編のこれから
第3部 行政の支援
第5章 行政による子ども会支援事業の廃止
1 愛知県内の自治体における子ども会支援事業の動向
2 先行研究・本章の問い・分析の視点
2-1 先行研究の検証
2-2 本章の問いと分析の視点
3 事例研究
3-1 半田市における子ども会支援事業の廃止
3-2 高浜市における子ども会支援事業の廃止
3-3 比較・考察
4 行政による子ども会支援の展望
第6章 子ども会育成会の連絡・連合組織の改革
1 子ども会にとっての連絡・連合組織
1-1 育成者・育成会と連絡・連合組織
1-2 愛知県内の動向
2 先行研究・本章の問い・分析の視点
2-1 子ども会育成会の連絡・連合組織に関する先行研究
2-2 先行研究が抱える課題
2-3 本章の問いと分析の視点
3 市子連改革の実践
3-1 豊川市と市子連改革の経緯
3-2 市子連改革の実践と成果
3-3 考察
4 残された検討課題
第7章 子ども会支援事業の再直営化
1 子ども会支援事業の担当と大府市の再直営化
2 先行研究・本章の問い・分析の視点
2-1 先行研究とその課題
2-2 本章の問いと分析の視点
3 子ども会支援事業の再直営化の実践
3-1 子ども会支援事業の再直営化の過程
3-2 再直営化後の子ども会支援事業の実態
3-3 考察
4 残された検討課題
第4部 子ども会のこれから
終章 子ども会の展望
1 何をどこまで明らかにしたのか
2 残された研究課題は何か
謝辞
参考文献・参考資料
索引
前書きなど
序章 いま、子ども会を考える
(…前略…)
4 本書の内容と研究方法
4-1 本書の構成
ここまでの内容をふまえ、本書は表題のとおり『子ども会と地方自治』をテーマに、子ども会の最新動向を対象として、以下のながれから構成される。第1章「分析の枠組み」では、本書における検討を進めるうえでの全体的な分析枠組みを提示する。具体的には、コアメンバーと周辺メンバーのふたつに区分して、子ども会の運営と活動を支えるさまざまな主体についてみていく。同時に、それらのうち、本書において扱う主体についても、あらかじめ提示しておく。
第2章「子ども会の実態」では、名古屋市の子ども会を事例として、全市的な子ども会の状況および個別の単位子ども会の実情という双方から、子ども会の実態を整理していく。ここでは、名古屋市子ども青少年局が実施したアンケート調査の内容に依拠し、子どもたちおよび保護者の双方の事情に照らしながら、名古屋市全体の子ども会がいま、どのような実態に直面しているのかについてみていく。同時に、名古屋市瑞穂区御剱学区の竹田町二丁目子ども会という単位子ども会を対象として、そこでの運営と活動を検証することで、子ども会の現場における実態を詳細に描いていきたい。
第3章「子ども会とワークショップ」では、名古屋市瑞穂区の御剱学区子ども会として1年間にわたり取り組んだワークショップ「ワクワク未来会議」を取り上げる。子ども会が行なうワークショップというと、たとえば工作教室において専門家からの指導を受けながら木製のコースターを作製した、などの内容の場合が多い。しかし、御剱学区子ども会が取り組んだのは、夏祭りやクリスマス会のプログラムや役割分担、必要な用具などを子どもたち自身が考え、企画を構想するためのワークショップであった。さらに、ワークショップを通じて検討した企画の内容は、子どもたち自身が担い手となって実行するところまでいたっている。こうした一連の動向を検証することで、子ども会にとってのワークショップの意義を明らかにしたい。
第4章「子ども会とリスケーリング」では、名古屋市北区の六郷北学区における「きずな子ども会」を事例として取り上げ、単位子ども会としてリスケーリングを実行することで持続的な運営体制の構築にいたった事情について検証していく。単位子ども会は多くの場合、近隣の単位子ども会との合併にいたる前に、休止や解散となってしまう。しかし、六郷北学区では町内会長を中心に子ども会の空白地域を解消させるために、休止中の単位子ども会を復活・合併させて新たに「きずな子ども会」を創設するにいたった。こうしたうごきの背景には、いかなる事情があったのだろうか。
第5章「行政による子ども会支援事業の廃止」では、自治体行政として実施してきた子ども会支援事業を廃止させた、半田市と高浜市という愛知県のふたつの自治体を取り上げる。半田市と高浜市では長年にわたり、子ども会に対して補助金や助成金を交付するなどして、子ども会の運営と活動を支えてきた経緯がある。しかし、両市とも2021 年度をもって、子ども会支援事業を廃止させており、その動向を検証する。実は、事業廃止の背景には、単位子ども会や小学校区子ども会による退会が相次ぎ、全市レベルでの子ども会育成会の連絡・連合組織が解散してしまったという事情があった。
第6章「子ども会育成会の連絡・連合組織の改革」においては、愛知県豊川市の「豊川市子ども会連絡協議会」を事例として取り上げ、ここが実施した子ども会育成会の連絡・連合組織の改革について検証していく。豊川市においても他の自治体と同様に、市内の単位子ども会は担い手不足と保護者負担の問題に悩まされ、年々、子ども会の件数が減少していく状況にあった。こうしたなかで、豊川市子ども会連絡協議会として「単位子ども会を支える」という目標を打ち出し、協議会が主催するさまざまな行事や会議を大胆に見直して、保護者や育成者が単位子ども会の活動に注力できる環境を整えていったのである。はたして、豊川市子ども会連絡協議会はどのような経緯で自ら改革を進め、それがいま、何をもたらしているのだろうか。
第7章「子ども会支援事業の再直営化」では、長年にわたり社会福祉協議会に対して委託してきた子ども会支援事業を、あえて再直営化するという対応を行なった愛知県大府市の動向を取り上げて検証する。子ども会支援事業に関しては、実は自治体行政の直営のみならず、社会福祉協議会への委託という形態も多くみられる。こうしたなかで、大府市では全庁的に総合的な子ども会支援の体制を整えるというねらいから、あえて子ども会支援事業を再直営化した経緯がある。それでは、大府市においてはどのような推移のもと、子ども会支援事業の再直営化を進めてきたのだろうか。また、再直営化の結果として、何か新たなうごきは生じはじめているのだろうか。
終章「子ども会の展望」では、本書における一連の検討の結果として、本書の3つの問い、すなわち「わが国の子ども会はいま、どのような実態にあるのか」「子ども会が抱える問題状況をふまえ、運営と活動の改善を達成できた場合、そこにはどのような背景や事情があるのか」「これからの時代の子ども会に対して求められる視点や発想は、どのようなものか」に対する答えを提示する。そのうえで、本書の残された研究課題にも言及したい。
(…後略…)