目次
まえがき[李修京]
第1部 多文化社会へ移行する時代へのメッセージ
第1章 価値観を貫く[安斎育郎]
第2章 人権・共生・平和の実現に向けたスポーツの努力――「世界テコンドー連盟」の試み[趙正源]
第3章 友愛の地を求めて――民主主義の限界、歴史を切り開く共和主義[鷲山恭彦]
第4章 韓国と日本、2つの祖国を生きてきた生涯[河正雄]
第2部 多文化共生・人権・教育への多様なアプローチ
第1章 人権の歩みと共生への努力と数字にみる社会――相互努力の双方向性から共生へ[李修京]
Column 「生理」の理解と「生理貧困」の解決で共生社会へ[李修京]
第2章 多文化主義・多文化共生政策の歴史的背景と課題[権五定]
第3章 多文化共生社会の基盤としての人権教育・啓発[林尚示]
第4章 人権問題としての「教員の長時間労働」[立田順一]
第5章 忘却されているもう一つの人権――労働者の海外送り出し国における問題[カルロス,マリア・レイナルース・D]
第6章 教権と学生の人権は両立できないのか?――「学生人権条例」の廃止をめぐる論争[金映錫]
第7章 学問の本質を教える教育論は多文化共生を促進するか[渡部竜也]
第8章 教育は私たちの何を支えるか――現代の学校の価値と可能性[末松裕基]
Column 教育の性質と目的をどのような視野で考えていくか?[末松裕基]
第9章 「再分配――承認ジレンマ」を超えた多文化社会の実現[鄭虎範]
第10章 多様性の共生のために「リスペクト」の概念を探る[戸田孝子]
第11章 異なる語りをもつ他者と共に生きる市民を育てる――「真正な対話」に基づく多文化共生のための歴史教育[金鍾成]
第12章 日本語教科書から考える多文化共生時代の言語教育――ジェンダーとセクシュアリティの視点を通して[米本和弘・石川智・森祐太]
Column 多文化社会における言語教育[石黒みのり]
第13章 日本人学校における多文化共生に向けた教育[見世千賀子]
Column 高等学校における英語以外の外国語という選択肢[日下部龍太]
第14章 仮想空間と現実空間をつなぐ教育の可能性――多文化共生と社会的公正を目指して[鈴木直樹]
Column AI時代の語学教育[木村守]
第15章 自然と人間の共生社会[権秀賢・崔東壽]
第3部 日本の中の多文化共生と人権
第1章 「不良な子孫」を産ませない――優生思想と日本[井竿富雄]
第2章 発達障害――「ニューロダイバーシティ」という見方へ[井竿富雄]
第3章 部落差別をなくすために――部落差別解消推進法制定を受けて[森実]
Column ハンセン病と差別[大川正治]
第4章 在日韓国・朝鮮人のイメージ――「境界人」のこれから[林晟一]
第5章 ニューカマー1.5世の自叙伝から考える多文化共生社会の未来[范文玲]
Column MRSDH+やIn Betweenの尊重から始める多文化共生[陳天璽]
第6章 日本における外国人児童生徒[原瑞穂]
Column 多言語環境で育つ在日中国朝鮮族の子どもたち[蔡光華]
第7章 外国人医療の現場から見えてくる日本社会の課題[沢田貴志]
第8章 人間として人間の世話をすること[色平哲郎]
第9章 映画『カムイのうた』とアイヌ文化の伝承――北海道東川町の取り組み[高石大地]
Column 若者が地方を変える「地域おこし協力隊」という選択肢[古高桜京]
第10章 マグロの豊漁をもたらした異国の神――青森県大間の媽祖信仰[藤井健志]
Column 海を渡ったハワイの魚名――日本と海外をつなぐ魚の名称にみる多文化と共生[橋村修]
第11章 詩でつなぐ日韓と世界[佐川亜紀]
第12章 「共存共生する力」を考える[梅山佐和]
第13章 環境的不公正とそのとらえ方[永橋爲介]
Column 差別や排外的な気持ちを人が手放す瞬間[永橋爲介]
第14章 森崎和江『からゆきさん』を読む[石井正己]
第15章 足尾銅山煙毒鉱毒事件を通じてみる人間の選択――田中正造と山田友治郎そして古河市兵衛[濱中秀子]
Column マイノリティの社会的意味[熊野びわ]
第16章 地球的課題に向き合うための地理教育の実践と課題[吉田香]
第4部 世界の中の多文化共生と人権
第1章 ディズニー映画とポリティカル・コレクトネスの行方[小澤英実]
第2章 女性参政権を求めて――スイス映画にみる差別との闘い[若林恵]
Column スイス映画『神の秩序』の周辺[若林恵]
第3章 ヴァージニア植民地の邂逅――ポカホンタスとジョン・スミス[斎木郁乃]
第4章 イギリスの街にみる性の多様性――市民がつくり上げるプライド・パレードとLGBTQ+フレンドリー・スペース[影澤桃子]
第5章 移民と向き合うイタリア[ラタンジオ,リリアンヌ]
第6章 モンゴル伝統芸能の守護神――吟遊詩人のホールチが果たしてきた種々の役割[蒙古貞夫(モンゴルジンフー)]
第7章 村のよそ者と民俗儀礼[出口雅敏]
第8章 中道は「真ん中の道」にあらず[鈴木隆泰]
第9章 音楽は国境・人種・文化・時間……を超え「人間と人間」をつなぐ[禹東熈]
第10章 多文化共生とスポーツ[繁田進]
Column 「外国につながる子ども」と共に成長する韓国のサッカー[李昌燁]
第11章 多文化社会韓国の「国民」になるという挑戦――「ナショナリティ」と「アイデンティティ」の抵抗と交錯[車ボウン]
第12章 韓国における人権獲得のための闘争[李貞姫]
第13章 社会科教科書における少数文化集団に関する内容の統合[朴志玹]
第14章 韓国における多文化教育の実像[許壽美]
Column AI時代における韓国の学校教育[金秀玟]
第15章 韓国における外国人政策と多文化主義[緒方義広]
第16章 超低出生と高齢化の進む韓国[金泰憲]
Column 韓国の玄関口、仁川[城渚紗]
Column 釜山地域における多文化社会への変遷[李京珪]
第17章 韓国芸能の影響を受ける中国の今[木村奈津子]
Column 中国における日本語学習者の現状[ゴスチンゴワ]
あとがき――「グローバル社会」の共生を考える[権五定]
執筆者紹介
前書きなど
まえがき
本書は、コロナ禍による閉塞感が漂うなか、世界の多文化共生への現状を多角的な視点から探査し、厳しい状況の中でも多様な現場で共に生きるためにさまざまな工夫と実践に励んでいる人々やその現場の実状に光を当ててみたいという思いから構想を始めました。
1億2000万人以上が暮らす日本も伝統・文化・歴史と科学発展を資源にしながら、グローバル時代のうねりとともに、大きく変化しつつあります。世界の195か国と地域につながる340万人を超える外国人住民が暮らす多文化社会の日本。
(…中略…)
本書は、第1部の「多文化社会へ移行する時代へのメッセージ」、第2部の「多文化共生・人権・教育への多様なアプローチ」、第3部の「日本の中の多文化共生と人権」、第4部の「世界の中の多文化共生と人権」という4部構成になっています。第1部を除いて、各部間の垣根を設けていないため、皆さんには各自の内容がどこかでつながっていることを確認してほしいと思います。
(…後略…)