目次
はじめに
序章 地域生活課題の顕著化と社区小地域を基盤とした支援
1 都市部住民の地域生活課題の多様化
2 社区を基盤とした生活支援の提供における課題
3 社区小地域を基盤とした支援の必要性
4 先行研究のまとめ
5 用語の説明
6 本書の目的
7 研究の方法
8 研究の意義
第1章 社区地域住民に密着したコミュニティ政策の変遷
1 本章の目的
2 社会統制段階(1949年~2000年)
3 社会統制の段階から社会治理の段階へ(2000年~2012年)
4 社会治理における社区治理の展開(2013年~現在)
5 社区網格化管理の仕組みの推進(2013年~現在)
6 小括
第2章 社区小地域を基盤とした生活支援の仕組みと担い手の機能――網格化管理の仕組みと網格長の機能
1 本章の目的
2 社区網格化管理の仕組みの展開
3 網格長の活動
4 モデル地域における社区網格化管理の仕組みの実施
5 小括
第3章 小地域における支援の担い手の活動実態――中国の長春市B区の網格長のインタビュー調査をもとに
1 本章の目的
2 調査の概要及び研究の方法
3 網格長による住民への支援構造
4 網格長の活動実態
第4章 小地域担い手の活動の実態に影響を与える要因――質問紙調査をもとに
1 本章の目的
2 調査の概要及び研究の方法
3 調査の結果
4 網格長の活動実態に影響を与える要因
第5章 網格長の実践おける管理と支援の捉え方――長春市B区の網格長のインタビュー調査をもとに
1 本章の目的
2 調査の概要及び研究の方法
3 管理の業務に対する捉え方
4 支援の業務に対する捉え方
5 管理と支援の使い分け
6 網格長の実践における活動の特徴
第6章 日中の地域福祉支援体制及び地域福祉担い手の機能の比較
1 本章の目的
2 日本の地域コミュニティ政策の歴史的経緯の概観
3 日中の地域コミュニティ政策の歴史的経緯の比較
4 日中における地域福祉の担い手の機能の比較
5 小括
終章 まとめと展望――中国都市部の社区小地域における住民に密着した支援体制の方向性
1 中国社区地域における管理と支援の理解
2 網格長と住民の関係形成の重要性
3 専門職と非専門職の連携
4 限界と今後の課題
おわりに
引用文献
参考文献
URL
付録
前書きなど
はじめに
本書は、2013年に中国で導入された社区網格化管理の仕組みと、その中核的役割を果たす「網格長」の支援活動を中心に、地域住民に密着した実践の現場を研究するものである。網格長が果たす役割を具体的に明らかにすることで、中国における地域づくりの新たな可能性を探ることを目的としている。
著者は来日後、日本と中国の在宅サービスや地域福祉活動の比較研究に取り組む中で、両国の地域福祉における特徴的な仕組みとアプローチに注目した。
日本では、コミュニティソーシャルワーカー(地域福祉コーディネーター)や民生委員といった役割が、住民間のつながりを強化し、フォーマルな支援とインフォーマルなネットワークの架け橋となる仕組みとして発展している。一方で、中国では近年、政府主導による社区治理の推進が進められてきたものの、住民同士の自治や助け合いの仕組みが十分に機能しているとは言い難い状況であった。
(…中略…)
このような背景のもと、著者は網格長の活動に焦点を当て、中国における地域づくりの方向性を実践の現場から明らかにすることを試みた。本研究では、政策的背景や制度設計を解明するだけでなく、現場で住民と直接向き合う網格長自身の視点から、その役割や課題を多角的に分析する。さらに、日本の地域福祉の発展を参照し、異なる社会構造や文化的背景の中で社区網格化管理の仕組みと網格長の位置づけを考察することを目指している。
(…後略…)