目次
はじめに[冨士谷あつ子]
序論 ジェンダー不平等 日本事情の克服[冨士谷あつ子]
第Ⅰ部:日本の女性国会議員の実情と意識
第1章 日本の全女性国会議員の属性[新川達郎]
第2章 日本の女性国会議員の実情と意識[新川達郎/塚本利幸]
第Ⅱ部:日本の政党別女性議員とジェンダー政策
第1章 自由民主党[新川達郎]
第2章 公明党[香川孝三]
第3章 立憲民主党[新川達郎]
第4章 国民民主党[大束貢生]
第5章 日本維新の会[小縣早知子]
第6章 日本共産党[冨士谷あつ子/西野悠紀子]
第7章 社会民主党[進藤久美子]
第Ⅲ部:フランスの女性国会議員の実情と意識
第1章 フランスの全女性国会議員――その全体像[新川達郎]
第2章 フランスの女性国会議員の実情と意識――インタビュー内容とインタビュアーによる分析[シモン・サルブラン]
第3章 フランスの政治分野における女性の進出――パリテ法の成果と課題[小縣早知子]
第Ⅳ部:世界のなかの日本のジェンダー政策の今後
第1章 EUにおけるジェンダー政策の推進[伊藤公雄]
第2章 スウェーデンのジェンダー平等/SOGI平等政策[大山治彦]
第3章 日本における女性の政治進出と停滞――アメリカの事例から学ぶ[進藤久美子]
第4章 政治分野での日本女性のアジアの中での位置づけ[香川孝三]
第5章 女性進出阻害要因の克服――供託金の負担とジェンダー問題[香川孝三]
第6章 女性の政治分野進出を促す生涯教育[上杉孝實]
第7章 日本文化のジェンダー観再考――「家」から考える[西野悠紀子]
コラム:女性の政治参画――2024年10月国連女性差別撤廃委員会日本報告審議と選択議定書批准への動き[リボアル・堀井・なみの]
おわりに[新川達郎]
資料
1 日本の女性国会議員プロフィール(2023年1月1日現在)
2 日本の女性国会議員インタビュー調査項目
3 フランス国民議会女性議員プロフィール(2022年改選)
4 フランス元老院(上院)女性議員プロフィール(2023年改選)
5 国会議員、直近の国政/統一地方選挙の候補者・当選者に占める女性割合
6 政治分野の女性の参画に関するアンケート
前書きなど
はじめに
(…前略…)
世界各国のジェンダー平等指数は多様であり、いわゆる先進国はギャップが小さいが、近年、急速にギャップを縮めてきたのがフランスである。われわれは、これまでにも交流のあった同国からの学び、『フランスに学ぶ 男女共同の子育てと少子化抑止政策』(冨士谷あつ子・伊藤公雄編著,明石書店,2014年)を世に送ってきた。しかし更にフランスの成功の背後にある法的措置に注目して、『フランスに学ぶジェンダー平等の推進と日本のこれから:パリテ法制定20周年をこえて』(冨士谷あつ子・新川達郎編著,明石書店,2022年)を刊行した。
フランスでは厳しい論議を重ね、2000年に罰則規定を含むパリテ法を制定した。立候補者届け出には男女同数とし、違反する政党にペナルティを課した。またフランスでは、労働政策や家族政策が変更され、余暇の拡大と柔軟な配偶関係が可能となった。フランスの女性議員は、そのような社会の変化を背景として政治に参画しているのである。なおフランスでは、2023年に出生率が低下し、新たな対策が検討されている。出産・育児を支援する条件がかなり整っても、なおそれを女性が回避するという事情を、われわれは国境を越えて真摯に検討することとしたい。
われわれはいま、ジェンダー平等が著しく遅滞している日本の状況を見据え、重点的に克服すべき課題を把握し、そのために政治分野における男女共同参画を目指すこととする。そのために困難な状況のなかで国会及び地方議会において議員として活躍中の女性の実情と意識を把握する必要があるが、本書では、まず国会の女性議員全体の実情と意識について調査を行い、主要政党の女性議員にインタビューし、各党の特質とジェンダー政策について論考を重ねた。
国会議員は、国の政策を立案し決定する。したがって、有権者は国会議員の実情と意識の把握を試みるが、国会議員からの協力は容易なことではない。研究者による試みが有効な回答を得ないことが非常に多い。しかしながら幸い、われわれジェンダー平等推進機構の調査では、国会議員から有効な回答を得ることができ、その成果を本書で公表することができた。
(…中略…)
本書においては、まず、先進諸国中、日本において特筆すべきジェンダー不平等の状況がもたらす問題を指摘し、そのような状況のなかで政治に向き合う女性国会議員全員の実情と意識に関する調査と、各党を代表する女性議員のインタビューを紹介し、インタビュアーが各政党の特色とジェンダー平等政策について考察した。
では、フランスでは、どのような女性が国会議員となっているのか、属性を分析し、詳細な実情に関してインタビューを試みた。また、躍進著しいとはいえ、フランスにも検討すべき課題が残されていることにも触れた。
ところで、フランスと日本の政治分野におけるジェンダー平等について比較考察を試みる場合、フランスは欧州の主要国としてEUとの連携があり、遅延は許されない立場にあると考えられるが、日本を含むアジアでは、そのような連携を欠く。ジェンダー平等問題に向き合うEUと、EU加盟諸国を視座に連携するフランスの動向に注目し、ひるがえって孤立しながらジェンダー平等をめざすアジアの国々にも注目することとした。
(…後略…)