目次
まえがき
序章 本書の概要
1 ソーシャルワークを取り巻く状況
2 筆者の立ち位置
3 演劇/ドラマの手法との出会い
4 目的と構成
5 理論枠組みと構造、及び研究対象と方法
6 倫理的配慮
7 概念規定と研究対象の限定
8 本研究の結論要旨
第1章 ソーシャルワーク教育への批判と応答――コミュニケーション教育批判に特化して
はじめに
1 ソーシャルワークとソーシャルワーク教育批判
2 ソーシャルワーク教育の応答
3 まとめ
第2章 クリティカル・ソーシャルワークの重要性
はじめに
1 ソーシャルワークの直面する困難
2 ソーシャルワーク理論の混乱
3 クリティカル・ソーシャルワーク
4 クリティカル・リフレクションを可能にする教育とは
5 まとめ
第3章 演劇/ドラマの手法と教育
はじめに
1 演劇自体、及びその手法の評価と位置づけ
2 教育一般と演劇/ドラマの手法の関係
3 コミュニケーション教育とその誤謬
4 ソーシャルワーク教育における演劇的手法
5 演劇/ドラマの手法における「ドラマケーション」
6 本書における焦点
第4章 自己を語る研究手法
はじめに
1 方法論とは(認識論+リサーチ・デザイン+手法)
2 研究者としての自己の可視化
3 今後に向けて
第5章 演劇/ドラマの手法によるワークショップ実践
はじめに
1 2015年を踏まえた2016年の実践結果
2 2015年度/2016年度両年の事後リポート再分析
第6章 教員自身の変化
はじめに
1 演劇との再会、及びドラマの手法との出会い
2 ドラマの手法の意味するもの
3 「学生の気づき」を通して分析する「教員の変化」
4 まとめ
5 付言
第7章 解放と脱構築に向けて
はじめに
1 解放と脱構築
2 「なぜ」「何」への問い
3 意味生成過程としてのコミュニケーション
4 授業に適用しようとしたときの課題
終章 結論と課題
はじめに
1 本書の結論
2 振り返りと限界及び今後
補遺 差別意識に働きかける社会福祉教育実践――文学テクストに分け入る他者理解教育の試みを通して
文献
あとがき
索引
前書きなど
序章 本書の概要
(…前略…)
本書は、ソーシャルワーク教育における、特に導入段階のコミュニケーション教育に的を絞った理論と方法に関する研究である。つまり全体としてのソーシャルワーク教育を見据えたミクロソーシャルワーク教育の中のコミュニケーション教育研究である。大きな目的は、前述した一連のソーシャルワーク批判を踏まえて、それらに応える新たな教育実践を進めるにあたり、演劇/ドラマの手法が果たす役割とは何かを明らかにすること、さらに従前より取り組まれてきた、認知を重視した教育との協働関係のあり方を探ること、その教育がさらに充実するための課題と今後について検討することである。ここでいう新たな教育実践とは、各種のソーシャルワーク理論の中から、ポストモダンの思想に下支えされたクリティカル・ソーシャルワークを具現化する教育を取り上げて論じる。
本研究の発端は、前述のような来歴を持つ筆者が日々の教育実践を続ける中で出会った演劇/ドラマの手法に衝撃を受けたというところにその出発点がある。ただし、それは本章の冒頭で述べた通り、筆者のアイデンティティを構成するところのソーシャルワークの全体像、その困難や批判及びそれらを踏まえて取り組んできた教育実践がもともとあったうえでこそ起きたことである。よって、論述の手順としては、ソーシャルワーク一般、及びその教育が直面する困難を整理するところから始めたい。そして、これら困難を乗り越える可能性のある理論としてのクリティカル・ソーシャルワークを取り上げ、その来歴と特長を探ることによって、この理論を注視することの必然を説明する。
(…中略…)
総じて本書で筆者が行うのは、「演劇/ドラマの手法にこのような効果がある」という実証ではなく、「演劇/ドラマの手法が演習教育に果たす役割とは何か」ひいては「ソーシャルワーク教育のあり方に投げかけるものとは何か」について、事例としての自身のアクション・リサーチ実践を通してエスノグラフィックに記述することである。
(…後略…)