目次
訳者まえがき
謝辞
第Ⅰ部 導入
第1章 はじめに
この本の使い方
次の段階
第2章 職業人としての自閉症者
職場での自閉症
なぜあなたの職場で自閉症者を雇用すべきか
なぜあなたは自閉症について学ぶべきか
いじめと自閉症社員
第3章 自閉症ということの開示と自閉症社員のタイプ
なぜ自閉症の開示が会社にとってメリットがあるか
自閉症社員の三つのタイプ
開示を促すにはどうすればよいのでしょうか?
第Ⅱ部 職場における人とのかかわり
第4章 職場で生じる人とのかかわりとは
職場における「隠れたカリキュラム」
心の理論
文脈の役割
職場での典型的な社会的かかわりの課題
うまく人とかかわっていくための障害開示と合理的配慮
第5章 会話
事例5.1 彼は一体いつ話すのをやめるんだろうか?
事例5.2 彼はなんてことを言うんだ!
事例5.3 今じゃないだろう。
会話:合理的配慮のまとめ
第6章 人とのかかわり
事例6.1 彼は全く気に留めないのだろうか?
事例6.2 彼は自分がすべてを知っていると思っている。
事例6.3 彼は理解していない。
事例6.4 彼はなじもうとしない!
人とのかかわり:合理的配慮のまとめ
第Ⅲ部 仕事の遂行能力
第7章 仕事の遂行能力の紹介
実行機能
仕事の遂行能力、「全体像」、そして心の理論
仕事の遂行能力における強み
典型的な仕事の遂行能力における問題
仕事の遂行能力における問題に関する自閉症開示と合理的配慮
第8章 組織化
事例8.1 見通しを立てて仕事をすることがなんてできないんだ!
事例8.2 要点だけを教えてくれ!
組織化:合理的配慮のまとめ
第9章 時間管理
事例9.1 彼は時間通りに終わらせたことがない!
事例9.2 彼には複数の仕事をしてもらいたいのだが。
時間管理:合理的配慮のまとめ
第10章 仕事の質
事例10.1 何回同じことを言えばいいんだ?
事例10.2 なんて態度をとるんだ!
仕事の質:合理的配慮のまとめ
第11章 感情抑制
事例11.1 何もかもが彼の悩みの種になっている!
事例11.2 この仕事は、彼には荷が重いのだろうか?
感情抑制:合理的配慮のまとめ
第Ⅳ部 職場での感覚の問題
第12章 職場における感覚の問題の紹介
私たちは世界をどのように認識しているのでしょうか?
感覚の問題と自閉症
職場における代表的な感覚の問題
感覚の問題の開示と合理的配慮
第13章 感覚過敏
事例13.1 彼の問題は何だろう?
事例13.2 彼は何をしてるんだろう?
感覚過敏:合理的配慮のまとめ
おわりに――自閉スペクトラム症候群
注
参照文献
著者・訳者紹介
前書きなど
第1章 はじめに
(…前略…)
自閉症であるということと仕事で成功を収めるということは相互に排他的ではないということを雇用主は理解し始めています。この未開発の人材プールにかかわろうとする雇用主にとって、大学を卒業した自閉症者の就労への道が一方通行ではないことを理解するのが重要です。雇用主は、彼らの企業文化に「マッチする」ような求職者を探す一方で、自閉症者が「マッチする」方法を彼らにガイドできるような環境を提供することも必要なのです。「インテグレート社(旧ASTEP:The Asperger Syndrome Training & Employment Partnership Inc.)」は、自閉症社員のためのこの力学を変えるべく雇用主と協働するために2010年に設立されました。私たちはこのことを、自閉症者がうまく仕事が探せ、うまく会社に雇用されるようにするサポートにおける論理的な次の段階と考えています。
この本は自閉症である企業の社員が職場で日々経験する困難な状況を通して、自閉症に対する理解や合理的配慮を行うための具体的方法を、雇用主、一緒に働く企業の同僚上司、あるいは人事担当者に対して提供することを意図しています。この本は、主としてある企業の社員が自閉症であるとき、彼らが職場で遭遇する可能性のある困難に焦点を当てていますが、彼らは忠実であり、まじめであり、一所懸命働き、集中力があり、知的であり、正確であり、論理的であり、生産的でもあります。自閉症であることによる障害特性はありますが、幅広い仕事でその特性を積極的に活用する方法を見出せるでしょう。たとえば、非常に正直なリスクマネージャー、正確さに執着している金融アナリスト、高い集中力を持つコンピュータープログラマー、過去の慣習にこだわらないグラフィックデザイナーなどを望まない雇用主はいないでしょう。そして何よりも、自分の仕事に価値があることをわかっている環境で、有意義で力が発揮できる就労ができる機会に感謝している社員を望まない雇用主はいないでしょう。
(…後略…)