目次
著者について
序文[アマンダ・R・スミス]
はじめに[ロビン・K・ディーン、ロバート・Q・ポラード,Jr.]
訳者まえがき[高木真知子]
第1章 通訳におけるデマンド
第2章 通訳におけるコントロール
第3章 DC-Sルーブリック
第4章 EIPIのカテゴリ
第5章 デマンドとコントロールの相互作用
第6章 目的論と実践における価値観
第7章 デマンドのコンステレーション
第8章 コントロールの結果
第9章 対話型作業分析
第10章 スーパービジョンによる省察的実践
訳者あとがき[中野聡子]
前書きなど
はじめに
(…前略…)
本書では、DC-Sについて詳しく説明し、DC-Sの仕組みを用いて、通訳業務について学び、議論し、改善する方法を紹介します。本書の前半の章では、DC-Sの理論構成を紹介します。DC-Sの理論は、4つのデマンド・カテゴリ、3つのコントロール機会、そして通訳実践におけるデマンドとコントロールのダイナミックな相互作用から構成されています。この相互作用を通して、業務において対応を求められるデマンドと通訳者のコントロールのあいだに「対話」が生まれ、対話型作業分析の舞台ができあがります。本書の後半の章で取りあげる対話型作業分析は、DC-Sの意思決定モデルです。DC-Sの理論的枠組みと対話型作業分析を活用して、架空または実際の通訳現場の事例に対する予測と分析に応用することができるようになるのです。
本書では、あえて教育現場の通訳事例を多く取りあげています。通訳教育プログラムの多くは、教育現場で働く通訳者を養成することに重点を置いているため、通訳学習者や経験年数の少ない通訳者にとってイメージしやすく学びやすいと考えています。さらに、誰もが教育を受けてきた経験があるので、教育現場における個々の人々の状況、力学的関係性、現場の環境を容易に理解できるでしょう。コミュニティ通訳の中でも、医療、精神衛生、司法などの現場では、一般の通訳学習者には理解できないような、とりわけ複雑なデマンドが存在することが多く、さらなる説明が必要になることもあります。本書の目的は、DC-Sの基本的な枠組みを学び、実践に幅広く活用できるようにすることにあるため、多くの説明を必要とする専門性の高い通訳現場の事例は、この目的に合わないと考えました。
(…後略…)