目次
まえがき[埋橋孝文]
序章 福祉の政策評価をどう進めるべきか[埋橋孝文]
1.何が問題か/福祉の政策分析を前に進める必要性
2.社会政策および関連分野研究の量的趨勢
3.社会政策論の〈社会〉理解をめぐって
4.社会政策論における分析フレームワークを振り返る
5.「政策評価」の視点から社会政策を見直す
6.国際比較研究と政策研究
7.新機軸の福祉政策論を拓く
第1部 高齢者福祉の政策評価
【1】介護保険制度の政策評価――日本と韓国[解題:郭芳]
第1章 日本の介護保険制度に関する政策評価――法改正をきっかけにして[郭芳]
1.何が問題か/介護保険の法改正はなぜおこなわれているか
2.介護保険法改正の根拠を探る
3.介護保険に関する政策評価の現状/政策・施策・事務事業の三つの区分から
4.介護保険に関する政策評価の役割/ロジックモデルによる検討
5.これから深めていくべきテーマ/政策評価を踏まえた法改正を目指して
第2章 韓国における老人長期療養保険制度の政策評価――プログラムセオリー評価に着目して[崔銀珠]
1.何が問題か/老人長期療養保険制度の政策評価の重要性
2.分析の枠組み
3.分析の結果
4.老人長期療養保険制度改善に向けての今後の課題
5.これから深めていくべきテーマ/「政策評価」の目的の明確化
コラム1 介護福祉施設の評価指標――日本、韓国、ドイツ[李玲珠・任貞美]
【2】高齢者福祉サービスの政策評価(解題:李宣英)
第3章 介護人材確保をめぐる政策の課題[任セア]
1.何が問題か/介護人材確保をめぐる政策の課題
2.どんな政策がおこなわれているのか/3つのアプローチ
3.解決すべき課題は何なのか/良質な介護人材の確保
4.これから深めていくべきテーマ/エビデンスに基づいた効果的な介護人材育成プログラム
第4章 介護サービスの質の評価――プロセス評価・アウトカム評価からみたケアのあり方と課題[鄭煕聖]
1.何が問題か/介護サービスの質をどのように評価するか
2.研究のモデル
3.介護サービスにおけるプロセス評価とアウトカム評価の検証
4.介護サービスの質におけるプロセス評価とアウトカム評価、今後の課題について
5.これから深めていくべきテーマ/利用者評価のための重要な視点
第5章 介護サービスの質の評価をめぐる近年の議論と課題――アウトカム評価を通じた科学的介護の推進[李宣英]
1.何が問題か/根拠に基づく介護サービスの提供とアウトカム評価の不十分さ
2.介護サービスの質を確保するための様々な取り組み
3.アウトカム評価を導入するに至るまでの議論の流れ
4.科学的介護の推進
5.これから深めていくべきテーマ/サービス評価と質の向上の連動に向けた課題
コラム2 日本の認知症政策とその評価をめぐって[金圓景]
コラム3 エイジズムを解消するための視点と方法について[朴蕙彬]
第2部 子ども福祉の政策評価
子ども福祉の政策評価[解題:矢野裕俊]
第6章 少子化社会対策をひもとく――目的・手段・成果の視点から[石田慎二・田中弘美・遠藤希和子]
1.何が問題か/総花的な少子化社会対策を評価する
2.第4次少子化社会対策大綱に至るまでの経緯
3.第4次少子化社会対策大綱の検証
4.少子化社会対策を目的・手段・成果の視点から問い直す
5.これから深めていくべきテーマ/体系的な政策評価に向けて
第7章 子どもの貧困を捉える指標の再検討[矢野裕俊]
1.何が問題か/子どもの貧困とウェルビーイングの関係をどのように捉えるか
2.子どもの貧困のこれまでの捉え方
3.子どものウェルビーイングへの注目
4.物質的剥奪指標
5.物質的剥奪と機会の剥奪
6.当事者としての子どもの視点の重要性
7.これから深めていくべきテーマ/全ての子どもを視野に入れて貧困問題を考える
第8章 子どもの貧困対策としての教育政策の実施過程における課題[柏木智子]
1.何が問題か
2.教育政策と公正
3.子どもの貧困対策としての教育政策
4.子どもの貧困対策としての教育実践
5.これから深めていくべきテーマ/教育政策実施過程の4つの課題
第9章 子どもの貧困対策の指標を考える[埋橋孝文]
1.何が問題か/子どもの貧困対策を評価する
2.新・旧の子どもの貧困対策法比較
3.大綱に盛られている指標
4.貧困対策指標の分類と分析
5.子どもの貧困対策に係る指標の問題点
6.これから深めていくテーマ/数値目標の設定をどう考えるべきか
コラム4 子どもの「教育支援」のアウトプット指標[楊慧敏]
参考文献
索引
第1巻 あとがき[埋橋孝文]
執筆者紹介
編著者紹介
前書きなど
まえがき
今日、政策評価法の成立からおよそ20年が経とうとしているが、福祉政策研究の分野では、扱っている論点が政策過程におけるインプット、アウトプット、アウトカムなどのどの段階に関わるものかが不明なままに各段階の統計データが入り混じって説明されることが多く、政策と成果にかかわる因果関係が解明、明示されずに、あるいは、明示されていてもその根拠が示されずに叙述されることがある。
本書は、こうした現状に対して公共政策学の「政策評価」論を援用して福祉政策の政策評価に挑戦するものである。ただし、福祉政策のようなマクロの政策評価の場合、アウトカムに影響する複雑な外部(外生)要因の効果を政策の純効果と分離することが難しいという特有の事情があり、これまで依拠できる確たる方法論が存在しない。
本書はそうした研究の状況下で、以下の3点に特に留意し、いくつかの隘路のブレークスルーを試みたものである。
1)政策分析、政策評価を「プログラム評価」や「福祉の生産モデル」のどのステージでおこなおうとしているかを明示して実施する。
2)アウトカムだけが政策評価の対象ではなく、インプットやプロセスも政策評価の重要な対象であり、それらを含むことで「ブラックボックスのような評価」(C.H.ワイス)を避ける。
3)マクロの政策評価の場合、ロジックモデルのif~ then~、つまり、「もし~ならば~になる」という仮説を検証しようとしても、因果関係を実証的に厳密に確定できないことが起こりうるが、論理的にまた周辺情報を加味して状況証拠を積み重ね、因果関係の推定に努力する。
編者は社会保障や福祉国家の国際比較研究にはじまり、生活困窮者支援政策と子どもの貧困対策の検討を経て、現在、福祉政策研究に従事しているが、30年近く前に次のように述べたことがある。
「東大社研『福祉国家』(1984・5年)をはじめとするわが国の研究、とりわけ複数の執筆者からなる共同研究でもっとも欠落しているのは、まさしく、視点や研究方法の統一、共通のデータの利用と分析フレームワークの適用、さらに、個々の国の分析結果を集めて総括し、一般化していく点であった」(1)。
共同研究の成果として刊行される本書(第1巻、第2巻)は、期せずして、福祉政策研究の分野において、上記下線部分を強く意識した内容のものとなった。30年の眠りから覚めたということであろうか。
なお、本書でいう「福祉政策」について説明しておけば、年金や医療、介護、生活保護などの社会保障や高齢者、障害者、児童、低所得者などの福祉サービスの全体を福祉政策の対象と考えている。広く一般国民に対する現金給付やサービス給付などを含み、福祉政策の範囲をかなり広く捉えているところに特徴がある。
ただし、その全体を扱うことは難しく、本書第1巻では少子高齢化のなかでの高齢者と子どもを対象とした福祉政策を扱う。少子高齢化が問題とされて久しいが、果たしてこれまでの政策展開は十分な成果を生んできたのであろうか。また、「子どもの貧困」はそれに比べれば比較的最近のことであるが、今現在、それに立ち向かう体制は十分に構築されているのであろうか、などの問題が論じられる。第2巻では、格差と不利/困難のなかでの障害者と生活困窮者をめぐる福祉政策を扱い、適切な政策評価指標について問題提起する。また、韓国と中国における福祉政策、とりわけ所得再分配政策の分野での最前線の動き(韓国:ベーシックインカム、中国:第2次所得分配と第3次所得分配)とその意味合いについて検討する。
(…後略…)