目次
まえがき
第1部 女性移住者をめぐる状況
第1章 女性移住者をどう捉えるか
1 増加する在留外国人と表面化した福祉課題
2 最近の女性移住者の特性
3 研究の文脈
4 研究の目的と意義
5 用語の定義
6 本書の構成
小括
第2章 女性移住者に関する先行研究
1 女性移住者を取り巻く社会的状況
1)社会的背景
2)国際動向
2 女性移住者の特徴
1)脆弱性と社会的不利
2)コーピングとレジリエンス
小括
第3章 多文化ソーシャルワークの諸理論とアプローチ
1 多文化背景をもつ人々へのソーシャルワーク
2 多文化ソーシャルワークの関連理論
1)エスニックセンシティブプラクティス
2)ストレングスパースペクティブ
3)エンパワメントアプローチ
4)ライツベースドアプローチ
5)トランスナショナルソーシャルワーク
3 ケイパビリティ・アプローチ
1)センの理論
2)ケイパビリティとソーシャルワーク
小括
第2部 女性移住者のライフストーリー
第4章 研究の方法
1 リサーチクエスチョン
2 データ分析の方法
3 データの収集
1)データ収集時期
2)データ収集の方法
3)データの選択基準
4 質問項目
5 倫理的配慮
小括
第5章 調査協力者の概要
1 調査協力者について
2 調査協力者の個別状況の概要
小括
第6章 ライフストーリーにみる女性移住者の生活困難
1 文化的要因
1)母国社会の文化
2)日本社会の文化
2 移住者特性に関わる要因
1)サポートネットワークとの接点の欠如
2)社会的支援の不足
3)在留資格
3 ジェンダーに基づく要因
小括
第7章 女性移住者のコーピング戦略
1 文化的アイデンティティ
1)母国に根ざしたアイデンティティ
2)日本社会に根ざしたアイデンティティ
2 サポートネットワーク
1)母国に根ざしたネットワーク
2)日本社会で培われたネットワーク
3 生活手法
1)母国社会に根ざした生活手法
2)日本社会の生活手法
小括
第3部 女性移住者への多文化ソーシャルワーク
第8章 考察
1 生活困難の背景にある選択・実践機会の抑圧
1)文化的要因
2)移住者特性に関わる要因
3)ジェンダーに基づく要因
2 二つの社会に根ざした多様で豊かなコーピング戦略
1)文化的アイデンティティ
2)サポートネットワーク
3)生活手法
3 求められる多文化ソーシャルワーク
小括
第9章 結論
1 新たな仮説の提示
2 ソーシャルワークへの示唆
3 今後の課題と展望
1)研究
2)実践
3)教育
4)政策
4 研究の意義および限界
小括
文献
付録
付録1.1 調査協力依頼状(調査協力者紹介機関)
付録1.2 調査協力依頼状(調査協力者)
付録2.1 調査協力承諾書(調査協力者紹介機関)
付録2.2 調査協力承諾書(調査協力者)
付録3.1 調査における記録媒体使用の承諾書(調査協力者紹介機関)
付録3.2 調査における記録媒体使用の承諾書(調査協力者)
付録4 質問項目
付録5 本書に関連する論文・著書一覧
あとがき
謝辞
前書きなど
第1章 女性移住者をどう捉えるか
(…前略…)
6 本書の構成
本書は、3部構成となっている。各部の構成は以下のとおりである。
第1部では、女性移住者をめぐる状況を整理する。第1章では、女性移住者の捉え方、女性移住者の社会的不利や生活困難の顕在化、そして本研究の文脈、目的および研究の意義を示す。第2章では、先行研究のレビューを提示する。女性移住者をめぐる国際動向、女性移住者を取り巻く社会的状況、および移住者がおかれている窮状について整理するとともに、女性移住者に対する支援の必要性に関する研究を概観する。また、女性移住者の特徴、特に脆弱性と社会的不利の実情と問題提起に関する研究のほか、女性たちのレジリエンシーとコーピング戦略について検討する。第3章では、女性移住者に対する支援として、多文化ソーシャルワークに関わる諸理論、そしてケイパビリティ・アプローチについて整理する。
第2部は、女性移住者へのインタビュー調査の概要と結果を示す。第4章で、研究の方法、用語の定義、リサーチクエスチョン、予測される結果、およびデータ分析の方法として採用したライフストーリー法、データ収集の方法やデータの選択基準および収集の手順、質問項目、そして倫理的配慮について述べる。第5章では、調査協力者の概要を紹介する。第6章では、女性移住者の生活困難に関する語りのうち、困難の実情と困難を抱えるに至らせた状況や要因に関するデータを、そして第7章では女性移住者のコーピング戦略に焦点をあててデータを提示する。生活困難の具体的なエピソードから、女性たちが社会資源の利用機会を欠いた状況に直面し、二国の文化規範が彼女らの行動を抑制させる状況を描き出し、かつ彼女らが実践していたコーピング戦略として二国の資源を臨機応変に活用しながら様々な困難に対処していた状況などについて、当事者の語りを基に読み解いていく。
第3部では、女性移住者が経験した生活困難および実践していたコーピング戦略が彼女らのウェル・ビーイングの保障において有する意味、およびそれらを踏まえたうえで必要と思われる多文化ソーシャルワークのあり方について、第8章で考察を行い、第9章では、結論として新たな仮説を提示する。ソーシャルワークへの示唆、および女性移住者に対するソーシャルワーク研究、実践、教育、および政策に関する今後の課題を提示する。最後に、本研究の意義および課題を示す。
(…後略…)