目次
はしがき
序 ここからはたどり着けない
Ⅰ レイシズムについて白人と話すのはなぜ困難か
Ⅱ レイシズムと白人至上主義
Ⅲ 公民権運動後のレイシズム
Ⅳ 人種は白人の生活をどう形作ったか
Ⅴ 善/悪の二項対立
Ⅵ 反黒人性
Ⅶ 白人にとって何が人種をめぐる引き金となるか
Ⅷ 白人の心の脆さという結論
Ⅸ 白人の心の脆さによる行動
Ⅹ 白人の心の脆さと関与のルール
XI 白人女性の涙
XII ここからどうすればいいのか
寄稿 カイザー・ソゼ、ビヨンセ、証人保護プログラム[マイケル・E・ダイソン]
監訳者解説[貴堂嘉之]
註
参考文献
前書きなど
監訳者解説[貴堂嘉之]
本書は、米国の社会学者ロビン・ディアンジェロが二〇一八年六月に刊行した著作White Fragility: Why It’s So Hard for White People to Talk About Racismの全訳である。本書で、著者は白人の読者を主たる対象に、白人はなぜ人種問題に向き合えないのかと問い、白人による黒人差別の構造を解明している。
著者のディアンジェロは現在六四歳の白人の女性研究者。白人性研究の専門家としてウェストフィールド州立大学やワシントン大学で多文化教育に尽力し、現在は企業や地域コミュニティ、政治家向けの反レイシズムや多様性をテーマとしたトレーニング講師として活躍している。
二〇二〇年五月、ミネソタ州ミネアポリスでジョージ・フロイドさんが白人警官により殺害された事件が引き金となって、米国ではブラック・ライブズ・マター(BLM、黒人の命は大切)運動に再び火がついた。黒人だけでなくアジア系、ヒスパニック、そして白人の若者らが加わり、BLM運動は、地域や人種、世代を超えた大規模な反人種差別運動へと発展した。この運動の興隆と同時期に、レイシズムへの処方箋を示す指南役として一躍、時の人となったのが著者のディアンジェロであった。全米で怒りの抗議活動が展開される中、本書は大ベストセラーとなり、著者はメディアで引っ張りだこになった。また、彼女のもとには、多くの企業から講演の依頼が殺到した。マイクロソフトやグーグル、アマゾン、ナイキ、アンダーアーマー、ゴールドマン・サックス、フェイスブック、CVS、アメリカン・エキスプレス、ネットフリックスなど名だたる大企業が、BLM運動への連帯を表明し、人種差別を糾弾する声明を発表した。
(…後略…)