目次
まえがき
序章 本書へのオリエンテーション[藤原孝章]
1.経緯とねらい
2.本書の構成と特色
3.問い直すということ――新型コロナ(COVID-19)を超えて
おわりに
第1部 国際理解教育の原点を問い直す
第1章 国際とグローバルはどうちがうか[藤原孝章]
1.なぜこの課題を問い直すのか
2.学会創設時の研究と関心
3.国民国家と国際化――国際とグローバル
4.世界情勢と日本の立場――日本の自己認識
5.日本の教育の国際化
6.国際理解教育におけるナショナルな語りとグローバルな語り
7.問いへの応答と残された課題
第2章 ユネスコの教育勧告をどう受けとめるか[嶺井明子・菊地かおり]
1.なぜこの課題を問い直すのか
2.ユネスコという機関をどう受けとめるか
3.1974年勧告制定の経緯・争点
4.1974年勧告に対する日本政府の対応
5.1974年勧告の改訂論議
6.日本のユネスコ政策の転換――ESDを軸とした政策の推進
7.ユネスコによる1974年勧告とSDGs4.7との接続の試み
8.問いへの応答と残された課題
第3章 国際理解教育はどのように実践・研究されてきたか[津山直樹・成田喜一郎]
1.なぜ、国際理解教育の研究の歩みを問い直すのか――実践と理論との乖離
2.この研究の歩みをどのように問い直すのか――分析の視点と方法
3.国際理解教育の研究史をいかに俯瞰するか――新たな方法の選択
4.国際理解教育の実践研究の変遷――実践記録・実践報告・実践研究を中心に
5.これからの国際理解教育の研究史生成の可能性
6.問いへの応答と残された課題
第4章 国際理解教育は理解ありきでよいか――文化理解から問題解決へ[大山正博]
1.なぜこの課題を問い直すのか
2.静的・固定的な文化理解の弊害
3.問題解決の前提としての動的・変容的な文化理解
4.共創型対話と問題解決
5.共創型対話による問題解決の展開――「国家」が相対化されるコミュニケーション
6.国際理解教育における問題解決型学習の展望
7.問いへの応答と残された課題
コラム1 民際交流をとおした相互理解の拡大――韓国から見た日本国際理解教育学会の30年[姜淳媛(訳:金仙美)]
第2部 国際理解教育の授業実践、学びを問い直す
第5章 国際理解教育は学習指導要領にどう応答してきたのか[石森広美・松尾知明]
1.なぜこの課題を問い直すのか
2.学習指導要領の変遷と国際理解教育の位置づけ
3.学習指導要領(1998・1999年改訂)における「生きる力」と「総合的な学習の時間」の創設
4.学習指導要領(1998・1999年改訂)後の国際理解教育の実践の変化
5.新学習指導要領(2018・2019年改訂)と資質能力の育成
6.問いへの応答と残された課題
第6章 国際理解教育のカリキュラムマネジメントはどうあるべきか[吉村雅仁]
1.なぜこの課題を問い直すのか
2.カリキュラムマネジメントとは
3.学校での国際理解教育におけるカリキュラムの捉え方
4.国際理解教育におけるカリキュラムマネジメントのあり方
5.国際理解教育実践におけるカリキュラムマネジメントの事例
6.問いへの応答と残された課題
第7章 教師の経験、問題意識、子どもの状況から国際理解教育の授業をどうデザインするか[中山京子]
1.なぜこの課題を問い直すのか
2.授業デザインのあり方
3.教師/指導者の経験や問題意識からデザインする授業
4.児童生徒を取り巻く状況からデザインする授業
5.児童生徒の認識、願いや求めからデザインする授業
6.問いへの応答と残された課題
第8章 地域、博物館、NPOなどと連携した国際理解教育の授業をどうデザインするか[原瑞穂]
1.なぜこの課題を問い直すのか
2.家庭との連携による授業
3.大学との連携による授業
4.非営利機関および海外教育機関との連携による授業
5.博物館と学校と学会との連携による授業
6.問いへの応答と残された課題
第9章 スタディツアー・フィールドワークから国際理解教育の授業をどうデザインするか[風巻浩]
1.なぜこの課題を問い直すのか
2.スタディツアー史①:黎明期(1950~60年代)のエキュメニカル・ワークキャンプ
3.スタディツアー史②:高校生も参加する一般化の時代(1970~1990年代)
4.スタディツアー史③:プログラム開発、相互性、変容への関心(2000年代~)
5.問いへの応答と残された課題
第10章 地域における国際理解教育の実践をどうデザインするか[山西優二・南雲勇多]
1.なぜこの課題を問い直すのか
2.これまでの地域における国際理解教育の実践・研究
3.地域における多様な実践のデザインに向けての要点
4.問いへの応答と残された課題
コラム2 中国からみる日本の国際理解教育[姜英敏]
第3部 国際理解教育の現代的課題に応える
第11章 多文化教育としての国際理解教育の授業はどうあるべきか[森茂岳雄・太田満]
1.なぜこの課題を問い直すか
2.多文化教育としての国際理解教育に関する学会の研究成果
3.分析枠組
4.多文化教育としての国際理解教育実践
5.国際理解教育実践としての移民学習
6.問いへの応答と残された課題
第12章 シティズンシップ教育としての国際理解教育の授業はどうあるべきか[橋崎頼子・川口広美]
1.なぜこの課題を問い直すのか
2.シティズンシップ教育に関する理念研究の特徴
3.シティズンシップ教育に関する実践研究の特徴
4.問いへの応答と残された課題
第13章 SDGs時代の国際理解教育の授業はどうあるべきか[松倉紗野香]
1.なぜこの課題を問い直すのか
2.SDGs時代とは
3.国際理解教育の授業の変遷
4.SDGs時代における「教育」とは
5.「生徒の意識変容」に着目した授業実践
6.問いへの応答と残された課題
第14章 ユネスコの提起する現代的課題に国際理解教育はどう応えるか[曽我幸代・永田佳之]
1.なぜこの課題を問い直すのか
2.近年のユネスコ会議から
3.総合的な学習の時間の実際
4.ESDの意義
5.変容をもたらす教育とホールスクール・アプローチ
6.問いへの応答と残された課題
第15章 日韓中共同プロジェクトが提起する課題に国際理解教育はどう応えるか[釜田聡]
1.なぜこの課題を問い直すのか
2.本学会の創設期における韓国・中国への眼差し
3.日本国際理解教育学会と韓国国際理解教育学会との交流
4.日本国際理解教育学会と北京師範大学比較教育センターとの交流
5.三カ国科研
6.「異己」プロジェクト
7.問いへの応答と残された課題
付録1 紀要『国際理解教育』掲載論文一覧
付録2 年表:日本国際理解教育学会の研究活動の歩み
あとがき
執筆者一覧
索引
前書きなど
序章 本書へのオリエンテーション[藤原孝章]
(…前略…)
2.本書の構成と特色
本書の特色は、各章が、問いの形を取って課題に向き合っていることである。したがって各章の執筆においても、まず、「なぜこの課題を問い直すのか」の問いを立て、次に、各章のテーマと課題に向き合い、論述した上で、最後に、「問いへの応答と残された課題」を取り出している。これは各章で共通している。また、章によっては課題について深く掘り下げた「深掘り型」(第1章、第10章など)と課題を俯瞰的に考察した「マップ型」(第3章、第7章、第11章など)の二つの取り上げ方をしている。
目次からわかるように本書は3部からなっている。
第1部は「国際理解教育の原点を問い直す」である。文字通り、もう一度原点に立ち帰って、国際とグローバルはどう違うか(第1章)、ユネスコの教育勧告をどう受けとめるか(第2章)、国際理解教育はどのように実践・研究されてきたか(第3章)、国際理解教育は理解ありきでよいか(第4章)と問うている。本学会ではこの30年間、「国際理解」というけれど、「国際」の内実はどう変化したのか、国際でよいのか、「理解」は可能なのか、理解ではなく対話や共生、問題解決があげられるのはなぜか、などへの答えを模索してきたといってよい。また、本学会はユネスコの理念や勧告と密接な関係にあるが、この30年どう対応してきたのか、そもそも、国際理解教育の研究や実践の実際はどうであったのかを、第1部では明らかにしようとしている。
第2部は「国際理解教育の授業実践、学びを問い直す」である。授業実践や学びにかかわる根源的な問いを立て、国際理解教育は学習指導要領にどう応答してきたのか(第5章)、国際理解教育のカリキュラムマネジメントはどうあるべきか(第6章)、教師の経験、問題意識、子どもの状況から国際理解教育の授業をどうデザインするか(第7章)、地域、博物館、NPO などと連携した国際理解教育の授業をどうデザインするか(第8章)、スタディツアー・フィールドワークから国際理解教育の授業をどうデザインするか(第9章)、地域における国際理解教育の実践をどうデザインするか(第10章)、と問い、国際理解教育のカリキュラムや授業デザインのあり方を追究している。国際理解教育は、教育学一般の研究だけではない。むしろ授業実践や教材開発研究、カリキュラムづくり、学校を含む地域やフィールドをふまえた教育実践に関する研究も重視している。その理由は、学会を構成する会員には教員などの実践者も多く、かつ、教育実践による学習者の学びの変容に注目してきたからである。第2部ではこのような実践的課題をふまえたものとなっている。
第3部は「国際理解教育の現代的課題に応える」である。ここでは、国際理解教育の現代的課題への挑戦として、多文化教育としての国際理解教育の授業はどうあるべきか(第11章)、シティズンシップ教育としての国際理解教育の授業はどうあるべきか(第12章)、SDGs時代の国際理解教育の授業はどうあるべきか(第13章)、ユネスコの提起する現代的課題に国際理解教育はどう応えるか(第14章)、日韓中共同プロジェクトが提起する課題に国際理解教育はどう応えるか(第15章)という、5つの先端的課題に取り組み、今後の可能性を探っている。第3部で取り上げた多文化、シティズンシップ、SDGs、ユネスコのESD、日韓中共同研究は、本学会でこれまで議論され、また今後、議論されていくべき課題である。他にも、平和や難民、開発や国際協力、トランスサイエンスなど重要な現代的テーマもあると想定されるが、第3部は、それらの諸課題へのアプローチの事例として読んでもらえるとありがたい。
また、本書では、日本国際理解教育学会として、長きにわたって協力・友好関係にある韓国の国際理解教育学会および中国の研究者から、韓国および中国からみた日本の国際理解教育というテーマでコラムを寄せてもらっている。
(…後略…)