目次
はじめに
カナダ全図
カナダの基礎データ・カナダの国旗・カナダの紋章
Ⅰ 国土・環境
第1章 カナダの国土と自然環境――人間の活動を規定する自然的基盤
第2章 大西洋カナダ――海とともに生きる個性豊かな縁辺地域
第3章 中央カナダ――カナダの発展を支える中核地域
第4章 西部カナダ――急速な発展を遂げる資源豊かな地域
第5章 カナダの極北地域――極寒のツンドラ地帯
第6章 気候変動とカナダ――地球温暖化の影響
【コラム1】変化する加米国境
Ⅱ 多様性のなかの統一
第7章 統計にみる民族的・言語的多様性――大都市圏ではヴィジブル・マイノリティが多数派に!?
第8章 移民政策と社会統合――積極的移民受入れ、これがカナダの生きる道
第9章 多文化主義の今――成功は「カナダ的例外」か
第10章 宗教的多様性とケベック――ムスリム女性のヴェールをめぐる論争
第11章 カナダ人のアイデンティティ――最近の調査報告から
第12章 オー・カナダ――2つの言語をもつ国歌
Ⅲ “最初のカナダ人”――先住民
第13章 様々なカナダ先住民――新たな先住民社会の生成
第14章 カナダ先住民のアート――先住民らしさの表象
第15章 カナダの都市先住民――新たな先住民ネットワークと文化の生成
第16章 先住民教育の現在――教育の自治を求めて
第17章 伝統と近代の狭間で――先住民と近代産業の関係の歴史と将来
第18章 カナダ社会で活躍する先住民――たいまつを高らかに掲げて
第19章 カナダの自然と先住民――大地、水、そして動物とともにある私たち
Ⅳ 日系カナダ人と日本文化のひろがり
第20章 BC州、オンタリオ州、ケベック州の日系カナダ人――多様性のなかでの新たな絆
第21章 プレーリーの日系カナダ人――文化活動とカナダの多文化主義
第22章 日系カナダ人のアイデンティティ――ジャパニーズ、ニッケイ、エイジアン
【コラム2】カナダに花咲く日本文化
【コラム3】ジョイ・コガワ――日系カナダ作家の旗手
第23章 カナダの日本庭園――日本人ガーディナーの活躍
Ⅴ 社会・ジェンダー
第24章 カナディアン・ホリデー――全国一律とは限らない多彩な祝祭日
第25章 「独自の社会」としてのケベック――ケベックは他と何が違うのか? そのアイデンティティとは
第26章 大麻合法化の社会――2018年大麻法の壮大な実験
【コラム4】大麻ビジネス
第27章 規制の厳しい銃社会――南の隣国アメリカをにらみながら
第28章 セクシャル・マイノリティとカナダ社会――性の多様性と同性婚の合法化
第29章 女性の地位向上に向けて――政府調査委員会報告書から半世紀
第30章 変わりゆく家族と結婚の形――事実婚、同性カップル、一人暮らし(ソロ・リビング)
第31章 カナダ連邦騎馬警察――国家の象徴「騎馬警官(マウンティ)」
Ⅵ 政治・外交
第32章 政治制度の仕組み――民主主義の理念と実践
第33章 よみがえる君主制――カナダ立憲君主制の現在
第34章 カナダの憲法――カナダ的連邦制と人権保障の特質
第35章 カナダの政党――連邦政党と政党システム
第36章 ケベック問題――ケベコワとフランス系ナショナリズム
【コラム5】ケベックの庶民派宰相ルネ・レヴェック
第37章 「フランス語憲章」をめぐるケベック政治――ケベコワと言語の「生存」のための闘争
第38章 現代カナダの外交――ミドルパワー外交の過去・現在・未来
第39章 カナダにおける難民――その歴史と制度
Ⅶ 経済・社会保障
第40章 カナダの企業と産業構造――経済成長の担い手
【コラム6】カナダのAI・ICT産業
第41章 カナダの財政と税制――州が強い財政連邦主義
【コラム7】カナダの消費税――生活者の視点から
第42章 日加経済とTPP11――新時代の幕が開けられた日加経済関係
第43章 NAFTA・USMCA――自由貿易主義から「アメリカ第一主義」へ
第44章 カナダの社会保障――年金と医療
【コラム8】ベーシックインカム――カナダでの議論
第45章 カナダにおける障害のある人の福祉――障害のある人のインクルージョンへの取り組みを通した
社会連帯
Ⅷ 教育・言語
第46章 カナダの初等・中等教育――州ごとに異なる多様な学校教育制度
【コラム9】カナダにルーツをもつミッション・スクール① プロテスタント――東洋英和女学院
【コラム10】カナダにルーツをもつミッション・スクール② カトリック――カリタス学園
第47章 カナダの多文化教育――差別や偏見の解消を目指して
【コラム11】少年矯正施設における教育機会について――カルガリーの少年保護観察センター
第48章 フランス語イマージョンプログラム――学校教育における英仏バイリンガルの育成
第49章 カナダの高等教育機関――大学の特色と留学先としての魅力
【コラム12】日加大学間の交流
第50章 カナダの公用語政策――英語とフランス語のバイリンガル国家運営
第51章 カナダ英語――二重の基準をもつ英語
第52章 カナダのフランス語――ケベック・フランス語を中心に
【コラム13】カナダ研究国際協議会
Ⅸ 文学・文化
第53章 英語系カナダ文学――今、カナダの文学がおもしろい
第54章 フランス語系カナダ文学――ケベック文学の変遷を中心に
【コラム14】ケベック文学におけるガスペジー――地の果ての忘れられた故郷
第55章 『赤毛のアン』に描かれなかったカナダ――晴天率90%のアヴォンリー
第56章 カナダの演劇――多民族国家におけるアイデンティティの探求
【コラム15】大著『ケンブリッジ版カナダ文学史』の登場
第57章 カナダの音楽事情――保護政策との兼ね合いのなかで開花した才能
【コラム16】グレン・グールド――演奏会を拒否し、カナダの「北」に魅せられたピアニスト
第58章 カナダのミュージアム――誇りとアイデンティティ形成の場
第59章 カナダのスポーツ――多様化するカナダでアイスホッケーの人気はなぜ揺るがないのか
第60章 カナダの食文化――豊かな自然の恩恵を受けて
【コラム17】マーシャル・マクルーハン――メディア論の元祖が見つめた世界
エピローグ カナダとは何か――歴史の窓からみた現代カナダ
現代カナダを知るための文献・情報ガイド
前書きなど
はじめに
本書『現代カナダを知るための60章【第2版】』は、2010年に刊行された飯野正子・竹中豊編著『現代カナダを知るための57章』をほぼ全面的に改訂したものです。初版から10年間のカナダと世界の変動を踏まえ、まさに現代カナダを知るために必須の事項をまとめた1冊と自負していますが、実際にお読みいただく前に、本書の成り立ちや使い方について、若干の説明をしておきたく存じます。
第1に、本書は「飯野正子・竹中豊総監修、日本カナダ学会編」になるものですが、その経緯についてご紹介します。2010年刊行の初版は、日本を代表するカナダ地域研究学会である日本カナダ学会の創立メンバーであり、現在は名誉会員と顧問でおられる飯野・竹中両先生の編著によるもので、現代カナダ社会の全体像を把握するものとして広い支持を得ました。しかし、出版から10年を経て、変化のスピードが速いカナダの今を知るために、改訂を求める声が多く届くようになってきました。そこで、両先生の後進からなる日本カナダ学会から、両先生と版元である明石書店に対して、両先生を総監修として学会編で改訂を行うことをご提案したところ、快諾をいただき完成したのが本書です。今版の各章とコラムは、日本カナダ学会の会員他がその専門性を活かして執筆し、両先生の総監修のもと、学会の正副会長を加えた編集委員会で全体の調整を行いました。
第2に、本書は、1冊で現代カナダを鳥瞰し、もう一歩進んだ学びのガイドとなることを目指しています。現代という時代は、もちろん歴史の上に成り立つものですから、現代カナダを知るためには、歴史にも目を向ける必要がありますが、上の目標から、本書では歴史的な記述は最小限としています。また、鳥瞰という点から、1章をコンパクトに、多くのテーマを扱うようにしました。他方で、本書には、参考文献を整理した形で数多く掲げています。興味を感じた個別テーマでも、カナダ地域全体のことでも、巻末の文献・情報ガイドを活用して、是非、もう一歩進んだ学びに繋げてください。
第3に、本書には多分野の専門家が関わっていますが、分野で異なる用語等については、読者の混乱を避けるために、可能な限り統一をしました。地名・人名等の固有名詞は、連邦公用語のうち英語の原音に近いカタカナ表記を原則としつつ、日本で定着した表記があるものは、そちらを優先しました。たとえば、都市名Montréalは、フランス語の「モンレアル」ではなく「モントリオール」、Vancouverは「ヴァンクーヴァー」とする一方で、カナダの国獣beaverは、「ビーヴァー」ではなく「ビーバー」と表記します。国・州・地域名の表記については、それが政治・法主体としての国・州名か、地域名かを文脈上明らかにすることを原則に、国名The United States of Americaについては、各章の初出で「アメリカ合衆国」と表記し、次からは「アメリカ」と省略しています。また、重要な概念や用語はできる限りカタカナを避け意味を踏まえて訳語表示し、原語付記も最小限にとどめました。参考文献中では全く違う表現がされている場合もありますが、もし、そうした別表現に出会った時は、是非その理由を考えてみてください。それもまた、一歩進んだ学びの形かと思います。
(…後略…)