目次
序章 韓国のオルタナティブスクールの20年のあゆみの諸相――多様な子どもに多様な学びを保障するあり方を探る[宋美蘭]
1.問題の所在
1.1 1980年代から1990年代の韓国社会の諸相
1.2 日本における不登校の現実
1.3 日韓のオルタナティブの学びの場の実際と研究動向
2.韓国のオルタナティブスクールの定義
3.本書の構成と各章の課題と特色
第Ⅰ部 韓国のオルタナティブスクールの運動と制度
第1章 韓国の代案教育運動の生成展開過程とその性格――1980年代から1990年代の教育運動に着目して[宋美蘭]
1.目的・課題・定義
1.1 目的と課題
1.2 定義
2.代案教育運動のルーツ――教育制度内の批判的「民衆教育」運動の登場
2.1 批判的『民衆教育』の台頭
3.学校の周縁・外側からの批判的教育実践運動の展開
3.1 「真の教育」運動グループ
3.2 「もうひとつの文化」運動グループ
3.3 「民主化」運動グループ
4.代案教育運動の具体化――1980年代の運動の基盤の上に立つ運動・実践へと拡張
4.1 「新しい学校を夢みる人々の集い」――問題意識の共有と省察を伴う討議の過程
4.2「代案教育を模索する集い」
5.おわりに
第2章 韓国のオルタナティブスクールの制度・類型とその特徴[宋美蘭]
1.はじめに
2.韓国の代案学校の誕生の社会的・政策的・制度的導入の意味
3.韓国の代案学校の制度と類型
3.1 「特性化中学校」及び「特性化高校」の例
3.2 「代案学校(各種学校)」の例
3.3 「委託型代案学校」の例
3.4 「非認可代案学校」の例
4.おわりに
第Ⅱ部 子どもの生き方を支える「多様な学びの保障」をするオルタナティブスクール
第3章 若者が創造する教育・文化・福祉・労働と学校づくり――ソウル市立青少年職業体験センター(ハザセンター)Seoul Youth Factory for Alternative Culture とハザ作業場学校の教育実践[河野和枝]
1.はじめに――問題の所在
2.ソウル市立青少年職業体験センター「ハザセンター」
2.1 ハザセンター設立の背景と歴史
2.2 ハザセンターの運営原理と7 つの原則
2.3 ハザセンターの職員体制と授業料
2.4 ハザセンターの主な教育プログラム
2.5 ハザセンターの主な事業
3.都市型代案学校「ハザ作業場学校」(haja production school)
4.ハザ作業場学校がクリキンリセンター(ソウル市立恩平青少年将来のキャリアセンター)に移設
5.おわりに
第4章 子ども・教師・親の生き方と学校教育・マウルづくりの一体的展開[吉岡亜希子]
1.はじめに
2.調査対象校の概要
3.都市貧困地域における危機青少年への統合教育実践――「ナウ学校」
3.1 教育目標及び教育方針
3.2 教育課程
3.3 ノウォン青少年支援センター
3.4 「ノウォン市民(成人)人文学堂」の取り組み
3.5 小括
4.子ども・教師・親の協同による反競争教育的な新しい価値教育の創造とマウルづくり――「ソンミサン学校」
4.1 ソンミサン学校の成り立ちと展開
4.2 共同育児施設における親と教師の協同と学び
4.3 ソンミサン学校の教育内容と方法
4.4 ソンミサン学校の卒業生
4.5 親の学びと地域への広がり
4.6 小括
5.おわりに
第5章 子どもの生き方を支える学びの構造と成立条件――日韓の事例から[宋美蘭・阿知良洋平・吉岡亜希子]
1.本章の目的
2.調査対象校の概要
3.調査対象校の教育課程
3.1 アルムダウン学校
3.2 北星学園余市高等学校
4.調査対象者(生徒)の特徴
5.教育実践の特徴
5.1 アルムダウン学校
5.2 北星学園余市高等学校
5.3 両校の実践が示唆するもの
6.おわりに――子どもの声からみた学びの保障の構造
第6章 韓国農村部のオルタナティブスクールの教育実践――三つの学校からなる「ガンジー代案学校教育共同体」の事例から[宋美蘭]
1.課題と所在
2.学校調査概要
2.1 学校調査概要
2.2 学校の位置
3.三つの学校からなる「ガンジー代案学校教育共同体」
3.1 学校の設立背景と歴史
3.2 学校の沿革
3.3 設立者、ヤン・ヒギュ氏の「ガンジー教育共同体」の設立に対する思い
4.事例
4.1 「サンチョン学校」の理念とカリキュラム――「知識教科」・「感性教科」・「自立教科」の3層構造のカリキュラム
4.2 「ジェチョン学校」の事例――創造性を持って改革し、連帯しながら生きる人「ソーシャルデザイナー」を目指す実践
4.3 「クムサン学校」の事例――自分・他者・自然・世界・地域との出会いを通して紡ぎだす学び
5.おわりに
第Ⅲ部 韓国のオルタナティブスクールの成果と課題
第7章 堤川市徳山面における農村共同体研究所の地域づくり実践[若原幸範]
1.はじめに
2.農村共同体研究所の概要
3.農村共同体研究所の理念形成過程――ハン・ソクジュ氏の語りから
3.1 教師から地域づくり実践者へ
3.2 地域づくり実践の拡張と限界
3.3 農村共同体研究所の設立――主体的に生きることを目指す
4.おわりに
第8章 「非主流社会」を生きるオルタナティブスクール卒業生の「学校」から社会への移行の困難――Aさんのインタビューを手掛かりに[宋美蘭]
1.本章の目的・課題・方法
1.1 本章の目的と課題
1.2 韓国におけるAS卒業生に着目した研究
1.3 方法
2.子ども・親の「代案学校」の選択理由
2.1 子ども・親はなぜ「代案学校」を選ぶのか
2.2 「代案学校」の子どもたちは卒業後どのような進路を考えているのか
3.AS卒業後の「学校」から「社会」へ
3.1 Aさんの属性と教育経路
3.2 地域の特性と「ジェチョン学校」の簡単な概要
3.3 Aさんの進路動機とASでの学びの特質
3.4 ASの学びとその後の移行――「主流社会」に生きる困難
3.5 「非主流」のままの生き方――移行の困難を乗り越えるために
4.おわりに
おわりに[宋美蘭]
索引
前書きなど
序章 韓国のオルタナティブスクールの20年のあゆみの諸相――多様な子どもに多様な学びを保障するあり方を探る[宋美蘭]
(…前略…)
3.本書の構成と各章の課題と特色
ここで、本書の構成と各章の内容を簡単に紹介しておきたい。
本書では、第I部「韓国のオルタナティブスクールの運動と制度」、第Ⅱ部「子どもの生き方を支える『多様な学びの保障』をするオルタナティブスクール」、そして、第Ⅲ部「韓国のオルタナティブスクールの成果と課題」という三つのセッションに分けて、韓国のオルタナティブスクール研究を総合的に検討することをめざしている。
第I部「韓国のオルタナティブスクールの運動と制度」には、2つの論文を収録した。
第1章「韓国の代案教育運動の生成展開過程とその性格」(宋美蘭)では、韓国の代案学校がどのような歴史的・社会的な文脈の中で生まれたのか、代案教育運動(alternative education movement)の歴史を丹念にたどりながら、特に、1980年代の民主化前後のその時代の社会や教育背景との関わりで分析を行い、代案教育運動の持つ性格を明らかにする。そして、第2章「韓国のオルタナティブスクールの制度・類型とその特徴」(宋美蘭)では、韓国の教育システムの外で位置づけられていた「代案学校」が、もう一つの教育システムの内に位置づけられるようになったその背景を、1995年から2006年までの「代案教育の主な動き」と「公教育改革の主な動き」との関連で検討し、1990年代から増え続けている多種多様な代案学校の、それぞれの制度的・法的根拠・実際の教育課程・カリキュラム内容を明らかにする。(……)
第Ⅱ部「子どもの生き方を支える『多様な学びの保障』をするオルタナティブスクール」には、4つの論文を収録した。ここでは、タイプの異なる「都市部」「農村部」の6つの制度内外の代案学校の事例を取り上げ、それぞれの代案学校で展開している具体的な教育実践内容と方法、設立者の掲げている教育理念及び哲学などの視点や子どもの学びを捉える多様性の視点から明らかにする。韓国の代案学校の実践が今日の学校教育に対して突きつける新しい側面が学びと生き方の関係の再構築、多様な主体の生の声を聴き、そこに「共同」と「協同」を見出し合う関係の形成などの諸相から明らかにし、韓国型オルタナティブスクールの特徴を描きだす。
第3章、第4章では、オルタナティブな教育に果敢に挑戦する韓国の「都市部」代案学校に着目し、「反競争教育」・「共に生きる=教育福祉」・「第3の道(進路)=労働」・「新しい学習文化」という多面的な視点で検討する。「競争」が激しい「都市」において、競争教育に対抗し、反競争教育的な新しい価値教育をどのような教育方法と内容を用いて実施し、それはどのような教育理念の下で教育方針と運営を生み出しているのか。社会的困難を抱えている不登校や学校に馴染めなかった子ども、そして、軽度発達障がいの子どもなどと、どのような「共生」の思想を持って教育実践を展開しているのか、代案学校設立者の教育思想と地域・親との関わりで検討している。
(…中略…)
第5章、第6章では、子どもの内的経験を教育的意義において最優先させ、「カリキュラム」づくりに挑戦している代案学校に注目している。まず、第5章「子どもの生き方を支える学びの構造と成立条件」(宋美蘭・阿知良洋平・吉岡亜希子)では日韓比較の視点で、第6章「韓国農村部のオルタナティブスクールの教育実践」(宋美蘭)では、「農村部」代案学校の3つの事例を取り上げて分析している。(……)
第Ⅲ部「韓国のオルタナティブスクールの成果と課題」には、2つの論文を収録した。
第7章「堤川市徳山面における農村共同体研究所の地域づくり実践」(若原幸範)では、地域づくり視点で分析を行い、ジェチョンガンジー学校の教育理念・実践と響きあいながら地域づくりに取り組む「堤川農村共同体研究所」の事例を取り上げ、子どもの発達の保障と社会の発展を地域づくり実践を通して構想する先進事例から明らかにする。
そして、第8章「『非主流社会』を生きるオルタナティブスクール卒業生の『学校』から社会への移行の困難」(宋美蘭)では、韓国において制度の学校教育路線とは異なる学びの路線を歩んできた代案学校の卒業生に焦点を当て、卒業後の移行の困難を考察し、AS卒業生の移行問題の一面を浮き彫りにする。(……)