目次
はじめに
第1章 支援拠点とは何か【基礎編】
1 支援拠点(児童福祉法10条の2)の機能・要件
(1)要件の提示
(2)要件の解説(法が想定する姿)[市区町村中心主義へ]
2 支援拠点に関して(想定されている人口規模と人員配置基準等モデル)
3 支援拠点を開設する場合の関係機関
(1)包括支援センター(利用者支援事業(母子保健型))との関係
(2)要保護児童対策地域協議会の活用
(3)児童相談所との連携、協働
(4)教育部門との関係:学校・教育機関との関係市町村子ども家庭支援指針
(5)家庭児童相談室との関係
(6)DV担当、医療機関、警察、児童家庭支援センター、地域子育て支援団体その他関係機関との連携
第2章 支援拠点【詳細各論】
1 実施主体
2 対象
3 業務内容
(1)子ども家庭支援業務に係る業務(4項目)
(2)要支援児童及び要保護児童等並びに特定妊婦等への支援業務(8項目)
(3)関係機関との連絡調整
(4)その他の必要な支援
4 設置形態及び職員配置等
(1)類型及び配置人員等
(2)報告書記載自治体紹介
(3)主な職員
(4)主な職務、資格等
(5)上記職員確保のための具体策(人材育成含む)
(6)運営方法等
5 設備・器具
第3章 自治体組織アセスメントと支援拠点チェックリスト(確認シート)の提言
1 自治体組織アセスメントシート
(1)基本的な考え方
(2)自治体組織アセスメント(具体例)
2 支援拠点整備確認チェックリスト
第4章 支援拠点設置のための都道府県の取組例
1 静岡県の取組
(1)平成30年度研修会について
(2)令和元年度研修会
(3)県の取組(有効であったと考えているところ)
(4)静岡県内における支援拠点設置(機能設置)自治体一覧
(5)静岡県としてのコメント
2 三重県の取組
(1)研修概要
(2)研修内容
(3)研修開催に至る経緯
(4)研修企画における狙いと実際の効果
(5)進行
(6)成果(実施状況)
(7)成果(児童相談体制及び専門性強化に向けた確認票の改訂)
(8)参考資料添付
第5章 支援拠点設置のメリットはどこにあるのか(自治体から寄せられる質問と回答)
1 支援拠点「整備」とはどういう状態をいうのか?
2 支援拠点設置のメリットはどこにあるのか?
3 支援拠点を整備する過程で役立ったことは?
第6章 支援拠点における相談研修の在り方・具体例【研修編】[山川玲子]
研修例の紹介
第7章 支援拠点設置に向けてのアドバイス例【主に小規模分析・制度設計編】[井上登生]
支援拠点設置に向けてのアドバイス
(1)市区町村子ども家庭総合支援拠点の設置促進の考え方での気づき
(2)都道府県による各市町村における子育て世代包括支援センターと支援拠点の設置状況の確認と市町村からの設置促進に向けた意見
第8章 要綱等(設置要綱・市町村子ども家庭支援指針一部抜粋・自治体向けFAQ・運用面の改善等)
1 設置要綱
2 市町村子ども家庭支援指針(ガイドライン)一部抜粋
3 自治体向けFAQ
4 運用面の改善等
おわりに
資料
前書きなど
はじめに
平成28年児童福祉法等改正は、同法1条を改正し、子どもの権利主体性を明記した。そして、この改正趣旨実現のために、市区町村は、「拠点の整備」に努めなければならないと明記された(同法法10条の2)。
筆者は、平成28年には、厚生労働省市区町村の支援業務のあり方に関する検討ワーキング委員を務め(「市町村子ども家庭支援指針」(ガイドライン)策定等)、その後平成29年度~令和元年度まで、厚労省子ども・子育て支援推進調査研究事業の研究代表として、子ども家庭総合支援拠点、児童虐待防止対策の先駆的取組等の調査を全国の自治体に対して行ってきた。同時に、厚労省の「子ども家庭総合支援拠点」設置アドバイザーとして、全国の都道府県担当者とともに市区町村子ども家庭総合支援拠点設置支援を行ってきた(この間、野田市児童虐待死事件、札幌市児童虐待死事件の検証委員を務めている)。
国は、度重なる児童虐待死事件を踏まえ、また平成28年改正とその後の平成29年改正、令和元年改正を根拠に、令和4(2022)年度までに全市区町村に法10条の2に基づく支援拠点設置を求めている。
では、市区町村に求められる「支援拠点」整備とは、どのような体制・状態をいうのか。「支援拠点」整備は、物理的な場所の整備でなく機能の設置である。それゆえ、自治体からはわかりづらいとの声が多く聞かれる。今までの体制・対応とどう異なるのかとの質問も少なくない。
本書は、こうした自治体からの疑問・質問に応えるものである。
本書は、前述した平成30年度子ども・子育て支援推進調査研究事業の成果である『市区町村子ども家庭総合支援拠点設置に向けて/スタートアップマニュアル』(平成31年3月)を基に、その後のアドバイザー事業等の成果を追加して策定したものである。
平成28年の児童福祉法改正により、児童福祉行政のあり方は、子どもの権利主体性を保障するための大転換が求められた。この改正後の自治体による児童福祉行政のあり方、そして個別の子どもとの関わり方は法の趣旨からすれば、抜本的に変わっていなければおかしいのである。
支援拠点整備は、ゴールでなく、子どもの命を守るための住民への約束でありスタート地点である。国及び都道府県と連携・協働して、不断に拠点機能を維持し、発展・充実させることが求められる。
支援拠点を整備することで、目黒区虐待死事件・千葉県虐待死事件・札幌市虐待死事件等が再び起きないようにできないか。各自治体の制度設計及び運営にかかっている。児童相談所中心主義(点支援)から市区町村中心主義(面支援)への幕開けである。
(…後略…)