目次
プロローグ[中島智子]
第1章 離島とその離島の小さな地域社会と小さな学校――鹿児島県熊毛郡屋久島町一湊地区・口永良部島[中西宏次・大垣裕美・中島勝住]
はじめに
(1)屋久島の自然
(2)屋久島の町と人
(3)調査の概要
(4)本章の構成
1 屋久島と学校
(1)「集落の学校」から「校区の学校」へ
(2)旧上屋久町の中学校統合
2 一湊と学校
(1)屋久島一の湊
(2)中学統合と一湊住民
(3)一湊の「地域力」
(4)小さな学校、一湊小学校
(5)黒潮留学への取り組み
3 口永良部島と学校
(1)噴火、避難、そして帰島
(2)子どもたちの日常
(3)えらぶの教員
(4)「外」から見る
(5)えらぶの未来に向けて
(6)おわりに
第2章 統廃合によって学校がなくなった都市近郊地域のその後――京都府相楽郡南山城村高尾地区[小泉友則・中西宏次]
はじめに
(1)南山城村
(2)旧村と学校
(3)高尾地区
(4)南山城村での調査
1 南山城村の学校統廃合
(1)南山城村の概況
(2)統廃合の経過
2 高尾地区と学校統廃合
(1)高尾地区と高尾小学校
(2)学校統廃合がもたらした衝撃
(3)学校統廃合をめぐる経験
3 高尾地区における廃校舎活用
(1)校舎の再利用と住民の動向
(2)高尾図書室の試みと高尾小フェス
(3)手島美智子さんとの出会い
(4)高尾図書室から高尾いろいろ茶論へ
4 中年世代が描く高尾地区の将来
(1)中年世代へのインタビュー
(2)中年世代の懸念
(3)中年世代が描く将来
おわりに
第3章 移住者受け入れ先発地における地域と学校――和歌山県東牟婁郡那智勝浦町色川地区[中島智子]
はじめに
(1)色川の概要
(2)色川の特徴
(3)調査の概要
(4)何に着目するか
1 保育所・学校の存続と移住者受け入れ
(1)移住者はなぜ受け入れられたか
(2)移住者が〈学校問題〉に出会う
(3)移住者の多様化と活発な地域活動
(4)まとめ――移住者の増加と住民の多様化がもたらした〈逆説〉
2 学校と地域の〈距離〉
(1)学校統廃合がもたらしたもの
(2)校舎新築がもたらしたもの
(3)教員と地域の〈距離〉
(4)まとめ――地域と学校の物理的な〈距離〉、心理的な〈距離〉
3 学校の思い、地域・保護者の思い
(1)色川小・中学校の教育
(2)地域と学校の関係
(3)まとめ――学校と地域のあるべき姿とは
4 卒業生と色川――2つの家族の事例から
(1)2つの家族の概要
(2)色川で暮らす、地域を継承する
(3)色川の外にあっても〈色川マインド〉を持つ
(4)卒業生の生き方と色川
(5)まとめ――〈色川マインド〉を持ち続けて
補論 創意が生きる小さなマウルと学校――韓国・忠清南道洪城郡洪東地区[尾﨑公子]
はじめに
(1)洪東マウルとは
(2)洪東との出会いと調査概要
1 プルム学校のマウルづくり
(1)プルム学校の概
(2)プルム学校の取り組み
2 公立学校と地域の〈架橋〉
(1)地域にありながらも地域とかかわりを持たない公立学校
(2)地域と学校を〈架橋〉する人々、組織、プログラム
(3)活動費の確保――田園学校指定
3 洪東の実践を可能にした制度的背景――付与された学校裁量を活かす!
(1)地方分権政策と学校自律化政策
(2)学校運営委員会――諮問機関ではなく議決機関
(3)校長公募制――一般教員の校長登用が可能に
(4)自律学校
4 実践を支える民間組織と運動の存在
(1)南漢山小学校の取り組み――廃校反対運動から新しい学校づくりへ
(2)南漢山小学校のインパクト
(3)小さな学校教育連帯の結成
おわりに
エピローグ[中島勝住]
(1)学校があること、学校がないこと
(2)地域の中で子どもを見かけるということ
(3)学校と地域のあいだ
(4)移住者と地域、学校
本書のテーマをさらに深めるための文献一覧
あとがき
前書きなど
プロローグ
(…前略…)
本書は3章と補論によって構成されている。そこで取り上げる事例の概要は、以下である。
第1章では、鹿児島県屋久島町を取り上げる。統廃合によって地域の中学校がなくなり、小学校だけとなった屋久島の一湊地区で、中学校がなくなった影響と小学校の存続への思いや取り組みについて見る。また、屋久島の離島である口永良部島には極小規模の小・中学校がある。しかし、2015年の火山の噴火が学校もろとも地域の存在を揺るがした。自然災害と背中合わせの中での小さな離島の学校と地域の日常を描く。
第2章では、京都府南山城村の高尾地区を取り上げる。京都府内で唯一の村である南山城村では、2003年に3つの小学校が統合し、2006年にさらに1小学校が加わって、村の小学校は1校になった。地区に学校がなくなるとはどういうことかについて、廃校舎の活用も含めて考える。
第3章では、和歌山県那智勝浦町の色川地区を取り上げる。1970年代に都会から移住者を受け入れた色川地区は、Iターン受け入れによる地域活性化や田園回帰の先駆けとして有名であるが、地区の学校を含めて色川を見るという視点はこれまではなかった。地区に1つだけある小・中学校を地域存続の要としてきた色川において、地域と学校の関係はどのようなものなのかを考察する。
最後に補論として、韓国の忠清南道洪城郡洪東地区を取り上げる。これは、統廃合を排して小さな学校を守ることを、地域住民の思いだけではなく教師が主導する運動として積み重ねてきた事例である。しかも、運動だけにとどまるのではなく、教育行政のあり方や教育改革とも連動して新たな潮流をつくり出している。地域と学校の関係やあり方について、韓国の事例から学べるものは多い。
(…後略…)