目次
はじめに
用語・術語解説
参考資料
第1章 世界で話されている英語
Q1 世界で英語を日常的に話す人はどのくらいいますか
Q2 ネイティブスピーカーやL1/L2やESL/EFLとはなんですか
Q3 いろいろな英語(World Englishes)とはなんですか
Q4 リンガフランカとしての英語(English as a Lingua Franca)とはなんですか
Q5 アジア英語(Asian Englishes)とはなんですか
第2章 英語の成立と世界への広がり
Q6 英語はどのように言語として成り立っていったのですか
Q7 英語は歴史的にどのように世界中に広がっていったのですか
Q8 現代も英語が世界中で広がり続けているのはなぜですか
Q9 英語の広がりについて研究者はどのように考えていますか
Q10 英語と支配にはどのような関係がありますか
第3章 日本での英語の受容と広がり
Q11 明治・大正時代の英語教育はどのように行われていたのですか
Q12 昭和と平成の英語教育はどのように行われていましたか
Q13 グローバル化によって日本での英語教育はどのように変わっていくのでしょうか
第4章 英語習得の社会的な意味
Q14 「バイリンガル」とはなんですか
Q15 「グローバル人材」とはどのような人ですか
Q16 英語を習得するとどんな経済的価値があると言われていますか
Q17 「言葉の文化資本」とはなんですか
Q18 日本でも英語は「共通語」になりますか
Q19 英語と日本語の論理は同じですか
第5章 日本で英語を教える・学ぶ
Q20 自分たちの母語を維持することの大切さはなんですか
Q21 英語を学習すると多文化理解はすすみますか
Q22 教養としての英語とはなんですか
Q23 英語ネイティブ以外の先生はどう英語を教えればいいですか
第6章 言語教育の様々なアプローチ
Q24 コミュニカティブ・アプローチ(Communicative Approach)とはなんですか
Q25 トランス・ランゲージング(Translanguaging)とはなんですか
Q26 クリル(CLIL)とはなんですか
Q27 専門英語教育(ESP)とはどんなことをするのですか
第7章 「多様な英語」への理解を促す教育実践
Q28 世界の様々な英語についてどのように教えることができますか
Q29 言葉をめぐる格差や不平等についてどのように教えることができますか
Q30 地域に必要な英語をどのように考えたらよいでしょうか
Q31 英語学習にインターネットやSNSをどのように活用できますか
第8章 日本の英語教育における多様性・テクノロジー化
Q32 外国にルーツを持つ高校生の英語の授業はどんなものですか
Q33 夜間定時制高校ではどのように英語教育が行われていますか
Q34 耳が聞こえない人たちはどんな風に英語を学んでいますか
Q35 機械翻訳時代には英語教育は不要になりますか
第9章 世界における言語をめぐる格差
Q36 アフリカでの言語をめぐる格差とはどのようなものですか
Q37 アジアの多言語と英語はどういう関係ですか
Q38 言語教育と人種はどのように関わっていますか
Q39 アメリカの先住民はどのように英語を話すようになったのですか
Q40 アメリカのヒスパニックの教育はどのようになっていますか
Q41 黒人英語のエボニックスとはどんな英語ですか
第10章 多言語社会に向けて
Q42 欧州評議会が掲げる「複言語主義」の理念はどのようなものですか
Q43 ニュージーランドの言語教育はどのように行われているのですか
Q44 複数の言語が話されている小さな国ではどのように教育をしていますか
Q45 言語が消滅する、復興するとはどういうことですか
Q46 ことばの市民権(Linguistic Citizenship)とはなんですか
Q47 日本の多言語状況はどのようになっていますか
Q48 「外国人を見たら英語で話しかけてみよう」の問題はなんですか
Q49 日本の大学生は多言語社会をどのように見ていますか
Q50 日本人は英語にどう向き合うべきですか
索引
前書きなど
はじめに
(…前略…)
目次をご覧になっていただくとわかりやすいと思いますが、第1章は「世界で話されている英語」と、5つの質問で英語話数のデータや用語の説明をしています。また、Englishは一つではないという意味で、World Englishesやリンガフランカとしての英語、アジア英語などが生まれた歴史や経済的背景や現在の言語状況を説明しています。第2章の「英語の成立と世界への広がり」は5項目で、英語がどのように言語として成り立っていったか、どのように世界に広がって行ったのかなどをわかりやすく説明しています。
第3章は「日本での英語の受容と広がり」を、明治・大正・昭和・平成と、英語教育がどのように行われたのか、特徴のある教授法などを紹介しています。(Q13 飯野担当)では、グローバル化した日本での英語教育を論じる中で、「米国、英国を中心とした母語話者英語を崇拝し、同化しようと努力することは子どもたちに英語を使える自信を与えているのでしょうか、それとも心の植民地化を植え付けてしまっていないでしょうか。」と問題提起しています。
第4章の「英語習得の社会的な意味」の6 項目は、バイリンガルやグローバル人材や経済効果について様々な示唆をしています。(Q14 蒲原担当)「この言語と社会的地位が密接に関連している事実は、様々な形態の『バイリンガル教育』について考えるときに、より深く関わってきます。」、(Q17 三村担当)「『象徴的資本』について考えることは、英語を習得するとどんな良いことがあるのかを考える一つの材料になるはずです。」、(Q18 波多野担当)「なぜ英語を学ばなければならないかという問いにぶつかったとき、『英語は世界の共通語だ』と鵜呑みにする前に、どのような場所で、どんな時に英語を使用するのか、自らの将来像と照らし合わせながら考えていく必要があるでしょう。」などの示唆があります。
第5章は「日本で英語を教える・学ぶ」の中で、母語や多文化理解や教養としての英語などについて考える機会を提供しています。第6章の「言語教育の様々なアプローチ」の中では様々な言語教育法について述べています。第7章の「『多様な英語』への理解を促す教育実践」で、世界の様々な英語や言語をめぐる格差や不平等についても考える中で、(Q29 杉野担当)「教科書が言語や教育政策に特化していなくても、ことある毎に教師が言語を意識する授業を行うことは、ますます重要になってきている。」と提案しています。また、(Q30)で、田中は「英語学習とともに、英語使用者になることの目的、意義を知ることはとても重要なので、コミュニケーションを図る相手も大いに意識した高度な英語の運用のために、英語教育を位置づけることが理想ではないか。」と論じています。
第8章は「日本の英語教育における多様性・テクノロジー化」では、外国にルーツをもつ生徒、夜間定時制や聴覚障害の生徒の語学教育の問題点を明らかにしています。(Q33 森谷担当)では、「日本の中の多様性と単一言語主義のせめぎあいが、夜間定時制教育における英語教育では意識せざるを得ない状況となっているのです。このせめぎあいをどのように捉え、乗り越えていけるのかは今後の英語教育の課題です。そしてこれは、今後多言語化が進むと思われる日本の小中学校、そして夜間定時制高校を含む高校においても取り組むべき課題でしょう。」や(Q35 波多野担当)「『英語教育』として考えたときには、単に実用的な英語運用能力を養成するということだけでなく、日本語とそれ以外の外国語を比較することで、豊かな言語感覚を磨いたり、他の文化を学んだりすることもできます。」と示唆しています。
第9章「世界における言語をめぐる格差」では、アフリカ、アジア、アメリカの先住民、ヒスパニックと黒人英語の例を出しています。(Q37 野沢担当)「この言語資本へのアクセスは社会階層や、都市と地方など地域間で大きく異なり、それが不均質な教育システムの中で増幅され、さらなる不平等を生み、固定化しているという一面にも、十分目を向け理解する必要があります。」と提示しています。最後の第10章「多言語社会に向けて」では、欧州の複合主義、言語の消滅と復興、日本の多言語主義などについて紹介して、多言語状況の加速化とそれへの対応を呼びかけています。最後に、「日本人は英語にどう向き合うべきですか」(Q50 波多野担当)の中で、「自分にとって英語とは何か?」という問いに対して、飽くなき「対話」を続けていくことの大切さと、なぜ英語を教えるか、教え子に何を学んでほしいのか、教員としての自己説得的言説を自らのことばで語ることができる人材になることの重要性を強調しています。さらに日本人は英語にどう向き合うべきなのかと問いかけています。
このように、各項目の疑問に答える形、あるいは答えのヒントになるようなものを読者が引き出すことができるような内容になっています。
(…後略…)