目次
まえがき
第1章 性的問題行動を抱える子どもたち
はじめに
性的問題行動の定義
治療と予測因子に関する先行研究
治療における保護者の役割
まとめ
第2章 子どもの正常なセクシュアリティと性的問題行動の識別
正常な性的行動
問題となる性的行動
まとめ
第3章 子どもの性愛化を取り巻く状況
市場が子どもをターゲットに行っていること
メディアのねらい:どれほど子どもたちはメディアのメッセージを受け取っているのだろうか?
女の子の性愛化
ポルノの特別な問題
保護者がすべきこと
その他メディアの影響に対してすべきこと
まとめ
第4章 性的問題行動を抱える子どものアセスメント
専門的アセスメントプロセス
ASBPCの特徴
ASBPCの指示的課題
まとめ
シート4.1 子どもの性的問題行動のアセスメント(ASBPC)の概要
シート4.2 「気分は何色?」
第5章 共通認識されている治療の領域と保護者との協働に関する提言
共通認識されている治療の領域
保護者との協働に関する提言
まとめ
シート5.1 子どもの性的問題行動対応のためのガイドライン
シート5.2 感情のスケーリング・ワークシート
シート5.3 からだ温度計
第6章 バウンダリー・プロジェクトモデル
バウンダリー・プロジェクトの特徴
治療の構成
治療の目標とその段階
教育の統合と保護者グループ
日常とセッションとを移行する際の活動
治療目標:バウンダリー・プロジェクトのレッスン
課題とねらい
治療の進展の客観的な測定
まとめ
シート6.1 バウンダリー・プロジェクト:子どもと保護者が取り組む12セッションの治療の目標
第7章 ケーラのケース
基本情報
心理社会的背景
アセスメントプロセス
アセスメント結果
治療目標
治療計画と治療プロセス
まとめと結論
第8章 トーマスのケース
基本情報
心理社会的背景
アセスメントプロセス
アセスメント結果
治療目標
治療プロセス
まとめと結論
第9章 ジェンナのケース
基本情報
心理社会的背景
アセスメントプロセス
治療計画・目標・プロセス
まとめと結論
第10章 ロレンソのケース
基本情報
心理社会的背景
アセスメントプロセス
アセスメント結果
治療計画・目標・プロセス
まとめと結論
シート10.1 きょうだい間における性的な接触:通常の性的な遊びと問題行動の境界
あとがき
リソース
参考文献
索引
訳者あとがき
原著者紹介
訳者略歴
前書きなど
まえがき
(…前略…)
本書は、子どもを評価してほしいとか、保護者に助言をしてほしいなどと依頼された専門家が、介入の選択肢を検討できるようになることを目的として書かれています。最初の3つの章では性的問題行動について概説を行い、この問題の発生原因や影響要因の理解につながる現在までの研究の進展を紹介しています。過去の被虐待歴、種々のメディアへの曝露、社会的プレッシャー、セックスと攻撃性の結びつきに影響する要因といった問題について検討しています。第4章では、子どもが自分の考えや感情について率直に話していけることを目指した、子どもに適したアセスメントプロセスについて説明しています。第5章では、治療において取り扱うべきこととして共通認識されている領域を確認し、それから、保護者に対してどのようにアプローチしていくか説明しています。第6章ではバウンダリー・プロジェクトというプログラムを紹介しています。これはエリアナ・ギル(Eliana Gil)が何年も前に開発したプログラムで、現在では種々の治療設定の中に組み込まれ活用されているものです。ジェニファー・ショウ(Jennifer A. Shaw)はこのバウンダリー・プロジェクトを2003年から他に先駆けて実施し、現在の形になるまで多大な貢献をしてきました。保護者の報告によるこのモデルの事前・事後検証では、性的問題行動の減少と健全な社会的機能の増大が示されています。また、予備的な調査結果も同様に楽観的です。さらに、本書前半の章では、全米で実施されている治療実践のレビューを行い、認知行動的な基礎を持ったプログラムによる治療の成果がたいへん良好であることも示しています。つまり、性的問題行動を抱える子どもにおいては、衝動、思考、感情のコントロールを改善することと、保護者の子どもの監視や監督の強化を並行して行うアプローチが、極めて良好な結果につながるということです。
第7章から第10章は、われわれが理論と実践をいかに実際の取り組みに活かしているかをお伝えできるような治療ケースを提示しています。これらのケース例を通じて、治療モデルに関与し子どもの援助を共に行っていこうという、保護者の協力を引き出すことにいかにわれわれが高い優先順位を置いているかが分かると思います。保護者の協力がなければ治療ははるかに困難なものとなるため、われわれは常に家族に対して、家族がいかに治療に重要な寄与をするか理解してもらえるよう取り組んでいるのです。これらの章ではまた、アセスメントと治療の両側面を描きながら、性的問題行動を抱える幼い子どもの統合的な治療アプローチについても説明しています。