目次
はしがき
序章[渡辺幸倫]
多文化共生政策の流れ
2018年の多文化社会日本
社会教育の課題
本書の構成――各章の概略
各施設の課題
第Ⅰ部 日本の外国人集住地域の「安心の居場所」
第1章 協働・共創を支える「安心の居場所」――内発的社会統合政策を拓く[川村千鶴子]
1.「安心の居場所」創出への地域の実践
2.移民・難民の定住と世代間サイクルの視点
3.「安心の居場所」と社会統合政策
第2章 地方都市部の社会教育ならびに施設における多文化共生活動――静岡県磐田市南御厨地区を事例として[金塚基]
1.磐田市・南御厨地区の外国人住民の概況
2.磐田市および南御厨地区における多文化共生活動の経緯
3.南御厨地区のアンケート調査結果
第Ⅱ部 居場所としての公民館
第3章 多文化社会における公民館の役割 難民申請者と地域住民の交流――埼玉県川口市の住民の取り組みを事例に[土田千愛]
1.川口市に在留するトルコ国籍クルド人難民申請者の実態
2.川口市における公民館
3.難民申請者と地域住民との文化交流の事例
第4章 二つの法体系が支える韓国の地域学習施設――光州広域市における「教育」と「支援」の連携事例を中心に[呉世蓮]
1.韓国の社会教育・生涯学習と多文化家族支援に関する法的規定
2.光州広域市の地域学習施設の取り組み
第5章 成人移民へフィンランド語教育を提供する公共施設――地域社会とのかかわりと学習以外の機能にも着目して[大谷杏]
1.フィンランド政府の移民統合政策
2.第2言語としてのフィンランド語学習
3.フィンランド語学習施設
第Ⅲ部 本から広がる図書館の取り組み
第6章 日本の多文化都市における図書館の取り組み――「多文化サービス」のあゆみと「安心の居場所」であるための提言[阿部治子]
1.図書館の多文化サービスのあゆみ
2.調査からみる図書館の多文化サービスの現状と課題
3.多文化共生施策と図書館の多文化サービス
4.「安心の居場所」としての図書館
第7章 多民族国家シンガポールを支える図書館――国民統合と多民族共生[宮原志津子]
1.国民「統合」と多民族「共生」のための政策
2.図書館サービスによるシンガポール人への「統合」
3.図書館サービスによる多民族の「共生」
第8章 移民・難民のくらしに寄り添う公共図書館――デンマークにおける取り組みに着目して[和気尚美]
1.統計にみるデンマークに滞在する移民・難民の公共図書館利用
2.移民・難民に図書館サービスを届ける仕組みと多言語資料
3.移民・難民の多様な課題解決を支える公共図書館のプログラム
第Ⅳ部 見て聞いて触って学ぶ博物館の役割
第9章 学校と博物館の連携の可能性――先住民族について学ぶ「国立アイヌ民族博物館」設立を受けて[若園雄志郎]
1.博物館活動と民族についての基礎的認識
2.地域住民以外の博物館利用
3.博物館と学校との連携
第10章 文化の由来を知る――「順益台湾原住民博物館」が担う社会的包摂機能[郭潔蓉]
1.台湾「原住民」の苦難の道のり
2.原住民の固有文化と民族的アイデンティティの喪失
3.「順益台湾原住民博物館」の誕生と原住民文化再建への想い
4.展示する「博物館」から原住民文化の「安心の居場所」へ
第11章 ニュージーランドにおける太平洋諸島移民の文化的学習――博物館を中心に[玉井昇]
1.多文化社会ニュージーランドにおける太平洋諸島移民の経緯
2.国立博物館テ・パパ・トンガレワの取り組み
3.オークランド博物館の取り組み
あとがき
前書きなど
はしがき
多文化多民族化が加速する日本で、住民の自治という経験の積み上げがある社会教育はどのような役割を果たせるのだろうか。これが本書の一貫した問いである。公民館、図書館、博物館などの社会教育施設が、変化する住民構成に応じてその活動の内容を変えていくのは当然のことであろう。しかしそれぞれの地域の事情の中で、どのような形があり得るのかといった参考事例が不足している。そこで本書では、現在の日本の多文化状況と今後の展望、そして社会教育の課題を概観したうえで、国内外の安心できる居場所の創出にかかわる先進的な公民館、図書館、博物館およびそれに相当する施設での取り組みを紹介していくことで、今後の社会教育の新たな可能性を提示する。
(…後略…)