目次
序文
第1章 序論
レジデンシャル・チャイルドケアの歴史の概略
ソーシャルワーク内でのレジデンシャル・チャイルドケア
レジデンシャル・チャイルドケアの近年の歴史
ソーシャルケアの行政改革
政策方針の変化
新たなケアのあり方
本書で提示する実践の方向性の特徴
レジデンシャルケアの中心的な特徴の抽出
本書の構成に関して
第2章 安全と安心:所属感
事例
はじめに
毎日のルーティーン、リズム、習慣
関係性を通した安全感
安全感に関連した理論的な概念
アタッチメントとコンテインメントの適用――メイヤーの『ケアの中核』
家族と拡大家族のリズム
ケアリングの文化的・精神的リズム
まとめ
事例を振り返って
実践に向けた考え方
第3章 養育:ケア感覚
事例
はじめに
ケアの倫理
愛情と適切な関係性
ふれあい
食事
衣服
まとめ
事例を振り返って
実践に向けた考え方
第4章 健康:ウェルビーイングの感覚
事例
はじめに
インケアの子どもの健康ニーズ
インケアの子どもたちの社会環境
健康の不平等
近代世界に生きる
アディクション(依存症)
アディクションが子どもと家族へ及ぼす影響
問題解決能力のギャップ
ウェルビーイング
生活場面でのアプローチ
健康的な職員を支える
まとめ
事例を振り返って
実践に向けた考え方
第5章 達成と楽しみ:広い意味での教育
事例
はじめに
教育の性質
社会的養護のもとで暮らす子どもに対する教育
幸福の性質
教育と幸福の橋渡し
広い意味での教育
教育的機会に富むレジデンシャル・チャイルドケア
創造性
教師とケアするひとの役割
ユーモア
まとめ
事例を振り返って
実践に向けた考え方
第6章 アクティビティ:目的感
事例
はじめに
遊びの重要性
遊びとアクティビティの種類
目的意識を持ったアクティビティの利点
適切な水準にアクティビティを調整する
時間、空間、アクティビティ
アクティビティの調整
アクティビティとリスク
「体験の手配者(experience arrangers)」としての大人
関係性――コモン・サード(共通の第三項)
まとめ
事例を振り返って
実践に向けた考え方
第7章 尊重と責任:シティズンシップ(市民性)の概念
事例
はじめに
背景
ルールと権利を超えて
尊重の文化を発展させる
衝突への対応
身体拘束
尊重を学ぶ
責任を学ぶ
まとめ
事例を振り返って
実践に向けた考え方
第8章 貢献:寛容な精神を育む
事例
はじめに
利他主義と共感
寛容を妨げるもの
ケアの倫理からの寛容さへのアプローチ
賃金労働における寛容と感謝
精神の寛容さ
他文化における寛容の見解
職員の親切
子ども・若者集団のなかの親切
まとめ
事例を振り返って
実践に向けた考え方
第9章 包摂:コミュニティ感覚
事例
はじめに
排除の原因
子どもの権利
参加
ソーシャルワーク上の決定への子どもの関与
良好な関係の重要性
ソーシャルキャピタル(社会関係資本)
まとめ
事例を振り返って
実践に向けた考え方
第10章 結論
参考文献
監訳者あとがきと解説
著者・監訳者・訳者紹介
前書きなど
序文
今日、施設での集団養育に関する本の出版には、相当な勇気が求められる。レジデンシャルケア〔施設養育〕が、測定可能なプログラム結果を重視し、近年のエビデンスに基づいた臨床的な転換を迎えているなかで、それとは異なる立場を描きだすには、ある種の“現実主義者による理想主義”が必要になる。レジデンシャルケアは、OECD(経済協力開発機構)諸国のなかで非難に曝されている。私たちが共に暮らしている最も傷ついた子ども・若者のために存在するこのケアは、「コストがかかる」「効果的ではない」と叫ばれている。そして、良き家庭というほぼ一般化した価値観のもとでは、違反的環境とも見なされている。レジデンシャルケアに含まれるものおよびレジデンシャルケア自体に対して向けられた批判は、全てが妥当ではないといい難い。「多くのレジデンシャルケアが全く若者やその家族の助けにならない」というのはその通りであり、「事態を悪くしてしまう場合もある」というのもその通りだろう。「支援計画のなかに家族の価値を重視する基本概念がどこにも見当たらない」というのもその通りである。遥か昔から多くの若者たちが施設の環境下で育ってきたが、施設の規則は抑圧的であるとされ、順応・服従・統制の実態が否定的に論じられてきた。しかし、これらはレジデンシャルケアの物語のほんの一部であり、もっと興味深い話や希望に満ちた話が語られることはめったにない。
(…後略…)