目次
謝辞
はしがき
序章
水子供養の歴史
現代の枠組み
第一章 水子供養以前における生殖の儀式化
江戸期における妊娠および出産の儀式化
出産の儀式化における仏教の守護者の役割
江戸期における宗教と子堕ろしと性文化
産婆としてのみき
国家による妊娠と出産の脱儀式化
戦後における妊娠と出産の脱儀式化の完了
まとめ
第二章 水子供養の実践と中絶の本質の変容
優生保護法の施行
戦後の中絶の三期区分
戦後初期(一九四五‐五五年)
高度経済成長期(一九五六‐七五年)
一九七六年から現在まで――一〇代と中絶
生長の家による中絶反対運動
マスコミにおける「水子」
水子供養の実践
まとめ
第三章 現代の性文化における中絶
はじめに
事例と代表性との見極め
第一節
第二節
まとめ
第四章 水子供養の担い手
第一節 霊能者の水子供養実践
慈恩寺――独立した仏教霊能者と水子供養
水子とは誰か、そして彼らは何を望んでいるのか
大規模な水子供養――圓満院
水子供養大法要
圓満院の信者の体験談
新宗教・辯天宗の水子供養
第二節 仏教僧侶と水子供養
まとめ
第五章 四つの地域における水子供養
現地調査の概要・目的・方法
調査地の選定
地域的なレベルでの解釈とマクロなレベルでの解釈
水子供養における地域性
男性の関与
神社における水子供養
修験道の寺および場所における水子供養
まとめ
結論
補遺1 日本仏教各宗派における水子供養の様式
補遺2 岩手県遠野市について
本書の意義
監訳者あとがき
文献一覧
前書きなど
監訳者あとがき
ヘレン・ハーデカー教授(以下、敬称略)の著書Marketing the Menacing Fetus in Japan(直訳すると『日本における祟る胎児の商業化』)は、一九九七年にUniversity of California Press から刊行されたものです。すでに初版から二〇年もの時を経ており、この間、ジェンダーの視点から水子供養を検討する論文は国内外でいくつも発表されてきました。しかし、本書のようにジェンダーの視点から学際的かつ徹底的に水子供養を論じた研究書は他に見当たらず、水子供養がいかに現代の私たちに影響を与えているかを知るためにも、本書の内容は今もなおたいへん興味深いものです。共訳者と一緒に遅ればせながらも翻訳刊行することを企画したのも、私たち自身がこの本から多くのことを学べたからに他なりません。また、一九九〇年代に著者が行った現地調査やインタビューの数々、集積された数多くのマスコミ報道は、当時の水子供養の実態の一部を生き生きと描き出しており、今になっては入手しにくい研究資料の宝庫としても、本書は貴重な一冊になるはずです。
(…後略…)