目次
第1章 不正義と闘う人たち
1、超生違法(一人っ子政策に違反)
2、絶望無助(誰に訴えたらいいのか)
3、神秘的犬(しわ寄せは動物たちに)
第2章 性革命と多様性
1、意識革命(性意識に革命が起きた)
2、性工作者(セックスワーカーの実態)
3、裸婚主義(変わりゆく結婚観)
4、同性恋者(性的マイノリティを生きる)
第3章 嫌いだけど好きな日本
1、日本鬼子(抗日映画の日本人俳優)
2、宣揚愛国(反日はビジネス)
3、政冷文熱(日本文化は大好き)
4、知道日本(日本を知る)
5、日本図書(嫌中本も前向きに)
第4章 女性は天の半分を支える
1、家庭暴力(家庭内暴力に立ち上がる)
2、中国婦女(気がつけば夫は寝ている)
3、中国大媽(恐るべしおばちゃんパワー)
第5章 頑張る子どもたち
1、有権有銭(カネは権力についてくる)
2、精英教育(国家的なエリート教育)
3、日本将棋(政治なんて気にしない)
4、背水一戦(受験戦争を勝ち抜く)
5、留守児童(出稼ぎ者の親と離れて)
第6章 成長の底辺を支えて
1、蟻族之夢(高学歴でも貧困層)
2、廃城悲話(ごみの街に生きる)
3、人力資源(出稼ぎ労働者の苦境)
4、未富先老(豊かになる前に老いて)
5、癌症旅館(病院はパンク状態)
6、就業困難(中国の就活も大変)
第7章 庶民生活の不安と不満
1、空気戦争(深刻化する大気汚染)
2、食為民天(何を食べたら安全なのか)
3、天価住宅(天に届くほど高価な家)
4、最後的家(死ぬのも楽ではない)
5、内外価差(中国の物価は高い)
第8章 すべての道は政治に通じる
1、亡党亡国(腐敗で党も国も滅亡する)
2、裸体官員(税金をむさぼる者たち)
3、反腐風暴(ぜいたく品バブルの崩壊)
4、人治国家(遠い法治への道)
第9章 都市生活の光と影
1、睡城居民(ベッドタウンの通勤苦)
2、公共利益(地下鉄の値上げ論争)
3、医療暴力(最も危険な職業)
4、自由股民(株式投資の先は闇)
5、富豪消費(高級車の愛好家たち)
第10章 憧れと反発と―海外と中国
1、韓流之風(中国の韓流ブーム)
2、地下教会(経済発展の虚しさを埋めて)
3、毒品犯罪(深刻化する麻薬犯罪)
4、中港関係(大陸と香港の距離感)
あとがき
前書きなど
あとがき
(…前略…)
急速な経済成長を経て巨大な変貌を遂げた中国は国際報道の大きな焦点の一つだ。駐在する日本人記者はもちろん客観的で事実に基づく報道を心掛けている。一方で、領土問題など日本と中国は種々の問題を抱え、もともとの政治体制も異なる。近年は、摩擦が積み重なって、日中両国民の互いに対する好感度が大きく低下していることは、複数の国際的な世論調査が裏付けている。
それは報道だけのせいだ、などとは思っていない。ただ、とげとげしさを増す日中関係の中で、等身大の相手を見る意欲を失ってしまったのではないか。「尖閣」「暴動」「歴史認識」「愛国」といった言葉が先行し、実際の相手のことはよく分からない。自分と似たような生活を、相手の中に想像し、見いだすことが困難になっているのではないか。
まずは、相手の状況を知ることだろう。普通の人々の悩みや希望が、国によってそれほど違うことはないはずだ。子どもの将来を思う親の気持ちが、未来に向かって進もうとする若者の夢が、日本と中国でそれほど異なるわけがない。中国の一般市民の声を通し、この本では、そのことを伝えたかった。
本書は2013年9月から約2年間、共同通信社が47回にわたって配信した「北京スケッチ」に加筆、修正した原稿をまとめたものである。併用写真は、中国総局のカメラマンである矢辺拓郎、福原健三郎、孫鵬の各氏(肩書は当時)が撮影した。登場人物の年齢などは取材時のままとなっているが、新たな事実関係や為替レートは2017年11月時点に合わせた。
(…後略…)