目次
はじめに
地図
スロヴェニア基礎データ
Ⅰ スロヴェニアという国
第1章 スロヴェニアはどんな国?――存在感のある小国
第2章 シンボル――スロヴェニアの国旗、国章、国歌
第3章 カルスト地方――地上と地下に広がる異形の世界
【コラム1】スロヴェニア産の白馬――リピッツァナー種
第4章 アルプス――豊かさをもたらす厳しい自然との共存
【コラム2】トリグラウ山――スロヴェニアのシンボル
【コラム3】スロヴェニアの温泉
Ⅱ 歴史
第5章 中世のスロヴェニア――農民の面前で即位する統治者の伝統
第6章 近代スロヴェニア民族の成立――「イリリア」の名の下に
第7章 ハプスブルク帝国統治下のスロヴェニア人――「統一スロヴェニア」に向けて
第8章 第一次世界大戦中のスロヴェニア――ソチャ前線での戦いからユーゴ王国まで
第9章 戦間期のスロヴェニア――南スラヴ統一国家の中で
第10章 スロヴェニアと第二次世界大戦――分割と「内戦」
第11章 社会主義ユーゴスラヴィア時代――ユーゴスラヴィアの先進地域
第12章 独立への過程と「十日戦争」――ユーゴスラヴィアからスロヴェニアへ
【コラム4】アンゲラ・ヴォデ――反骨の精神を貫いた女性
Ⅲ 多様な地域
第13章 首都リュブリャナ――竜伝説の市
第14章 マリボルとシュタイエルスカ――緑の丘陵とワインの郷
第15章 アドリア海とプリモルスカ(沿海地方)――地中海的スロヴェニア
【コラム5】ピラン塩田
第16章 ノヴァ・ゴリツァ――対立を乗り越えた国境の町
第17章 プレクムリェ地方――ムラ川の向こう側のスロヴェニア
第18章 ドレンスカ地方とノヴォ・メスト――シトゥラの町
第19章 ベラ・クライナ――スロヴェニアの白い異境
第20章 ブレット湖とボヒン湖――頑固さが守るスロヴェニア山岳地方の自然と生活
Ⅳ マイノリティとディアスポラ
第21章 スロヴェニアのナショナル・マイノリティ――イタリア人とハンガリー人
第22章 今はなきマイノリティ――ドイツ系住民
第23章 「見えざるマイノリティ」――旧ユーゴスラヴィア出身者
第24章 スロヴェニアのロマ――権利保障への道
第25章 ケルンテンのスロヴェニア人――民族意識と生活環境
第26章 イタリアのスロヴェニア人――「国境の向こう側の人」
第27章 アメリカのスロヴェニア人――アダミックからメラニアまで
第28章 アルゼンチンのスロヴェニア人――反ファシズムからの脱出と政治難民
Ⅴ 政治・経済・国際関係
第29章 政治――小党分立による連立政権
第30章 経済――残る経済危機の傷跡
第31章 EUの中のスロヴェニア――旧ユーゴ諸国の優等生として
第32章 旧ユーゴスラヴィア諸国との関係――不可欠な地域協力
第33章 国境問題――ピラン湾をめぐって
第34章 観光業とその成長――自然と景観、文化・歴史の魅力
第35章 環境保護――全国環境保護プログラムによる近年の前進と課題
【コラム6】クルシュコ原子力発電所――共同所有の原発の過去と現在
Ⅵ 社会・生活
第36章 食文化――グローバル化も悪くない
【コラム7】「国民的飲み物?」――ラデンスカ、コクタ
第37章 ワイン文化――「量」より「質」
第38章 ジェンダー――他者を認め、自分を知る
第39章 家族のかたち――伝統と多様性
第40章 宗教――国家宗教から多様な信仰の形態へ
第41章 学校教育――母語による教育がなしとげた飛躍
第42章 余暇とスロヴェニア人――「豊かな自然」がキーワード
第43章 名前と姓――起源の多様性
第44章 メディア――政治的・経済的影響による変遷とその現状
Ⅶ 言語・文化
第45章 スロヴェニア語――背景と特徴
第46章 文学①――プレシェレンと詩人たち
第47章 文学②――現代スロヴェニア文学
【コラム8】ジジェク
第48章 映画――多様化する社会に対応して
第49章 音楽――生活の中にある、なんとも自己中心的な音の世界
第50章 建築――スロヴェニアが生んだ鬼才ヨジェ・プレチュニク
第51章 近代美術――19世紀末から第二次世界大戦後まで
【コラム9】リュブリャナ国際版画ビエンナーレ
Ⅷ スポーツ
第52章 スキー競技――歴史と自然に根差したナショナルスポーツ
第53章 サッカー――旧ユーゴ出身選手の活躍
第54章 スロウェニアのアルヒニスム――アルプスへの愛と情熱
第55章 球技大国――バスケットボールなど
Ⅸ 日本・スロヴェニア関係
第56章 日本とスロヴェニアとの交流史概観――近藤常子に始まる100年の歩み
第57章 第一次世界大戦期のスロヴェニア人戦争捕虜――ヨーロッパの戦場から日本まで
第58章 日本にやってきたスロヴェニア人――様々な出会い
第59章 スロヴェニアにおける日本研究および日本語教育――好奇心とアカデミズムの接点
第60章 知られざる技術立国――進みつつある日本との経済関係強化
スロヴェニアについてさらに知りたい人のための文献案内
前書きなど
はじめに
スロヴェニアの概説を目的とした本書の刊行は、偶然にもスロヴェニアと日本の国交樹立25周年と重なっている。この節目の時期に、60章からなる本書でスロヴェニアの山からスポーツまで、様々な角度から分かりやすく紹介する機会を得たことはこの上ない喜びである。この本の編集に当たって、日本とスロヴェニアの各分野の専門家のほか、スロヴェニアで生活体験のある日本人の方などに執筆者として協力していただいた。
スロヴェニアは独立国家としては歴史が浅いだけに、日本での知名度はまだまだ低い。ある程度知られている分野と言えば、スキー、サッカーなど特にスポーツであろう。スポーツの分野では、日本との関係が活発で、長い歴史ももっている。一般的にはさほど知られていないが、美術の分野での交流はさらに歴史が古く、しかも活発である。音楽においてもスロヴェニアのオペラなど、この10年来、日本で紹介される機会があった。2000年代の半ば以降、スロヴェニアに日本大使館が設置されてからになるが、スロヴェニアを訪れる観光客が著しく増えているので、すでに現地を訪れた読者もいるだろう。
(…後略…)