目次
はじめに バルト海域――島々へのいざない
バルト海全図
第Ⅰ部 〈プロローグ〉島々からみたバルト海域の歴史
1 バイキングとハンザ商人、騎士団――古代・中世のバルト海域を彩った人々
2 スウェーデンからロシアへ――バルト海域の覇者の下で
3 国民国家と世界大戦――嵐の時代のバルト海域
4 冷戦、そして冷戦後とヨーロッパ統合の深化・拡大の中で――バルト海域の新たな時代
第Ⅱ部 サーレマー島――ネズの木の島
5 司教の城
6 騎士団との攻防
7 島の自然
8 占領と戦争と
9 国境の島からリゾートの島へ
[コラム1]3度名前が変わった町
第Ⅲ部 ヒーウマー島――白鳥の島
10 「1日の島」ダゲー
11 閉ざされた島の「伝説」
12 中世の灯台
13 島民気質
14 ドイツとの縁
[コラム2]サマー・ピープル
第Ⅳ部 オーランド諸島――架け橋の群島
15 船とともに歩んできた島々
16 スウェーデンとの関係
17 熊の前足
18 バルト海の架け橋
19 変化の中で
[コラム3]ルーツは島に
第Ⅴ部 ゴットランド島――石と花の島
20 商人たちの盛衰
21 教会の島
22 石の墓、石の砦
23 海賊群像
24 船出した人々
[コラム4]よみがえった鉄道
第Ⅵ部 エーランド島――陽光の島
25 城を造った王たち
26 北と南
27 遺跡三態
28 風車のある風景
29 王家の保養地
[コラム5]島を彩る伝説
第Ⅶ部 ボーンホルム島――風の島
30 円形教会
31 古城と統治者たち
32 風景と画家
33 未来への摸索
34 戦争と島
[コラム6]住民の劇場
第Ⅷ部 リューゲン島――環の島
35 石段と白い崖の町
36 幻のリゾート
37 ラーン人
38 領主たちの望み
39 リゾートタウン点描
[コラム7]冷戦の遺構
40 〈エピローグ〉バルト7島の協力
おわりに
前書きなど
はじめに バルト海域――島々へのいざない
(…前略…)
バルト7島を概観した後は、本書の構成について触れておきたい。
本書は、バルト海に浮かぶ7つの島、バルト7島に焦点を当て、そこへの旅を通じて、いわばバルト海という舞台そのものから「海域」としてのバルト海をみてみようとするものである。そこで、最初に、バイキングやハンザ商人、北方十字軍の時代から現代にいたるまでの島々からみたバルト海域の歴史を大まかにたどってみることにしたい。これは、島々が置かれた時代状況をつかむための全体の見取り図といったところである。
全体の見取り図としての歴史的背景を踏まえたら、いよいよ、サーレマー島以下、バルト7島の現地を実際に訪ねる旅に出てみよう。それぞれ個性豊かなこれらの島々を歩きながら、歴史という時間を縦糸に、訪ね旅した現地の空間を横糸に、固有の空間でありながら海に向かって開かれてきた島々の姿を、モザイク的に描き出していくことにする。そして最後に、冷戦終結の流れの中で始まったバルト7島の国境を越えた協力について、そこに携わった現場の人々の声に基づきながら紹介することにしたい。
本書全体を通じて、バルト海に浮かぶ7つの島々の姿、そしてそこから「本土」からみたのとは必ずしも同じではない、バルト海の「海域」としてのありようを感じとっていただければ幸いである。