目次
序章 今なぜ「ネグレクト」なのか
1 ネグレクト対応の歴史
2 ネグレクトの「発見」
3 子ども虐待の呼び名と分類
4 ネグレクト支援の変遷
5 ネグレクト対応の困難さの構造的な課題
6 本書の構成
第1部 理論編
第1章 ネグレクト対応の現状
1 各機関のネグレクトへの対応状況
2 死亡事例からみえるネグレクトの実態
第2章 ネグレクトの諸相
1 年齢による子どもの状態や家族状況の変化
2 ネグレクトと貧困の関係
3 ネグレクトと世代間連鎖
4 ネグレクトにおける病院未受診
5 ネグレクト事例における援助拒否と引きこもり(孤立)
第3章 海外における定義の変遷と発生率
1 海外の先行研究から
2 全米虐待発生率調査
3 NIS-4にみられるアメリカのネグレクト状況
第4章 ネグレクトのアセスメント
1 ネグレクト支援のための多軸診断
2 ネグレクトアセスメントの先行的な取り組み――アメリカのガイドラインから
3 子どもネグレクトアセスメントスケール(NASC-R)
第5章 子どもへの影響と心理的治療・支援
1 ネグレクトが子どもに与える影響
2 ネグレクト児への心理治療と心理的支援
第2部 実践編
第6章 ネグレクトの支援類型
1 多岐にわたるネグレクトの支援機関
2 支援対象のレベル
3 親のストレングス(プラス面)
4 支援サービス
5 個別ケース検討会議の重要性
6 子どもの年齢別にみた支援のポイント
第7章 市区町村における支援
1 関係機関のネットワークで支援する
2 事例でみる支援の実際
3 支援からみえるさまざまな課題
第8章 児童相談所における支援
1 児童相談所の支援の流れ
2 支援の実態
3 ネグレクトを潜在化させず顕在化させる仕組み
4 横須賀市児童相談所の取り組みからいえること
5 市区町村の連携による在宅支援の可能性
6 在宅志向の支援と市区町村との連携事例
7 児童相談所が市区町村といっしょに取り組む効果
第9章 保健師による支援
1 保健師が支援するネグレクト
2 ネグレクトの発見・把握
3 保健師の支援の基本
4 事例でみる支援の実際
第10章 学校における支援
1 学校ではどのようにネグレクトにかかわっているか
2 事例でみる支援の実際
第11章 児童養護施設における支援
1 児童養護施設とは
2 シオン園の概要
3 入所者の特徴
4 ネグレクトの意味
5 ネグレクトに至る家族の特徴
6 事例でみる支援の実際
第12章 情緒障害児短期治療施設における支援
1 情緒障害児短期治療施設とは
2 大村椿の森学園の概要
3 事例でみる支援の実際
第13章 病院における支援
1 病院だからこそできるかかわり
2 済生会福岡総合病院の概要
3 ネグレクトに関連する診療科:産婦人科、小児科の特徴
4 事例でみる支援の実際
第14章 保育所における支援
1 保育所とは
2 保育所保育指針による虐待対応の考え方
3 医療機関と保育園(幼稚園・学校)連携マニュアル
4 事例でみる支援の実際
第15章 児童自立支援施設における支援
1 非行と虐待
2 児童自立支援施設とネグレクト
3 事例でみる支援の実際
4 退園後の地域における支援体制構築の必要性
第16章 母子生活支援施設における支援
1 母子生活支援施設とは
2 施設で出会うネグレクトの特徴
3 事例でみる支援の実際
第17章 民間支援団体における支援
1 ストリート・プロジェクトとは
2 ストプロの特徴
3 ストプロにやってくる子どもたち
おわりに
前書きなど
序章 今なぜ「ネグレクト」なのか
(…前略…)
6 本書の構成
本書は、筆者に加え、加藤曜子氏と三上邦彦氏の3者で編集を担当している。加藤氏は市区町村でのネグレクト支援に関する研究を行い(加藤2013)、三上氏は早い時期からネグレクトのアセスメントシートを提唱(三上2004)し海外の動向にも詳しいなど、お二人とも日本におけるネグレクト研究の第一人者である。そして加藤氏の研究に私と三上氏が加わったことがこの本が成立したきっかけである。
この編集者3人で得意分野を分担したことに加え、ネグレクトされた子どもへの心理治療で博士論文を書かれた坪井裕子氏に、ネグレクトされた子どもの心理的な影響と心理治療について特別に執筆をお願いした。
3人の編集者の共通の目的は、ネグレクトの実態や概念を明らかにし、適切な支援方法の確立を図ることである。そのため本書の後半は、ネグレクトへの支援にさまざまな場面で直接かかわる現場の方々に、その施設や機関で出会うネグレクト事例や支援方法の特徴を概括していただくと同時に、事例を挙げて具体的な支援状況について記載していただいた。
もちろん事例については個人を特定できる情報を削除や変更して、個人情報の保護に配慮している。
以上のような構成を持つ本書であるが、各章や節はそれぞれ独立した内容である。そのため読者の方は、気になる部分から読んでいただいてかまわない。