目次
序文 女性という生き物
第一部 今なお続く固定観念
第1章 女性の頭
第2章 女性の危険性について
第3章 暴力と女性について――不変の枠組み、永続的な思考法、不安定な内容
第4章 シモーヌ・ド・ボーヴォワールの盲点 新石器革命後に……
第二部 批判
第1章 母性の特権と男性支配
第2章 ジェンダーをめぐる諸問題と女性の権利
第3章 「今日の混迷」における男女の差異
第三部 解決策と障壁
第1章 可能で考えうるヒトの産生
第2章 避妊 男性的なものと女性的なものという二つのカテゴリーの新たな関係に向けて
第3章 民主主義は女性を女性として代表すべきだろうか
第4章 障害と障壁 女性の身体の利用について
第5章 障害と障壁 母性・職業・家庭
結論
原注
文献
訳者あとがき
前書きなど
訳者あとがき
本書は、二〇〇二年にオディル・ジャコブ社から出版されたMasculin / Feminin II. Dissoudre la hierarchieの全訳である。著者のフランソワーズ・エリチエ Franoise Hritier(一九三三年‐)は、クロード・レヴィ=ストロースの後継者として一九八二年にコレージュ・ド・フランスの教授に就任したフランスの代表的な構造主義人類学者の一人で、とくにブルキナファソのサモ族の親族体系の分析を専門とし、人類学の研究に身体やそこから分泌される体液の問題を導入したことで知られる。主要著書には『親族の実践 L'Exercice de la parente』(ガリマール社、一九八一年)、『二人の姉妹とその母 近親婚の人類学 Les Deux Soeurs et leur mere : anthropologie de l'inceste』(オディル・ジャコブ社、一九九四年)、『身体と情動 Corps et affects』(共編、オディル・ジャコブ社、二〇〇四年)などがある。また、学識経験者として、エイズや生殖補助医療などの社会問題にも積極的に関与し、その発言はつねに注目を集めている。
(…中略…)
エリチエが男性的なものと女性的なものというテーマに関心をもち、この分野での研究成果を発表するようになったのは一九七〇年代になってからであるが、そこでの論考を一貫した総体としてまとめたのが、一九九六年に刊行されたMasculin / Feminin. La pensee de la difference(日本語訳『男性的なもの/女性的なものⅠ 差異の思考』近刊)で、本書の第Ⅰ巻にあたる。第Ⅰ巻でエリチエは、現在でも相変わらず世界のあらゆる場所で認められる男性支配について、その理由を人類学の手法で、つまり、それぞれの文化や社会に固有の表象の全体像の中から不変の要素を探し出すことによって理解しようと努めた。こうして彼女は、人間集団ごとにさまざまな形態を取るものの、まるで当然かつ自然だといわんばかりに恒常的に現れる男性的なものと女性的なものの序列的な概念関係に注目し、これを「男女の示差的原初価」と名付ける。そして、それが社会というものの源泉においてすでにそこにあったことを示したのである。
(…後略…)