目次
はじめに
第一章 信仰の原点
1 自然が信仰の原点
2 静穏(サキーナ)について
3 アッラーの覚知法
4 イスラーム以外でも
5 信仰の意義とその広狭
第二章 信仰箇条
1 イスラームの信仰箇条
2 アッラーの単一性(タウヒード)
3 並置(シルク)について
4 信仰の功徳
第三章 精神生活論
1 安心
2 安寧
3 幸福
4 愛情と慈悲
5 生きがい
6 希望と悲しさ
7 まとめ
第四章 倫理道徳論
1 誠実と
2 正義と不正
3 禁欲と強欲
4 感謝と恨み
5 忍耐・寛容と怒り・狭量
6 信頼と見せかけ
7 悔悟・謙譲と慢心・傲慢
8 慈愛・慈悲と妬み
9 嘉し・嫌悪・盲信
第五章 信仰体験論
1 預言者ムハンマドの姿
2 教友の姿
3 禁欲主義の流れ
4 体験の記録
5 巡礼記など
第六章 信仰論争の系譜
1 諸派の形成
2 近代以降の原理主義的な動向
3 近代西欧文明との対峙
付録一 信仰と学問について
付録二 イスラームにおける「聖」の概念
付録三 「魂」と「精神」について
おわりに
注記
参考文献
索引
前書きなど
はじめに
イスラームについて多数の出版物が出されている。その多くは政治的、時事的な内容であるが、他にも経済、文化などを扱ったものもあり、漏れなく幾多の分野をカバーしているようだ。しかし宗教としてのイスラームの天守閣に相当する信仰そのものを扱っているのは、残念ながら僅少であるといわなければならない。
そこで筆者の仕事はもっぱら信仰の世界を探訪し、その普及のため平易なかたちでその内容を提示することに自然と特化されるようになった。執筆はもちろん、いろいろの機会を捉えて話をする際にもそのような問題意識を投げかけ、あるいは議論することとなった。
(…中略…)
本書は簡潔にまとめられた概説書であるが、本書を手にされる方には、一方で信仰内容の広がる様と、他方でその世界が一点にまとめ上げられて総合的な体系をなしている様子を、納得し堪能していただければ幸いである。そして心の中に沈潜する信仰世界のナビゲーターとして通読していただきたい。
またそうすることで、存在世界の頂点に一気に達する直観力により達成される信仰心が、いかに清純で熾烈なものであるかということに少しでも触れ、イスラーム信仰の極意を味わっていただければと願っている。それは世界最大の信徒数となりつつある宗教の内実を会得するという意味で、今後の世界を語るのに不可欠の素養にもなるであろう。
(…後略…)