目次
日本語版 序(国立教育政策研究所 国際研究・協力部長:大野彰子)
序文(経済協力開発機構(OECD)教育・スキル局長:アンドレアス・シュライヒャー)
要旨
本書の利用にあたって
第1章 近年,生徒によるコンピュータの利用はどのように変化しているか
はじめに
第1節 家庭での生徒によるICTへのアクセス
1.1 家庭用コンピュータへのアクセス
1.2 家庭でのインターネットアクセス
1.3 生徒のコンピュータ利用経験
1.3.1 コンピュータを最初に利用した年齢
1.3.2 インターネットを最初に利用した年齢
第2節 学校以外の場所における生徒のコンピュータとインターネットの利用
2.1 生徒がインターネットに費やす時間
2.2 学校以外の場所における生徒のICT関連活動
2.2.1 余暇でのコンピュータの利用
第3節 学校以外の場所における生徒のインターネット利用が,生徒の学校への適応度や学校との関わりとどのように関係しているか
第2章 情報通信技術(ICT)を指導と学習に取り入れる
はじめに
第1節 学校での生徒によるコンピュータの利用
1.1 学校でのインターネットの利用
1.2 数学の授業でのコンピュータの利用
1.3 学校の勉強のための家庭でのコンピュータの利用
第2節 指導と学習にICTを取り入れる上での推進力と障害
2.1 学校のICTインフラ
2.1.1 学校でのモバイルコンピュータの増加
2.2 学校のインフラの傾向はICTの利用とどのように関係しているのか
2.3 カリキュラムと授業のための学校でのICTの利用
第3節 ICTの利用は数学の指導実践にどのように関係しているのか
第3章 2012年コンピュータ使用型調査の主な結果
はじめに
第1節 筆記型調査とコンピュータ使用型調査の類似と相違
1.1 読解力におけるコンピュータ使用型調査と筆記型調査の相違
1.2 数学的リテラシーにおけるコンピュータ使用型調査と筆記型調査の相違
1.3 コンピュータ使用型調査と筆記型調査:調査設計と実施方法における相違
第2節 デジタル読解力における生徒の得点
2.1 デジタル読解力の平均得点
2.2 デジタル読解力の平均得点における経年変化
2.3 デジタル読解力における生徒の習熟度レベルの違い
2.3.1 デジタル読解力における成績上位層
2.3.2 デジタル読解力における成績下位層
2.3.3 デジタル読解力の習熟度レベルの向上
2.4 デジタル読解力における得点分布の上位層と下位層の経年変化
第3節 筆記型調査読解力とデジタル読解力との得点の差
3.1 デジタル読解力と筆記型調査読解力の成績上位層
3.2 デジタル読解力と筆記型調査読解力の成績下位層
第4節 コンピュータ使用型数学的リテラシーにおける生徒の得点
4.1 コンピュータ使用型数学的リテラシーにおける平均得点
第5節 数学的リテラシーの問題を解くためのICTツールの利用に関連する得点の差
第4章 デジタル読解力におけるナビゲーションの重要性:考えてからクリックする
はじめに
第1節 ナビゲーションの成功と失敗
1.1 ナビゲーションはデジタル読解力の課題における成功とどのように関連しているのか
第2節 PISA調査のデジタル読解力における生徒のナビゲーション行動
2.1 ナビゲーション行動を説明するために用いられた生徒レベルの指標
2.2 各国における生徒の典型的なナビゲーション行動
2.2.1 全体的なブラウジング活動
2.2.2 課題指向型ブラウジング
第3節 デジタル読解力の成績と生徒のナビゲーション行動の関係
第5章 デジタル技能の不平等:格差を埋める
はじめに
第1節 一つの格差か,多くの格差か:デジタルアクセス,デジタル利用,デジタル生産
第2節 社会経済的背景に関連したアクセスと経験の格差
2.1 コンピュータとインターネットへのアクセスにおける社会経済的な違い
2.2 早期のコンピュータ利用経験における社会経済的な違いと男女差
2.3 インターネットへのアクセスにおける郡部と都市部の差
2.4 コンピュータとインターネットの利用機会と学校の役割
第3節 社会経済的背景と関連したコンピュータ利用の差
3.1 家庭におけるコンピュータの利用
3.2 学校におけるコンピュータの利用
第4節 コンピュータ使用型調査の得点は,どの程度社会経済的背景と生徒のコンピュータへの馴染みに関連するか
4.1 社会経済的背景に関連する得点の格差
4.2 デジタル読解力の得点と社会経済的背景との関連性の経年変化
第6章 コンピュータは生徒の能力とどのように関係しているのか
はじめに
第1節 テクノロジー投資とトレードオフ
第2節 学習の成果は各国の学校のICTリソースへの投資とどのように関係しているのか
第3節 生徒による学校のためのICT利用は得点とどのように関係しているのか
3.1 学校でのコンピュータ利用
3.2 数学の授業におけるコンピュータ利用
3.3 学校以外の場所における学校の勉強のためのコンピュータ利用
第4節 家庭における余暇でのコンピュータ利用とデジタル読解力
第5節 コンピュータ利用が生徒の得点へ及ぼす影響についての研究上の証拠
第7章 ログファイルデータを用いて,何がPISA調査の成績を左右するのかを理解する(事例研究)
はじめに
第1節 大問「スラン」に関する説明
第2節 生徒はどれだけ速く,正確に読むことができるか
第3節 生徒は課題に対して努力と時間をどのように配分するのか
第4節 簡単なウェブサイトを生徒はどのようにページをたどるのか
4.1 大問「スラン」の課題2におけるナビゲーションの成功と失敗
第5節 コンピュータ使用型調査に対して事例研究が意味するもの
第8章 教育政策と実践に対してデジタルテクノロジーが意味するもの
はじめに
第1節 多くの場合,デジタルツールは基本的な技能にも高度な技能にも補完的である
第2節 デジタル環境で必要とされる基礎技能の指導
第3節 デジタル世界での機会均等を促進するための技能への投資
第4節 インターネットの利用により起こり得る有害な側面に対する意識の向上
第5節 教師の研修など,教室でのICT利用に資する一貫した計画の立案
第6節 テクノロジーに対する今後の投資の有効性を高めるために過去の経験から学ぶ
コラム・図・表の一覧
――要 旨
表0.1 家庭におけるICT機器とインターネット利用の概要
表0.2 学校におけるICT機器と利用の概要
表0.3 コンピュータ使用型調査の成績の概要
表0.4 デジタル読解力:生徒のナビゲーションの概要
表0.5 ICTへのアクセスと利用における社会経済的背景の影響の概要
表0.6 学校におけるコンピュータ利用とコンピュータ使用型調査の得点の関係の概要
――第1章 近年,生徒によるコンピュータの利用はどのように変化しているか
コラム1.1 生徒のICT習熟度に関する情報の収集方法
コラム1.2 ネットいじめ
図1.1 家庭でのコンピュータへのアクセスにおける2009年と2012年の間の差
図1.2 家庭でのインターネットのアクセスにおける2009年と2012年の間の差
図1.3 コンピュータを最初に利用した年齢
図1.4 インターネットを最初に利用した年齢
図1.5 学校の内外でインターネットに費やす時間
図1.6 余暇でのICT利用
図1.7 娯楽のためのICT利用における2009年と2012年の間の差
図1.8 生徒の学校への帰属意識:学校のある日に学校以外の場所でインターネットに費やす時間ごと
図1.9 学校に遅刻した生徒:学校のある日に学校以外の場所でインターネットに費やす時間ごと
――第2章 情報通信技術(ICT)を指導と学習に取り入れる
コラム2.1 様々な数学の問題への接触に関するPISA調査の測定
コラム2.2 PISA2012年調査における数学指導実践の指標
図2.1 学校でのICT利用
図2.2 学校でのICT利用における2009年と2012年の間の差
図2.3 学校におけるICT利用指標
図2.4 学校でコンピュータを利用する生徒の割合における2009年と2012年の間の差
図2.5 学校でのインターネット利用時間
図2.6 数学の授業でのコンピュータの利用
図2.7 数学の授業での生徒と教師のコンピュータ利用
図2.8 学校の勉強のための学校外でのICT利用
図2.9 学校の勉強のための学校外でのICT利用における2009年と2012年の間の差
図2.10 学校以外の場所における学校の勉強のためのICT利用指標
図2.11 学校の勉強のための学校外でのICT利用と学校でのICT利用との間の関係
図2.12 学校でコンピュータを利用できる生徒の割合についての2009年と2012年の間の差
図2.13 学校でインターネットにアクセスできる生徒の割合についての2009年と2012年の間の差
図2.14 学校のコンピュータ1台当たりの生徒数についての2009年と2012年の間の差
図2.15 インターネットに接続された学校のコンピュータの割合についての2009年と2012年の間の差
図2.16 デスクトップとノートパソコン又はタブレット型の区別による学校でのコンピュータ利用
図2.17 学校でのICT利用の変化と学校でのノートパソコンの利用の増加との関係
図2.18 数学の授業でのコンピュータ利用と様々な数学の問題への生徒の接触との関係
図2.19 数学の授業でのコンピュータ利用による指導実践と授業の雰囲気
図2.20 数学の授業でのコンピュータ利用による生徒に考えさせる活動と授業の雰囲気
図2.21 数学の授業でのコンピュータ利用と教師の行動との関係
――第3章 2012年コンピュータ使用型調査の主な結果
コラム3.1 国際コンピュータ・情報リテラシー調査(2013年)とPISA調査におけるデジタル読解力との関係
図3.1 デジタル読解力:平均得点の国際比較
図3.2 デジタル読解力:平均得点と順位の範囲
図3.3 デジタル読解力:2009年と2012年における平均得点
図3.4 デジタル読解力と筆記型調査読解力:2009年と2012年における平均得点の変化
図3.5 デジタル読解力の習熟度レベル
図3.6 デジタル読解力:2009年と2012年における成績上位層と成績下位層の割合
図3.7 デジタル読解力の相対的な得点
図3.8 デジタル読解力と筆記型調査読解力における成績上位層の重なり
図3.9 デジタル読解力と筆記型調査読解力における成績下位層の重なり
図3.10 コンピュータ使用型数学的リテラシー:平均得点の国際比較
図3.11 コンピュータ使用型数学的リテラシー:平均得点と順位の範囲
図3.12 コンピュータ使用型数学的リテラシー:解答にコンピュータ技能が必要・不必要な問題の結果
図3.13 コンピュータ使用型数学的リテラシー:解答にコンピュータ技能を必要とする問題の相対正答率
――第4章 デジタル読解力におけるナビゲーションの重要性:考えてからクリックする
コラム4.1 ナビゲーションの難易度の主な要因は何か
コラム4.2 期待されるナビゲーション経路からそれたときに生徒はどのように対応するか
図4.a デジタル読解力:ミスステップへの対応別の生徒の割合
図4.1 デジタル読解力:テキスト処理とナビゲーションの関係
図4.2 デジタル読解力:課題の成功とナビゲーションステップの量・質との関係
図4.3 デジタル読解力:難易度別,課題の成功とナビゲーションステップの量の関係
図4.4 デジタル読解力:難易度別,課題の成功とナビゲーションステップの質の関係
図4.5 デジタル読解力:全体的なブラウジング活動
図4.6 デジタル読解力:ブラウジング活動の量別の生徒の割合
図4.7 デジタル読解力:課題指向型ブラウジング
図4.8 デジタル読解力:ブラウジング活動の質別の生徒の割合
図4.9 デジタル読解力:各国の得点分散の説明率
図4.10 デジタル読解力:得点とナビゲーション行動の関係
――第5章 デジタル技能の不平等:格差を埋める
図5.1 家庭におけるコンピュータへのアクセスと生徒の社会経済的背景
図5.2 家庭におけるインターネットへのアクセスと生徒の社会経済的背景
図5.3 2009年と2012年の社会経済的背景別,家庭におけるコンピュータ及びインターネットへのアクセスの差
図5.4 生徒の社会経済的背景別,コンピュータの利用経験
図5.5 男女別のコンピュータの利用経験
図5.6 学校の社会経済的プロフィール別,学校における生徒用コンピュータ比率
図5.7 学校ではインターネットへアクセスするが,家庭ではアクセスしない生徒の割合
図5.8 生徒の社会経済的背景別,学校以外の場所における一般的なコンピュータの余暇活動
図5.9 デジタル読解力・コンピュータ使用型数学的リテラシーの得点と社会経済的背景の関連性の強さ
図5.10 コンピュータ使用型調査の得点・アナログスキル・社会経済的背景間の関連
図5.11 デジタル読解力の得点と社会経済的背景の関連性の経年変化
図5.12 2009年と2012年における「デジタル・アクセス・ディバイド」及び「デジタル読解力格差」の変化
――第6章 コンピュータは生徒の能力とどのように関係しているのか
コラム6.1 制度(国),学校,生徒レベルにおける得点,コンピュータアクセス及びコンピュータ利用との間にある関係を解釈すること
図6.1 生徒が利用できるコンピュータの台数と教育支出
図6.2 生徒の得点と学校でのコンピュータのアクセス又は利用との関係
図6.3 数学的リテラシーの得点と学校におけるコンピュータ台数の傾向
図6.4 読解力の得点と学校で頻繁に学校の勉強のためにインターネットを見る生徒の割合における傾向
図6.5 学校におけるICT利用指標別,生徒の読解力における技能
図6.6 学校でのコンピュータ利用の頻度とデジタル読解力技能
図6.7 数学の授業におけるコンピュータ利用指標別,コンピュータ使用型調査と筆記型調査の数学的リテラシーの得点
図6.8 数学の授業におけるコンピュータの利用とコンピュータ使用型数学的リテラシーの得点
図6.9 学校以外の場所における学校の勉強のためのICT利用指標別,読解力における生徒の技能
図6.10 学校の勉強のために学校以外の場所でコンピュータを利用する頻度とデジタル読解力技能
図6.11 学校以外の場所における余暇でのICT利用指標別,読解力における生徒の技能
図6.12 学校以外の場所における余暇でのICTを利用する頻度とデジタル読解力技能
――第7章 ログファイルデータを用いて,何がPISA調査の成績を左右するのかを理解する(事例研究)
コラム7.1 大問「スラン」における課題の概要
図7.1 大問「スラン」各課題の必要とされるテキスト処理と必要とされるナビゲーションの難易度
図7.2 大問「スラン」に関する問題の画面
図7.3 大問「スラン」正答数別,課題2における初期反応時間
図7.4 筆記型調査読解力における成績下位層と大問「スラン」課題2の反応時間の長さとの関係
図7.5 大問「スラン」正答数別,課題の所要時間
図7.6 生徒の粘り強さと成功
図7.7 「スラン」に関する問題のウェブサイト構造
図7.8 大問「スラン」のページコードと関連ページの一覧
図7.9 大問「スラン」課題2における行動のナビゲーション
図7.10 大問「スラン」課題2の成績による,ナビゲーションステップの質と量
図7.11 大問「スラン」課題2で失敗した生徒のナビゲーション行動
前書きなど
日本語版 序
本書は,生徒の学習到達度調査(PISA)の国際結果を受けて作成されたOECDの報告書『Students, Computers and Learning:MAKING THE CONNECTION』の日本語版です。PISA調査(Programme for International Student Assessement:ピザ)は日本を含む34か国が加盟する経済協力開発機構(OECD)が進める国際学力調査で,2013年12月に第5回目となる2012年調査の国際結果が公表されました。
PISA調査は,義務教育修了段階の15歳の生徒が,それまで身に付けてきた知識や技能を,実生活の様々な場面で直面する課題にどの程度活用できるかを測ることを目的として,読解力,数学的リテラシー,科学的リテラシーの3分野を対象に,2000年以降,3年ごとに実施されています。
2012年調査では,実生活におけるICTの活用がますます重要なものとなっていることから,国際オプションとして数学的リテラシー,読解力,問題解決能力の三つの分野について,コンピュータ使用型調査が実施され,日本もこれに参加しました。本書は,このコンピュータ使用型調査やICT質問紙の結果等に着目し,ICTの活用状況や学力との関係等に特化して分析したものです。
これからの子供たちには,情報や情報手段を主体的に選択し活用していくために必要な情報活用能力を育むことの重要性が高まっており,また,急速に深化するICT などの技術を使いこなす科学的素養を全ての子供たちに育んでいくことが重要であると指摘されています。
このような背景からか,『Students, Computers and Learning:MAKING THE CONNECTION』には,2015年9月の発表直後から新聞記事等に取り上げられるなどの反響があり,日本語版の刊行を期待する声が寄せられていました。刊行にあたり御協力いただいた関係の皆様に改めて感謝申し上げるとともに,本書を教育に携わる全ての関係者に御活用いただき,次世代の教育に向けた参考資料として活用いただければ幸いに存じます。
平成28年7月
国立教育政策研究所 国際研究・協力部長
OECD-PISA調査プロジェクトチーム総括責任者
大野彰子