目次
はじめに
第一章 人口減少は地方創生で解決可能か
加速する人口減少
自治体は消滅するか
地方都市と人口減少
政府による地方創生
まち・ひと・しごと創生本部とは
長期ビジョンと総合戦略の内容
自治体の対応
地方創生で人口問題は解決するか?
外国人の定住化という視点
第二章 多文化共生の変遷と多文化パワー
国際交流・協力の経験
姉妹都市交流
政府の関与
多文化共生の成り立ち
総務省の多文化共生への関与
「多文化共生推進プラン」への対応
多文化パワー
第三章 草の根の経験――外国人受け入れの現場から
フロンティア精神が支える許容力[池田誠(北海道国際交流センター事務局長)]
多文化共生社会を担う外国出身者コミュニティ[幕田順子(公益財団法人福島県国際交流協会)]
「人」を中心に、地域づくりからはじめる多文化共生[中村則明(公益財団法人とやま国際センター)]
多様性を生かしたまちづくりで外国人が活躍する社会へ[石塚良明(浜松市国際課長)]
外国人が活躍しやすい「場」を作る国際化戦略[戸田佑也(あらまほし代表取締役)]
「知」と「技」で地域を動かす外国人パワー[平田景子(地域国際交流政策研究所)]
「課題先取り型」で取り組む多文化共生の推進[髙原義弘(公益財団法人北九州国際交流協会専務理事)]
コラム◎熊本地震での多文化パワー[八木浩光(一般財団法人熊本市国際交流振興事業団事務局長)]
第四章 自治体移民政策への道
多文化共生の限界
多文化共生は福祉政策か?
多文化共生はコストに見合うか?
自治体の移民政策とは
外国人誘致政策
人口政策の中の定住外国人
海外の自治体の活動
地域社会へのソフトランディング政策
潜在能力の活性化政策
国の移民政策の先導役として
自治体は移民、難民をどう考えているのか
コラム◎アジア青年移民受け入れ事業
あとがき
前書きなど
はじめに
(…前略…)
本書は外国人の受け入れ政策について、自治体の役割に焦点を当てている。地域社会こそがその現場であり、そこにこそ実践と知恵が育まれるからだ。そしてそこで得られた経験は単にその自治体だけのものとして留めるべきではない。日本全体に発信すべきものである。
日本が少子高齢化によって衰退する危機を迎える可能性が高まる今、地域社会から外国人の受け入れについてより積極的に声を上げるべきだ。現場を持つ自治体は日本の移民政策をリードする役割と責任を持つ。本書は草の根の視点から移民政策を考え、日本の将来を展望する。
第一章「人口減少は地方創生で解決可能か」では、人口減少が地域社会に対してどのようなインパクトをもたらすのかを検証する。それに対して政府が行う地方創生政策について検討するとともに、それには限界があり、地域社会の持続可能性が保証されるものではないことを見ていく。
第二章「多文化共生の変遷と多文化パワー」は、人口政策として外国人の受け入れを検討する前提として、これまでの多文化共生の歴史的経緯をたどりながら、自治体がどのような取り組みをしてきたのかを検討する。さらに多文化共生を政府として進めるための政策やその一環として行われている多文化共生推進プランについて検討するとともに、外国人を地域社会の活性化にとって重要な存在と考えその潜在力を活かそうとする「多文化パワー」を検証し、それを推進しようとする自治体の新たな動きについて検討する。
第三章「草の根の経験――外国人受け入れの現場から」は、地域社会の現場で活動する経験を持つ専門家が、それぞれの体験を通して定住外国人の受け入れの実態や彼らの持つ可能性について議論を行う。
最終の第四章「自治体移民政策への道」では、従来の多文化共生の限界を指摘し、自治体として外国人の受け入れを積極的に進める移民政策を提言する。そしてその内容として「外国人誘致政策」「地域社会へのソフトランディング政策」「潜在能力の活性化政策」を提示し、さらに政府の政策を先導する役割について検討する。
本書は従来の多文化共生の一歩先のビジョンを提示するものであり、外国人との共生を通じて日本社会の刷新を図ろうという意図を持って書いたものである。それを実現するにはどうすればよいのか、多くの読者の知恵をいただき、その実現の日が一日も早く来ることを願ってやまない。