目次
巻頭のことば[垣田裕介]
特集 アベノミクスと貧困・格差
アベノミクスとトリクル・ダウン仮説を考える[駒村康平]
株価の上昇が資産・所得・消費の格差に与える影響[宇南山卓]
低所得世帯の生活基盤に物価上昇がもたらす影響[村上英吾]
年金改正・物価上昇が将来の高齢世帯の貧困にもたらす影響[稲垣誠一]
介護保険制度改革が地域で暮らす人々の生活の自律にもたらす影響[井口克郎]
日本の公教育費が抱える問題[中澤渉]
日本再興・女性活躍と雇用・ジェンダー・貧困[三山雅子]
政府の賃上げ要請、被保険者適用拡大と雇用・賃金動向への影響――年齢・男女別にみた正規・非正規雇用と賃金の動向[小島茂]
シリーズ:生活困窮者支援の現場から 1
一人ひとりと向き合う個別的な支援[鈴木晶子]
投稿論文
障害等により手助けや見守りを要する人の貧困の実態[山田篤裕・百瀬優・四方理人]
書評論文
白波瀬達也著『宗教の社会貢献を問い直す――ホームレス支援の現場から』[山北輝裕]
国内貧困研究情報
注目すべき調査報告書
シングルファーザー生活実態調査報告書[湯澤直美]
貧困に関する政策および運動情報 2015年1月~2015年6月[山田壮志郎/五石敬路/小西祐馬/村上英吾/北川由紀彦]
貧困研究会規約
原稿募集及び投稿規定
編集後記
前書きなど
【編集後記】
アマルティア・センは『アイデンティティと暴力』において、「文明の衝突」という見方に対する「アイデンティティの複数性」を提起する。日本人であり、英語教師であり、ムスリムであり、ダイビング愛好者であるということは矛盾せず、人は複数のアイデンティティを選択する。決して単一の「文明」に分類されて存在しているのではない。アイデンティティの選択可能性をどう広げるか、パリのテロ事件の報に接して考え込んだ。[松本]
『貧困研究』も15号を迎えました。創刊号は2008年10月に刊行。それから7年間が経過し、時代状況は大きく変容しました。戦争/紛争、暴力/搾取の時代にあって貧困研究は何をなしうるのか。雑誌の特集企画や新企画への皆様からのご提案もお待ちしています。[湯澤]
厚労省「ブラックバイト」調査によれば、学生の6割がバイト先で何らかのトラブルを経験していたという。報道翌日の授業で学生にアンケートを採ったところ、出席していた学生の9割以上が同様の経験をしていた。バイト先は「ブラック」だとする学生がいる一方、急なシフト変更も強制ではないので「ブラック」とは感じない、理不尽に感じてもしばらくすると忘れる、サービス残業やシフト強要はどこでもあるものと思っていたなど、無批判に受け入れてしまっている学生も少なからずいた。嫌なら辞める、という声も根強い。[村上]
晴れた日に毎日、公園に来る父子がいた。子どもは白髪が混じる年齢で、かなり高齢の父親がやっとのことでふらふらこぐ買い物用自転車の荷台に乗り来ていた。公園を囲む柵の外から、遊ぶ子どもたちをニコニコしながら静かに見ていた。ある日、パトカーがその公園に横付けされた。不審者として通報されたのだ。その日から姿を見かけることはなかった。その父子はその後どうしたのか、という疑問が頭をめぐり続け、今号掲載の研究に至った。[山田]
2015年4月の生活困窮者自立支援制度のスタートにともなって、ホームレス対策事業は同制度のもとで運営されることとなり、事業内容が実質的に継続されているかどうかに注目しています。ホームレス対策の推進基盤であったホームレス自立支援法の期限が2017年8月に迫るなか、ホームレス支援や居住支援のあり方も、貧困研究の今日的課題の一つです。[垣田]
今号から編集委員会に加わらせていただいた阿部彩です。『貧困研究』は、ずっと気になっており、いつも刊行されたら即読ませていただいておりました。この度、編集委員としてかかわらせていただくこととなり、期待とともに責任感で胸がいっぱいです。[阿部]
待望していた、アベノミクスによる貧困と格差の拡大を明らかにした特集をお届けします。資産格差を踏まえて再分配を論ずる手がかりとなることを願います。[布川]
今号より新たな編集委員として垣田裕介、阿部彩のおふたりを迎えさらにパワーアップした本誌をご高読いただけるよう、よろしくお願い申し上げます。[明石書店・神野]
先日、本当に久しぶりに、ホームレス支援巡回パトロールに参加した。大阪市の北部を中心にHUBchari(レンタルサイクル)事業を行っているNPO Homedoorの活動の一つである。繁華街の雑踏のなかで、はじめてボランティア参加した若者も含め、ホームレスの目線に合わせて声をかけるその姿に、あらためて「支援の原点」という言葉を思い出した。[福原]