目次
独島・鬱陵島の研究――歴史・考古・地理学的考察(鄭在貞[東北アジア歴史財団理事長])
巻頭言(尹裕淑[東北アジア歴史財団研究員])
17世紀後半の韓日外交交渉と鬱陵島――安龍福被拉と渡日事件を中心に(洪性徳[全州大学])
Ⅰ はじめに
Ⅱ 17世紀の韓日外交体制の形成
1.17世紀の韓日外交通交規定
2.韓日外交体制の特徴
Ⅲ 安龍福の被拉事件と韓日関係
1.竹島渡海免許と安龍福の拉致
2.安龍福拉致事件の外交交渉
Ⅳ 1696年 安龍福の渡日と韓日関係
1.江戸幕府の竹島渡海禁止命令
2.安龍福の渡日と帰国
Ⅴ 結論
高宗と李奎遠の于山島認識の分析(保坂祐二[世宗大学])
Ⅰ はじめに
Ⅱ 高宗と李奎遠の対話にみる于山島と松・竹島
1.高宗の基本的な于山島認識
2.李奎遠の基本的な于山島認識
3.李奎遠の松・竹島認識
4.高宗の松・竹島認識と大韓帝国勅令第41号
5.聖人峰に登った後の李奎遠の于山島認識
Ⅲ 于山島名称の変遷過程と「于山島=独島論」の確立
1.「流山国島」と刷還政策の実施
2.朝鮮の刷還政策の展開と于山島
3.『高麗史地理志』(1451)にあらわれる于山と武陵
4.『世宗実録地理志』(1454)にあらわれる于山と武陵
5.『新増東国輿地勝覧』(1531)にあらわれる于山島と鬱陵島
6.『新増東国輿地勝覧』と付図「八道総図」
Ⅳ 鬱陵島捜索と捜討で得られた于山島に対する知見
1.疎かになり始めた鬱陵島捜索作業
2.失敗に終わった蓼島、三峯島捜索作業
3.180年ぶりに鬱陵島等地に派遣された張漢相
4.朝鮮王朝の鬱陵島等地捜討
Ⅴ 結語
明治初年太政官文書の歴史的性格(朴三憲[建国大学])
Ⅰ はじめに
Ⅱ 王政復古と太政官制
1.「政体書」太政官制と文書行政
2.「職員令」太政官制と文書行政
Ⅲ 廃藩置県後の太政官制
1.太政官三院制と文書行政
2.太政官潤飾と文書行政
Ⅳ 1877年太政官指令文の歴史的意味
古代鬱陵島社会と集団に関するいくつかの問題――鬱陵島の調査、古代の遺物を中心に(呉江原[東北アジア歴史財団])
Ⅰ はじめに
Ⅱ 鬱陵島の古代遺物
1.生活具(土器)
2.生産具
3.加工具
4.武具(鉄鏃)
5.装身具
6.馬具
7.威厳具(銅冠)
8.葬具
9.信仰具
10.建築具(牝瓦片)
Ⅲ 遺物を通じてみる古代鬱陵島社会および集団のいくつかの問題
1.鬱陵島発見土器の制作地と制作者
2.鬱陵島の古代遺物の年代
3.古代鬱陵島社会の位階化と階層
4.古代鬱陵島の社会統合のための仕組み
Ⅳ 結語
独島の機能、空間価値と所属――政治地理・地政学的視角(任徳淳[忠北大学])
Ⅰ はじめに
Ⅱ 独島に対する地理学者たちの先行議論
Ⅲ 独島の空間的構造
1.空間関係
2.自然地理
3.人文地理
Ⅳ 独島の機能と空間価値
1.島の機能と価値
2.独島の空間価値
3.日本においての過去・現在・未来の独島.歴史・巨視的検討
Ⅴ 独島の韓国所属の妥当性
1.有人島(鬱陵島)――独島の距離
2.歴史的水域性と歴史的島嶼
3.大韓民国の独島占有と使用
4.韓日両国の公式文書
5.日本で制作された古地図
6.独島・鬱陵島の双子島の可能性
Ⅵ 結語
索引
前書きなど
独島・鬱陵島の研究――歴史・考古・地理学的考察
東北アジア歴史財団
東北アジアにおいて解決しない歴史、領土問題は、国家間の信頼を構築する上で障害となっています。東北アジア歴史財団はそうした歴史、領土問題の葛藤の原因を正確に診断し適切な対応をするために努力しています。また東北アジア国家間の相互理解と共存、共生のための歴史に関する対話も継続的に拡大しています。
去る2008年8月に出発したわが東北アジア歴史財団独島研究所は、設立以来、独島問題に長期的、体系的、総合的に対応するために、様々な学術研究・調査と対外活動を展開してきました。しかし正しい独島研究のためには研究の範囲を独島にだけ限定するのではなく、独島を媒介にして、地域的にも時代的にも研究の幅を拡大させる必要があると考えます。独島と鬱陵島は周辺の人間の活動とは孤立して存在する地図上の孤島ではなく、古代から人間の活動地域として機能してきたからです。
この本はそうした問題意識から出発して古代から近・現代まで独島と鬱陵島を媒介にした多様な歴史像を、歴史・考古・地理学的観点から検討した成果物です。各学問分野で独自の研究成果を構築した5名の研究者が、それぞれの学問的土台から独島・鬱陵島を主題にして書いた論文を集めて出版することになりました。未熟な点もありますがこの研究結果が学会において、独島と鬱陵島研究の地平を広げるのに一助となることを願います。
困難な研究環境と、決して長くはない研究期間であったにもかかわらず、執筆を快諾され原稿を提出してくださった洪性徳、保坂祐二、朴三憲、任徳淳の諸先生方、呉江原研究員に深い感謝の意を示します。本にする過程でご苦労された財団の関係者の方々にも感謝致します。
2009年11月10日 東北アジア歴史財団 理事長 鄭在貞