目次
はじめに
Ⅰ 恋愛
1 兵士、解放者、旅行者
救出と死が入り交じった超現実的な光景
戦争の危険で支離滅裂なざわめき
死のにおい
フランス語の国
フランスの女の子は簡単
2 男らしいアメリカ兵(GI)という神話
戦う目的はここにある
アイオワの女性はパリのキスがお嫌い
女たちを隠さねばならなかった
明日に目を向けて
3 一家の主人
解放のトラウマ
臆病者とチンピラ
彼らは本物の男だった
もう一度、男になる
フランスの主権に対する耐え難い侵害
Ⅱ 売買春
4 アメリロットと売春婦
農民たちとの卵の取引
おれたちに借りはないのか?
フランス人は自己アピールに無頓着
ボニシュの時代
5 ギンギツネの巣穴
ナチスの制度
もぐりの売春への流れ
新たな売春婦
ピガール通りの危険
性の地政学
死が付きまとうなかで生じた渇望
6 危険で無分別な行動
健康は勝利
性行為の人気がなくなるわけがない
生命に逆らうこと
フランスのような場所で任務を遂行すること
言語道断であり、まったくもって耐え難い醜態
兵士たちのらんちき騒ぎの舞台
永久不変の無秩序がはびこる
Ⅲ レイプ
7 無実の受難者
レイプの人種化
犯人確認の問題
証人の信頼性の問題
誤解の問題
首つり縄の再来
ノルマンディーでの「内輪の話」
パリの孤児
8 田園の黒い恐怖
一九四四年の大恐怖
アメリカ人によって黒く汚れた
黒い脅威の再来
ここは有色人用の特別な刑務所か?
おわりに 二つの勝利の日
謝辞
監訳者解題
注
前書きなど
監訳者解題[佐藤文香]
本書は、Mary Louise Roberts, What Soldiers Do: Sex and the American GI in World War II France(Chicago: University of Chicago Press, 2013) の全訳である。
著者メアリー・ルイーズ・ロバーツは、一九七七年にリベラル・アーツの名門ウェズリアン大学で歴史学を学び優等で卒業した後、一九八〇年にサラ・ローレンス大学で女性史の修士号を、一九九〇年にブラウン大学で歴史学の博士号を取得した。その後、スタンフォード大学の助教、准教授を経て、二〇〇二年よりウィスコンシン大学マディソン校の歴史学教授を務めている。
本書は、フランス史およびジェンダー史を専門とする著者にとって三冊目の単著であり、米仏の公文書館や軍隊・警察の膨大な一次史料を用いて、第二次世界大戦下のフランスで米軍兵士たちが何をしたのかを、ジェンダーとセクシュアリティの視点から読みなおした労作である。米兵とフランス人女性との性的な関係が米仏関係といかに密接にかかわっていたのかが本書を貫くテーマであり、著者はその関係を恋愛、売買春、レイプという三つの位相に分けて記述している。
(…後略…)