目次
まえがき
〈論考編〉
第Ⅰ部 町村合併の歴史的展開
第1章 日本における町村合併の展開[小島孝夫]
第2章 合併に対するまなざしの過去と現在――システムと伝承の関係性を問う[加藤秀雄]
第3章 明治の大合併と行政村の創出――山村地域の特質を中心に[山崎久登]
第Ⅱ部 地域社会の生活文化や心意の変化
第4章 自治体の再編とふるさと意識・民俗の変化[亀井好恵]
第5章 「生活の道」の変遷――兵庫県佐用郡佐用町海内を事例として[山本志乃]
第6章 互助協同の変化と協同圏の拡大[田中宣一]
第7章 市町村合併と新たなつながりの模索――秋田県北秋田市を事例に[玄蕃充子]
第8章 市町村合併・学校統廃合と民俗変化――浜松市天竜区気田と鳥羽市離島部を中心に[髙木大祐]
第Ⅲ部 合併に対する受容と対抗
第9章 合併する論理としない論理――隠岐諸島、島前と島後の合併プロセスを考察する[山田直巳]
第10章 合併拒否の選択肢とその背景――長野県上伊那地方を事例として[八木橋伸浩]
第Ⅳ部 地域社会の現状や課題
第11章 島をつないで、島を継ぐ――笠岡諸島における島嶼連携による「島づくり」の実践と困難[俵木悟]
第12章 中山間地域における森林資源の活用と課題[小島孝夫]
第13章 新市一体感の醸成――長野県上伊那地域の市町村合併にみる期待と不安[今野大輔]
終章 町村合併と地域社会のくらし――新たな「関係性」の模索[小島孝夫]
〈資料編〉
追跡調査地一覧
秋田県北秋田市阿仁荒瀬(旧北秋田郡荒瀬村)
新潟県東蒲原郡阿賀町(旧東蒲原郡上川村)
長野県伊那市(旧上伊那郡美和村)
静岡県浜松市天竜区(旧周智郡気多村)
和歌山県田辺市龍神村(旧日高郡上山路村)
兵庫県佐用郡佐用町海内(旧佐用郡石井村海内)
岡山県笠岡市 笠岡諸島(旧小田郡白石島村)
島根県 隠岐諸島(旧穏地郡都万村)
徳島県那賀郡那賀町木頭(旧海部郡木頭村)
佐賀県唐津市厳木町天川(旧東松浦郡厳木町天川)
鹿児島県出水市(旧出水郡大川内村)
鹿児島県鹿屋市輝北町百引(旧肝属郡百引村)
あとがき
索引
前書きなど
まえがき
本書は、「平成の大合併」による広域合併自治体を具体的な事例として、地域社会の再編に際して人々が共有する危惧や期待をはじめとしたさまざまな心意に留意することで、人々が描く地域社会像や、現代社会における集団生成の思惟を明らかにすることを試みたものである。
成城大学民俗学研究所は、民俗学・歴史学・文化人類学に関する研究プロジェクトを継続的に展開している。それらのうち、柳田國男主導で昭和九~十一年に実施された「山村調査」と昭和十二~十三年に実施された「海村調査」の『採集手帖』を基礎資料とするプロジェクトが継続されてきた。両調査が実施された調査地を対象に両調査実施後の民俗変化について追跡調査を実施したもので、それらの成果を『山村生活五〇年 ―その文化変化の研究―(全三冊)』(昭和五十九~六十一年)、『昭和期山村の民俗変化』(平成二年)、『海と島のくらし―沿海諸地域の文化変化―』(平成十四年)として刊行してきた。この経緯は本書第6章田中論文に詳述されている。
本研究プロジェクトも、この流れに連なるもので、両調査が実施された地域を対象に、当該『採集手帖』の記載事項を起点とし、さらに先述の追跡調査の研究成果を当該地域社会の変化の過程として位置づけ、各調査地の現在にいたる民俗事象の変化を当該自治体の町村合併を介した全国的な動態として捉えなすことを目的として、研究に着手した。具体的には、当該地域における民俗変化の在り方から地域社会の現状を把握するという手法をとったが、こうした状況確認の中間報告として開催した公開シンポジウム「市町村合併と民俗変化─平成の合併を中心に」を契機として、むしろ「民俗」として捉えられてきた事象の背景にある、人々の生きかたや選択の核となっている、さまざまな関係性の変容の実態を明らかにすることこそが急務であることが参画者の間で共有されていくことになった。
今次の合併が成るまでの当該自治体間での協議が極めて短期間で収束しているのは、政府や都道府県による重層的な指導が行われたことに起因すると考えられるが、当該地域住民組織内での合意形成なしには合併が進展しなかったことを考えれば、住民の側の対応の背景にある思惟についても一層留意しなければならない。住民の側にも合併を選択した必然性や覚悟が存在したはずだからである。そして、この必然性や覚悟こそが、合併協議時の当該地域住民間で共有されていた意識であり価値観であると捉えることができる。
(…後略…)