目次
刊行にあたって
凡例/目次/細目次
Ⅰ 前近代補遺
一 近世史料
Ⅱ 近現代補遺
一 新聞史料
二 近現代史料
近現代差別事件・運動関係年表
解説
謝辞
ご協力いただいた機関・団体/和歌山の部落史編纂会
前書きなど
刊行にあたって
部落差別をはじめとする人権諸問題を解決するためには、何よりもまずそのような人権侵害がどのようにして生じたのか、その成りたちと実態を歴史的、科学的に解明しなければなりません。社団法人和歌山人権研究所が、一九九七年一一月の設立以来、『和歌山の部落史』の編纂を主要な課題として取り組んできた理由であります。
必要な準備期間を経て、今回発刊の運びに至りました『和歌山の部落史』の主要な特徴として、以下の点を上げることができます。
第一には、和歌山には近世の部落史料として他に類例を見ない貴重で厖大な史料、すなわち「紀州藩牢番頭家文書」が存在し、早くから注目されながら、その全面的翻刻・編集・公刊についてはほとんど手つかずの状態にありました。本研究所では、先駆的な研究者の御指導と御協力を得て、創設以来この史料の調査・研究に着手し、この程第二巻まで刊行し、ようやくその成果を有効に利用しうる段階に達しました。その結果、『和歌山の部落史』では、他の府県では見られなかった差別の実態が、民衆生活に即して手に取るように浮き彫りされることでしょう。
第二には、紀州和歌山には、古代以来広大な高野山寺領が成立し、江戸末期に至るまで紀伊半島の脊梁をなす山間部を中心に、我が国最大といわれる寺領として存続していました。そして興味深いことには、この寺領の周辺や境界の部分に数多くの被差別部落が点在しています。高野山寺領に関する史料としては、我が国屈指の厖大な史料群が金剛峯寺の宝蔵や高野山大学の図書館に保管されていますが、本研究所では、高野山真言宗当局の特別の御理解と御協力を得て、それら厖大な史料の中から部落差別やその他の差別に関する史料を抽出し、調査・研究、そして公刊することをお許しいただきました。これによって『和歌山の部落史』では、県域のすみずみに至るまで、統一的な見通しのもと、個々の被差別部落がなぜそこにあるのかという根源的な疑問に答える手がかりが与えられるようになりました。これもまた他の府県では見られない注目すべき成果といわねばなりません。
この他にもいくつかの新しい学術的知見が紹介されるものと思いますが、新しいこのシリーズは、部落差別の成りたちをはじめとして、その後の変遷および部落解放の歩みを概観し、問題の解決に真に役立つものとなることを確信しております。
『和歌山の部落史』は、通史編一巻、史料編五巻、年表・補遺編一巻の計七巻です。まず、『史料編 近現代1』から刊行に着手し、五年計画で完了する予定です。
最後に本書の刊行に当たって、この困難な事業を支えてくださった「和歌山の部落史研究促進協議会」の皆様に深甚の敬意と謝意を表します。
二〇一〇年三月 和歌山の部落史編纂会 委員長 薗田香融