目次
はじめに
[出来事]
戦況は地図を片手に【DER RUSSISCH-JAPANISCHE KRIEGSSHAUPLATZ】
世界に衝撃走る日本の勝利【“TOGOS VICTORY”】
メディア主催の移動式博覧会【汽車博覧會巡回地圖】
後世への警鐘として仔細に記録【驚天動地古今絶無 大阪大火災實况圖】
皇太子行啓記念と北海道の炭鉱【北海道図】
県庁舎新築で県勢を誇る【千葉縣管内圖】
開業時の構内図と赤レンガ駅舎【東京停車場】
幻の明治神宮外苑【明治神宮附屬外苑豫定圖】
田園地帯で攻防戦【大正七年特別大演習記念】
スペイン風邪と生命保険【生命保険ヨリ見タル内地流行性感冒地圖】
近代的統計調査の幕開け【大日本人口密度圖】
五十五日間世界一周の航跡【世界一周大飛行航程圖】
[産業]
伝統のイカ釣り漁と近代漁業の品評会【對馬】
鉱山を支えた天空の町【神岡鉱山栃洞周辺図】
操業わずか一〇年の精錬所【帶江鑛山大〔犬〕嶋製煉所附近交通圖】
導水路の勾配と自転車遠遊會【名古屋電燈株式會社長良川水力電氣水路全圖】
中禅寺湖を源に栃木県内へ送電【電燈電力供給區域竝ニ道電線路圖】
東京と福島を結んだ長距離送電線【電線路圖】
恐慌後の世界市場を席巻【昭和九年綿織物仕向地別輸出髙】
[国土開発]
押し寄せる高波と戦う難工事【留萠港之圖】
現在に続く防砂堤延長工事【寺泊築港工事平面圖並寺泊案内】
この違和感の理由はなに?【三崎漁港修築竣功圖】
まるで鳥が羽ばたくような【三池築港全圖 THE MAP OF MIIKE HARBOUR】
国際港デビューに向け修築工事が進む【東亰港平面圖】
足尾鉱毒事件に端を発した治水事業【渡良瀬川改修計圖】
信玄も手を焼いた暴れ川【山梨縣笛吹川改修工事實况(其九)工事設計圖面】
近世以来の壮大な治水計画【江合鳴瀬合流平圖】
市域拡大と水道の普及【東京水繪葉書】
[郵便・通信]
統合された内国郵便為替【内國爲替管理事務合同壹周年紀念】
夏季限定の富士山郵便局【富士山郵便局開始記念】
全国的な郵便局増設ブーム【尾三地方郵便線路圖】
絵葉書の中の地図絵葉書【日本交通地圖】
地球を一周する通信網の完成【日米間海底電信直通紀念】
電話線路の飛躍的拡張【山形市街圖】
ラジオ放送受信地域の拡大プロジェクト【東京中央放送局聽取感度略圖】
[交通]
開けゆく東京の路線図【東京電車案内圖】
ねらいは欧米の旅行者誘致【MAP OF THE GOVERNMENT RAILWAYS IN JAPAN】
公営を貫いた路線整備【大阪市内電車線路圖】
遷都千百年と八十年余の市電の歴史【京都市電車線路圖】
消えた「本州横断鉄道」構想【河東鐵道案内圖】
世界周遊の乗車船券【JAPAN THE FOCUS OF INTERNATIONAL COMMUNICATIONS】
距離短縮の効果が色分けで一目瞭然【羽越線全通記念】
観光客を運び石灰石を積み出す【秩父鉄道沿線 三峯口―寄居】
本州と九州を結ぶ交通の要衝【關門海底トンネル鐡道連絡圖繪】
国際貿易港の地位を確立【歐米航路開始紀念】
日本の海図作りを地図で表現【水路部】
航空網の国際化とローカル線【日満定期航空路圖】
[都市]
馬車鉄道が走る函館【凾館區略圖】
軍都にひろがる広大な軍用地【旭川市街全圖】
釧路川をはさむ新旧の街並み【釧路市ト港灣】
汽船対応の近代港湾へ【日本海重要の酒田港】
江戸の姿をとどめる河岸と運河【京橋區全圖】
発展する“小江戸”の街並み【川越町全圖 最新調査】
柳都と呼ばれた運河の町【新沼合併新潟市全圖】
小博覧会に沸く門前町【長野市地圖】
合併で市域が倍増【大正八年現在之名古屋市】
駅が遠い伊賀忍者の里【上墅町市街圖】
拡大の速度に地図が追いつけず?【大正十四年大阪市域擴張圖】
廃毀を免れ軍用地となった名城【姫路市全圖】
[名勝・観光]
四国八十八ヶ所巡礼を高尾山で【武州高尾山全景及大師八十八ケ所靈拜巡路案内圖】
地を這うような谷戸の緑。古都の地形鑑賞【鎌倉名勝案内圖】
温泉地へは軽便鉄道で【熱海及湯河原温泉案内圖 附 箱根附近圖】
対岸から見渡す黄金の島【佐渡案内圖】
鉄道開通で浴客を呼ぶ伝説の湯【下部温泉案内圖】
渓谷の美を一望のもとに【日本百景入選 裾花峡(渓谷美)】
折戸湾のベイブリッジ【靜岡附近名所地圖】
江戸期の難所が観光地に【濱名湖遊覧圖】
僧坊が密集する聖地を一葉に【高野山平圖】
この景観よ永遠に【天の橋立附近の圖】
改版でたどる阿蘇登山ルートの変遷【阿蘇登山案内地圖】
神話に彩られた九州【南九州鳥瞰図「神代並神武天皇御蹟」】
[旧統治領・満州]
今や韓国の玄関口【韓國仁川港萬石洞埋築工事竣工紀念】
見るだけで心躍るループ線【Spiral on Arisan Railway】
ビフォー&アフターで成果を強調?【臺湾縦貫鐡全通紀念】
印刷技術の進歩で詳細に分布を伝える【臺灣主要鑛産分布】
針葉樹林 空前の虫害対策【樺太島松毛蟲被害區域竝斫伐事業地一覧圖】
国境は北緯五〇度線【樺太鉄道地図】
派兵先からふるさとへ【北東アジア鳥瞰図】
等高線とループ線が事件を印象づける【興安嶺ノ環線ト同地紀念碑】
ドイツ語地名を日本名に【青島名所圖繪】
自動車交通に道路は急務【[満州国国道]第一次路線圖】
国策で送り出された移民の記録【開拓地分布圖】
前書きなど
はじめに
絵葉書というとまず思いうかぶのは、観光地の絶景の写真や、美術館・展示会場などにならぶ作品の写真、また風景や植物のスケッチなどではないでしょうか。こうした絵葉書が主流であることはたしかですが、絵葉書の全盛期といわれる明治時代の終わり頃から昭和前半期にかけての絵葉書には、題材として地図が登場するものも少なくありません。その種類も思いのほか変化に富んでいます。
今から八〇年以上もさかのぼる時代の絵葉書に描かれた地図とはどのようなものだったのでしょうか。本書にはそうした地図を題材とした古い絵葉書があつめられています。もとになっているのは、日本地図センター発行の『地図中心』(月刊)の連載記事です。毎号、格別のコレクターとはいえない私の、数少ない手持ちのなかからランダムに選んだ地図絵葉書各一点の原寸大の画像に短いコメントをつけて掲載し、二〇一五年一月号で第一三〇回になります。はじめは二、三年と思ってはじめたものが、思いがけず一〇年をこえることになりました。一三〇点のうちには外国製の地図絵葉書もあり、色彩、デザイン感覚もすぐれた見ばえのよいものが多いのですが、今回は日本と、時代を反映した、当時の日本統治地区や満州などを中心とし、多少の手を加えてまとめています。
(…中略…)
さきにもふれましたが、ここに収録されている絵葉書と小文のそれぞれは、たまたま手もとにある絵葉書から、系統にこだわらず気まぐれにとりだして、とつおいつ眺めた観察の記録です。ここにストーリーがあるのだろうか(?)と不安を抱きながらとりかかった一枚から、思いがけない地域と時代の息づかいが立ちあがってくることにはいつも驚かされ、またそれが楽しみでもありました。
手のひらサイズの小さな窓から見える時空は一見ばらばらのようでいて、一歩踏み込んでじっくりと思いをはせると、いずれもそれなりに時の流れの大きな歯車ともかみあって、総体としての地域、歴史の動きをより身近に感じさせてくれるように思われます。
本書が貴重な記録資料のひとつの姿としての、絵葉書の地図の世界への入口になれば幸いです。