目次
推薦の言葉[松浦晃一郎:第8代ユネスコ事務局長]
推薦の言葉[米田伸次:公益社団法人日本ユネスコ協会連盟理事]
まえがき
序章 ユネスコスクールとは
第1章 ユネスコスクールの歴史
第1節 ユネスコスクールの創設
第2節 ユネスコスクール第1期(1953年~1963年)
第3節 ユネスコスクール第2期(1964年~1973年)
第4節 ユネスコスクール第3期(1974年~1983年)
第5節 ユネスコスクール第4期(1984年~1993年)
第6節 ユネスコスクール第5期(1994年~2003年)
第7節 ユネスコスクール第6期(2004年~2013年)
第2章 ユネスコスクールと国際理解教育
第1節 ユネスコスクールの出発点としての国際理解教育
第2節 1974年「国際理解教育に関する勧告」に示された指針
第3節 ユネスコの価値教育との関連
第4節 世界遺産教育の活用
第3章 ユネスコスクールとESD
第1節 ESD推進拠点としてのユネスコスクール
第2節 ESD誕生の経緯
第3節 ESDにおける学際的アプローチの重要性
第4節 「国連ミレニアム開発目標」との関係
第5節 「共生」の課題
第4章 ユネスコスクールと地球市民教育
第1節 地球市民教育の発足――国連のイニシアティブ
第2節 「地球市民」とは誰か?
第3節 地球市民教育のジレンマ
第4節 地球市民教育の方法論
第5章 日本におけるユネスコスクールの教育実践例
第1節 事例紹介の意味
第2節 気仙沼市をはじめとする宮城県
第3節 多摩市をはじめとする首都圏
第4節 金沢市を中心とする石川県
第5節 愛知県と名古屋市
第6節 大阪府と大阪市
第7節 奈良市を中心とする奈良県
第8節 岡山県岡山市
第9節 福岡県の大牟田市
第6章 世界におけるユネスコスクールの教育実践例
第1節 ヨーロッパ・北米地域の実践事例
第2節 アラブ・中近東地域の実践事例
第3節 アフリカの実践事例
第4節 ラテンアメリカとカリブ諸国の実践事例
第5節 アジア太平洋地域の実践事例
第7章 フラッグシップ・プロジェクト――ユネスコスクールにおける広域連携
第1節 世界遺産教育プログラム(World Heritage Education Programme)
第2節 バルト海プロジェクト(Baltic Sea Project)
第3節 西地中海プロジェクト(Western Mediterranean Sea)
第4節 サンドウォッチ・プロジェクト(Sandwatch Project)
第5節 大ボルガ川航路プロジェクト(Great Volga River Route)
第6節 モンディアロゴ・スクールコンテスト(Mondialogo School Contest)
第7節 アラブ諸国の水教育(Water Education in Arab States)
第8節 青きドナウ川プロジェクト(Blue Danube River Project)
第9節 ギガパン対話(GigaPan Dialogue)
第10節 環大西洋奴隷貿易教育プロジェクト(Transatlantic Slave Trade Project)
第8章 ユネスコスクールとユネスコ協会の連携
第1節 民間ユネスコ運動
第2節 ユネスコ協会との連携推進に向けた提案
第9章 ユネスコスクールへの支援体制と今後の展望
第1節 ユネスコ本部
第2節 文部科学省と日本ユネスコ国内委員会
第3節 ユネスコ・アジア文化センター(ACCU)
第4節 日本ユネスコ協会連盟
第5節 ユネスコスクール支援大学間ネットワーク(ASPUnivNet)
第6節 ユネスコスクールの将来展望
参考文献
付録
付録1 ユネスコスクール関連機関
付録2 ユネスコスクール加盟申請方法
付録3 ユネスコスクールガイドラインについて
付録4 ユネスコスクール加盟校の推移(日本国内)
付録5 ユネスコスクール加盟校一覧(日本国内)
索引
前書きなど
まえがき[小林亮]
私がユネスコスクールのことを最初に知ったのは、1997年にパリのユネスコ本部でインターンシップをさせて頂いた時のことでした。たまたま私がインターン生として配属されたのが、ユネスコ教育局にあるユネスコスクール担当部署だったのです。現在、ユネスコスクール担当部署は、ユネスコ教育局の「平和と人権教育課」(Section of Education for Peace and Human Rights)に置かれていますが、当時は「人道・文化・国際教育課」(Section for Humanistic, Cultural and International Education)というところにありました。そこで当時ユネスコスクール国際コーディネーターだったアメリカ人のエリザベス・カワシュキさん(Ms. Elizabeth Khawajkie)とその補佐をしていたドイツ人のシグリッド・ニーダーマイヤーさん(Dr. Sigrid Niedermayer)から、ユネスコスクール(ASPnet)という世界的な学校間ネットワークのプロジェクトがあることを教えて頂き、その仕事を手伝わせて頂いたのが私とユネスコスクールとの最初の出会いでした。インターンをしているうちに、平和、国際理解、人権、寛容といったユネスコの崇高な理念を実際の学校教育の現場で青少年に直接伝えてゆけるユネスコスクールという枠組みが非常に大きな可能性を秘めた学校プロジェクトであることが少しずつわかってきました。またインターン中に何回か世界各国からのユネスコスクールの教師団の訪問やユネスコスクールの青少年たちの交流会に立ち会う中で、国や民族、宗教などを超えて、人類共通の理念のもとにお互いに胸襟を開いて分け隔てなく交流し、学び合い、友情を育むことができるユネスコスクールというプロジェクトに強い魅力を感じるようになっていきました。「こんなにすばらしい可能性を持ったASPnetという学校間プロジェクトを発案し、世界レベルで運営・展開しているユネスコという組織は、なかなかたいした見識のあるすてきな国際機関だな」と私は当時、素朴に感動しました。
(…中略…)
ネットワークを活用した学び合いと共生のシステムこそ、ユネスコスクールの大きな特長です。それぞれの学校や地域で展開されている優れた教育実践を紹介し合い、学び合うことを通じて、教員も児童生徒もより広い視野を獲得し、豊かになることができます。何よりもお互いがみなユネスコの理念を共有している仲間同士なのだという連帯感を持つことで、理念だけでなく生きた体験として「地球市民」意識を育てていくことが可能になるのです。これまで私が交流させて頂いたユネスコスクールの先生方はみな、平和や持続可能性といったユネスコの理念を、とくに気負うことなく日常の教育実践の中で体現しておられました。また人間としての連帯感に基づく「地球市民」意識を自然な形で育んでおられるように感じました。グローバル化がこれからますます進む時代にあって、ユネスコスクールの果たすべき役割はいっそう大きくなっていくと思われます。時代を先導する国際教育の新たなネットワークであるユネスコスクールがこれほどの長所を持ち、教育に新たな視点をもたらす可能性を秘めたプロジェクトだということを少しでも多くの方々に知って頂きたい、またできれば自らユネスコスクールの活動に参加して頂きたいというのが本書を上梓させて頂いた私の一番の願いです。