目次
序文
はじめに
地図
Ⅰ 歴史――大分を作った人たち
第1章 九州の覇者、大友宗麟
第2章 ザビエルとアルメイダ
第3章 伊東マンショとペトロ岐部
第4章 戸次鑑連(道雪)・立花宗茂・高橋紹運
第5章 九州の関ヶ原、石垣原合戦
第6章 佐伯の殿様、浦で持つ
第7章 岡本主米と広瀬久兵衛
【Column 1】臼杵に漂着したウィリアム・アダムズ
【Column 2】『ガリヴァー旅行記』に載っている「Bungo」
第8章 豊後三賢、梅園・万里・淡窓
第9章 奥平昌高と中津藩蘭学
第10章 田能村竹田と豊後南画
第11章 賀来一族の多才な人々
【Column 3】大学を創った大分人
【Column 4】月に名前を残した麻田剛立
Ⅱ 文化・芸術――大分を彩る文化と芸術
第12章 滝廉太郎と朝倉文夫
第13章 福田平八郎と髙山辰雄
第14章 生野祥雲斎と竹工芸
【Column 5】大分弁あれこれ
【Column 6】大分市を彫刻都市にした上田保
第15章 大分は磨崖仏の宝庫
第16章 大分の石橋
第17章 現代芸術祭「混浴温泉世界」
【Column 7】主婦が美術館を作った
【Column 8】立命館アジア太平洋大学(APU)誕生秘話
Ⅲ 食――食は大分に在り、美味求真の世界
第18章 魚料理の王様、ふぐ(河豚)
第19章 時代と共に変化するだんご汁
第20章 かやくとセット、黄飯
第21章 安くて美味しい大分のB級グルメ
第22章 「食の楽園」おおいた
【Column 9】宗麟南瓜の復活劇
【Column 10】月とスッポン・ニッポン協会と美肌スポネ料理
【Column 11】『美味求眞』と食の探究者たち
Ⅳ 産業――大分を支える産業
第23章 大分のユニークな企業群
第24章 「地域」資源を活かす観光関連産業
第25章 大分県の交通体系の現状と課題
第26章 自然エネルギー先進県が挑む地域活性化
第27章 大手製造業に依存する大分県の産業構造
【Column 12】「大分の二度泣き」は訂正の要
【Column 13】大分県が誇る4人の観光カリスマ
【Column 14】観光からツーリズムへ
【Column 15】「@官兵衛」開発秘話
Ⅴ スポーツ・芸能――大分を楽しくするスポーツと芸能
第28章 不世出の横綱、双葉山
第29章 幻の金メダリスト、池中康雄
第30章 別府星野組と鉄腕稲尾和久、火の玉投手荒巻淳
第31章 中村裕博士と太陽の家・大分国際車いすマラソン大会
第32章 県民統合の文化、大分トリニータ
第33章 現代に受け継がれる大分の神楽
【Column 16】こうして大分はロケ地になった
Ⅵ 自然――大分を豊かにする自然の恵み
第34章 大分は九州の自然博物館①
第35章 大分は九州の自然博物館②
第36章 豊後大野市・姫島村のジオパーク
第37章 国東半島宇佐地域の世界農業遺産
第38章 くじゅう坊ガツル・タデ原湿原とラムサール条約
第39章 生き物のゆりかご、大分の干潟
第40章 サンゴ群落がみられる海中公園
第41章 九州一奥深い山、祖母傾山の大自然と神秘
第42章 大分の伝説の水
Ⅶ 温泉――日本一のおんせん県おおいた
第43章 日本一のおんせん県とは?
第44章 別府観光の恩人、油屋熊八
第45章 “人脈観光地”由布院温泉①
第46章 “人脈観光地”由布院温泉②
第47章 炭酸の恵み、長湯温泉
第48章 温泉名人道
【Column 17】後世に残したい別府の“湯けむり景観”
Ⅷ 地域づくり――大分を元気にする試み
第49章 別府を舞台とした体験プログラム「オンパク」
第50章 日本のグリーンツーリズム
第51章 歴史とめぐりあう鶴崎文化研究会
第52章 豊の国宇佐市塾
第53章 海業の学び舎「あまべ渡世大学」
第54章 豊前国中津黒田武士顕彰会
第55章 パノラマ風景写真で観光する大分県
【Column 18】豊の国づくり塾
【Column 19】湯の街を楽しくする別府プロジェクト
【Column 20】きっかけは東京の“大分人祭り”
番外章 大分学研究会と大分学検定
大分を知るためのブックガイド
おわりに
前書きなど
序文
平成25(2013)年11月3日、大分の歴史や文化が出題されるご当地検定「第1回しんけん大分学検定」を実施すると、受検者数112名、主催者の想像をこえる大きな反響が各方面からあった。そのなかで、第2回目以降に向けて基本となる参考書がほしいという声が多く寄せられたことから、それに応える内容で、系統的かつ総合的な大分学検定の基本参考書づくりがはじまった。それが本書『「大分学検定」完全対応 まるごとわかる大分県』である。
大分学とは、今年(2014年)3月に亡くなった辻野功先生が提唱されてはじまった大分愛をはぐくむ地域学である。先生が大分に移り住んで驚いたことは「大分の人は大分のことをわかっていない。自慢下手」ということ。そこで、江戸時代に小藩が分立し、地域ごとに風土が異なる大分の良さを再認識しようと「大分学」を提唱、平成14(2002)年に「大分学講座」をスタートさせ、3年前に大分学をさらに深め広めようと「大分学研究会」を発足させた。
辻野先生の「大分学」は、豊後≒九州だった大友宗麟の栄華の時代から小藩分立の江戸時代の多様性、そしてまた小説の舞台、映画のロケ地など、時空を超え、興味の幅も広く、魅力的に説き明かしていて、誰もがその世界に惹きこまれる。ふるさとを知ることの楽しさ、喜び、そんな当たり前のことに改めて気づかされ、「こんな大分があったのか」と、驚きと再発見の連続になる。
私は、これからの人口減少社会、少子高齢化社会をプラスに変えていけるのは、地域を愛する人たちであると確信しているが、そうした地域愛、大分愛を育てるのが「大分学」であり、大分の魅力を多面的に明らかにする地域学である。
本書の内容は「九州の覇者、大友宗麟」「九州の関ヶ原・石垣原合戦」「大分は磨崖仏の宝庫」「大分のユニークな企業群」「豊後大野市・姫島村のジオパーク」「温泉名人道」等、多岐にわたる。旬な話題も取り上げられている。
執筆者は全員が大分学研究会の会員である。辻野先生が提唱された大分学、先生の遺志は楢本譲司代表理事を中心に、確実に受け継がれ広がっている。こうして大分学が広まり、浸透していくと、大分の人は本当に地域に愛情を持ち、自慢が上手になり、その時こそ辻野先生が満面の笑顔をみせてくれるのではないかと思っている。
「住んでよし訪れてよし」。住んでいる人たちが誇りを持って住んでいるところに、人は憧れて訪れたくなるものだ。
大分県は今「日本一のおんせん県おおいた?味力も満載」として県内外に大きくアピールしている。別府、由布院だけでなく、個性豊かな温泉地が点在し、海あり山ありの自然に恵まれ、また豊かな食材の宝庫であり、小藩分立に由来する多彩な地域文化がある。小さいながら魅力的な地域が、たくさん、しっかり存在している。まさしく、辻野先生の言う「大分は“ドイツの魅力”」を湛えた地である。県都大分市も100年に一度のチャンスを迎え、街が大きく変わろうとしている。都心南北(道路)軸整備、OPAM(大分県立美術館)や駅ビルのオープン、東九州自動車道全線開通、等々。それは大友宗麟時代の、南蛮文化の栄えた時代を彷彿とさせる勢いを感じる。先生の歴史の世界へと引き込まれていく。
本書と併せて、先生の遺作となった『親子で読む大分偉人伝』(大分学研究叢書第1巻)も、ぜひ読んでいただきたい。そして、次世代へ大分学が引き継がれていくことが何よりも大切だと思っている。
(株)玉の湯代表取締役社長・(一社)大分学研究会副会長 桑野和泉